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聖獣達の鎮魂歌外伝~継承者の物語~  作者: 悠介


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16/26

2人の想い

 竜太、陽介誘拐から2日、ディンは警視庁本部、特別捜査課に足を運んだ。

村瀬に詳しい報告をするとともに、対策を練るためだ。

「以上が2日前に起きた事件の一連の流れです。様子を再確認したい場合はビデオをご覧下さい。」

 20人程入れる会議室にびっしりと、警察関係者、首相、ディンが依頼し研究を始めた専門家たちがひしめく。

 その中で、ディンは録画したビデオを見せながら淡々と報告を終えた。

「人間の魔物化、ということでいいのですかな?」

「ええ、その捉え方で間違えないと思います。村瀬警部に彼らの出生や経歴を調査して頂きましたが、元々は人間であったことは間違いないです。」

「しかし見た限りでは魔物になっている、と。」

「その通りです。軽い推測をまとめてあるので、手元の資料をご覧下さい。」

 専門家の質問に答えながら、軽くそこにいる面々の顔を見回す。

「僕の推測では、魔物を生み出すレベルで闇を抱えている人間に、何らかの魔術干渉やそれに準ずる何かとの接触で、それが身体を蝕んでいく、と考えています。」

「魔術干渉?」

「はい。ゲームでいう魔法の類に触れる、と考えていただければ。」

「では彼らは、その干渉により魔物へと変貌してしまった、と。」

 中々理解されないのはわかっている。

なにせ、魔法なんて画面の中の産物だったのだから。

 ディンをはじめとした守護者達しか分からない原理、動力。

それを理解させるのには、並大抵の努力では足りないだろう。

「今回の事で例えるならば、結界という魔術に触れ、その中にいることによって干渉が起こった。その中に長く居続けたがために、侵食され続けた、という感じだと思われます。」

「だがディン、長く居続けたというのなら、なぜ気付かなかったんだ?」

「んー、発動者がレヴィノル……、つまり竜神だから、同じ竜神である俺達に気づかれない術を持ってた。っていうのが妥当だと思う。」

「む、竜神は君達以外にも存在するのか。」

「はい。現在はほとんど生存している者はいませんが、つい最近までは確認しただけで千は超えていました。」

 村瀬と首相が疑問を呈す。

 ディンは今まで、ほかに竜神がいることは伝えていなかった。

不必要な情報での混乱を防ぐためだ。

「つい最近までは?どういうことです?」

「……。僕がここに来る前に、ほとんどの竜神は死滅しています。というよりも、僕の手で滅ぼした、というのが正しいでしょう。」

「ど、どういうことだね?」

 あまりにあっさりと語られた事実に、場がざわめく。

 同族殺し。

人間同士であれば、千いたものをほとんど死滅させるというのは、死刑では足りないほどの罪になる。

「竜神のほとんどは、レヴィノルと同じ考えを持っていました。人間を滅ぼせば、魔物は消え去ると。しかし、そう簡単には行きません。僕達は何度も説得を試みましたが、結果的に全面戦争となってしまったのです。」

「それで、その過激派はほとんどいなくなってしまった、と。」

「そうです。同族だからと放っておけば、彼らはいつか人間を滅ぼしていた。」

 ざわめきは大きくなる。

ディンといういわば人類の味方のような存在と同じ種族のほとんどが、人類を滅ぼそうとしていた事実に。

「そして人類を滅ぼせば、その分魔物は増える。新たに現れる数こそ少なくなりますが、竜神だけではとてもではありませんが処理しきれない。」

「負の連鎖の再来、か。」

「その通り。神といえど全能じゃない。竜神の中にだって、魔物を生み出す者は存在する。彼らは結局、そのことから目を背けてすべての業を人間に押し付けようとした。」

「なる程……。」

 事情を知っている村瀬は、一人納得する。

 1万年前の記憶。

世界崩壊の危機の話を、少し聞きかじっていたから。

「では、今回の件はその残党の仕業と考えて良いのかな?」

「……。いいえ、違います。今回の件は、死んだはずの竜神レヴィノルの残留思念、言わば執念によって引き起こされたと考えています。」

「ではどうすれば良いのだ?」

「出来るだけ怪しい誘いに惑わされないように注意喚起する事くらいでしょう。僕の方でも動いては見ます。研究者の方々は、行方不明者や社会に溶け込めない人々の分布と魔物の出現分布を計測して下さい。」

「了解でございます。」

 少し考えたあと、指示をし始めるディン。

そこにいる者は、それぞれ役割を認識していく。

「私達はなにか出来る事はあるか?」

「警察の人達は、出来るだけそういうのを見つけたら報告して欲しいかな。魔術の類が関わる以上、人間が解決しようとするのはかえって危ないから。」

「わかった。人員を割り当てるよう、上に伝えよう。」

「よろしく。それでは、今日は解散としましょう。各々、なにかわかったか動きがあった場合、僕にすぐ連絡をしてください。」

 そして会議は解散となった。

 それぞれ、ざわざわと話をしながら会議室を出ていき、最終的にはディン、首相、村瀬の3人が残った。

「アストレフ君、君はどうしてここまでするのかな?」

「ここまでってどこまでです?」

「同族を手にかけてまで、人間を守ろうとすることだよ。前回の事を思い返すと、君がそこまでする必要や義務はないと考えているが。」

「首相……、そのことを聞くのはよろしくないと念を押しておいたはずですが?」

「すまないね村瀬君。この国の、全人類の命運を握っているのは彼等だ。どうしても、聞いておきたかっただけだ。」

 ディンが首をかしげていると、横から村瀬が口を挟む。

禁句にしたはずの事を聞く、その真意が見えない。

「別に聞いて欲しくないことじゃなかったからいいけど、思ったような答えではないですよ?」

「構わないよ。」

「二人共……。」

「僕がここまでするのは、単に守りたい人がいるから。それ以上でも、それ以下でもない。」

「……。なる程、相分かった。では、私も戻るとするよ。」

 特に驚いた様子もなく席を立ち、首相も会議室から消えていった。

「ディン……。」

「あの人、予想通りの答えって顔してたね。それでもやらせてくれてるんだから、感謝しないとね。」

「そんなものなのか……。」

「そんなもんなんだよ。」

 肩を竦めながら答え、2人も会議室から出て行った。

そして、馴染みの喫茶店で他愛のない話をしてから、それぞれ帰路についた。


「ただいまー。」

「あ、父ちゃんおかえり!」

「おかえりディン。」

「お、2人でどっかいってたのか?」

 ディンが玄関を開けると、ちょうど靴を脱いでいる竜太と悠輔がいた。

見ると竜太は泥だらけで、洋服がボロボロになっていた。

「成る程、2人で特訓してきたのか。」

「僕が悠にぃに教えてもらってたんだ。格闘とか、魔術とか。」

「竜太って近接戦闘のセンスはあるけど、魔術はからっきしなんだな。やけに魔法使わないなとは思ってたけど、知らなかったよ。」

「センスの欠片もなくてごめんなさいね!」

 悠輔の率直な評価に口を尖らせ、顔を真っ赤にしながらプリプリと1人2階へ上がってしまう竜太。

「ありゃ、拗ねちゃった。」

「だいじょぶ、あれ怒ってるわけじゃないから。」

「そうなんか?」

「ありゃ恥ずかしいから怒ってるフリしてんだ。俺が最初言った時も同じ感じだったし。」

「ならいいんだけど。ところでディン、今日はどうだった?」

「ああ、そのことなら……。」

 玄関口で今日の会議の報告をするディンと、頷きながら聞き入る悠輔。

 現在、ディンの実質的ご意見番となっている悠輔の、言わば恒例行事のようなものだ。

「成程ね。じゃ、今日はすんなり行ったんだ。」

「まあ、いつもに比べればな。研究者達にしてもらうことも明確にしたし、他の人たちの役割もはっきり決まってたから。」

「だね。やっぱり、こっちである程度は決めておいた方がいいんだろうよ。」

「それじゃ会議にならんだろ?」

「まあ、そうだけどさ。」

 一通りの報告を終え、一度部屋に向かう2人。

ディンはスーツを、悠輔は特訓で汚れた服を着替える為だ。

「そういや、陽介の様子どうだ?」

「んー、驚くくらいにあと引いてないよ。1人で出かけるのが少し難しそうってくらい。やっぱ、気絶してたから覚えてねえんだろうな。」

「そっか、ならまあ良かった。子供にありゃトラウマになってておかしくねえからな。」

「そだな。」

 とりあえずは大きな問題がないことに安心するディン。

下着だけになり、私服に袖を通し始める。

「ん?ディン、そんな傷あったか?」

「ああこれか?分かんねえんだけど、いつの間にかあったんだよ。」

「んー、見たとこ切られた傷っぽいけど、なんだろ。なんか違和感というか…。」

「気のせいじゃねえか?痛くもなんともねえぜ?」

 悠輔の目に止まった傷は背中にあった。

右肩から腰の左にかけて大きく抉られたであろう傷。

その傷は、他の傷よりも少し色が濃かった。

 ディンは鏡を見たときに見つけていたが、特に痛みも無い為なにも言わずにいた。

「なんか他より治癒が遅いっていうか……。でも、この前した時なかったしなぁ。」

「この前って、なんかあったっけ?」

「ん?夜の運動会。なんかみんなで夜這いかけてるって言ってたから、俺もご相伴に預かったってわけよ。寝ながら気持ちよさそうにしてたから、そそったな。」

「はぁ、だから寝てもつかれ取れなかったのか。ってか、お前そんな事本人にいうか?」

「まあまあ、気にしない気にしない。」

 されている……。

夜の運動会……。

悠輔の謎の性癖……。

 ディンにとって、今明かされた衝撃の事実。

「全く。したきゃ言えばいいのによ。」

「いやぁ、楽しかったぜ、7P。」

「どんだけだよ……。てか、誰がいたんだよその淫らな空間には。」

「えーっと、俺だろ、浩輔に竜太、デインと雄也に源太もいたな。」

「中学生組全員かよ……。終わってんなこの家……。」

「まあまあ、みんなで楽しく気持ちよく!いいじゃねえか。」

 思わず口をぽかんと開けたくなるような事実。

自分の知らないところで、そんな大事になっていたとは。

 そしてどこかで、小学生組に魔の手が及ばなくて良かったとホッとしているディンがいた。

「はぁ。でもそんなみんなでワイワイやってるなら、起こしてくれたっていいだろうに……。」

「起こしてるぜ?ディンが起きねえだけで。」

「どんな風に?」

「金的。」

「嘘だろ?」

「ああ、嘘。揺さぶったりほっぺた叩いたりしてるんだけどな、ディン全く起きねえべ。」

 悠輔の嘘にさっと血の気が引いた気がしたディンは、それを聞いて少し安心する。

一方悠輔は楽しくて仕方がないという感じだ、ずっと肩を震わせ笑いながら話をしている。

「まあいいや。俺が寝ないようにすればいいんだしな。」

「そうそう。そうすりゃいいよ。」

「ふぅ。そろそろ降りるか。」

「そうだな。」

 この話は終わりとばかりにディンは部屋を出ていき、悠輔もそれに続く。

リビングに行くと、ちょうど裕治が夕飯を作ったところだった。


「あ、2人とも遅いよ!ご飯冷めちゃう!」

「ごめんよ裕治。」

「ごめん、着替えながら話してたからさ。お、今日の晩飯はカレーか!」

「それくらいしか出来ないからね。」

「いやいや、美味しそうだよ。」

 2人が席に着くと、各々手を合わせ、号令を待つ。

「じゃ、今日もみんな元気でいられたことに感謝して、頂きます。」

「「いただきまーす!」」

 他愛のない会話をしながら食事をする11人。

大家族よろしく、大量に作ったはずのカレーが消えていく。

「そういやさ、うちって月の食費どんくらいなん?」

「ん?大体大体12、3万くらいだよ。」

「えぇ!そんなにかかってるの!?」

「そのお金、どっから出てんだ?」

 悠輔のふとした疑問から暴かれた、驚愕の数字。

11人も食べ盛りがいれば当たり前と言えば当たり前、むしろ安いくらいのものだが、それでも子供にとっては大金だ。

「国から給料みたいなのもらってるから、それでやりくりしてるよ。最近は悠輔とデインが増えたから、もらう量も2倍になったし。」

「それって、どれくらい?」

「んー、月200万くらい。一人頭50万だな。」

「子供が貰う額にしちゃたけえけど、命張ってそんだけって考えると微妙だな。」

「まあそんなにありすぎても使わねえからな。それに、別途報酬あるし。」

 さも当然とばかりにディンが皆に話すと、皆は食事を止めて話題に食い入る。

特に中学生組の驚きは大きかった。

「別途報酬って何?」

「俺が凶悪犯罪の犯人捕まえたり、医療行為したときに貰ってる奴。大体一ヶ月で300万くらい。」

「そっちのほうが多いね……。って、僕達貰ってるなんて聞いてないよ?」

「子供が大金を持つもんじゃねえからな。全部みんなの名前の口座で貯金してるよ。」

「そうなんだ……。」

「だから、小遣いない分必要なときにたっぷり出してるだろ?」

「まあそうだけど……。せめて教えて欲しかったなぁ。」

「ごめんごめん。どうしようか悩んではいたんだけどさ。」

 首をかしげため息をつく竜太。

 それは、驚きと少しの落胆。

信頼されていないから話を聞かされていないと考える。

 しかし、ディンにとっては。

ただ単に、話を切り出す機会がなかっただけの話なのだが…。

「とりあえず、ご飯食べちゃお。せっかく作ってくれたのに、冷めちゃったらもったいないしさ。」

「そうだな。」

 浩輔の言葉で完結し、それ以降皆がその話題に触れる事はなかった。

結局、そのお金をどうこうという問題ではなかったからだ。


 それから少し時間が経って、夜中の2時。

珍しく起きていたディンは、1人ベランダでタバコを吸う。

(誘拐の件、あれで本当に正しいのか?)

 悩みの種は会議での話。

自分の指示は果たして正しいのか、それで未然に防ぐ事が出来るのか。

 考えは巡り巡る。

(もし仮説が間違ってたら、意味のないことをさせてることになる……。)

 誰も仮説すら立てられない現状、自らの判断で動くしかない。

それは当然と言えば当然なのだが、釈然としない。

(背中の傷も、なんか関係があんのか……?)

 1週間ほど前に浮き上がってきた、背中の大きな傷跡。

大分前にその傷を受けた覚えはあるが、しかし。

治癒能力を使って跡を薄くしていたのに、突然浮き上がってきた。

 そして、治癒能力で消そうとしても消えなかった、その意味は。

「どうした?」

 タバコの吸殻が2桁を超えた当たりで、悠輔が話かけてきた。

実はずっと起きていたのだが、どこで話しかけたものかと悩んでいたのだ。

「いや、考え事しててさ。」

「そっか。にしても、すげえタバコの量だな。」

「そうか?割りと普通な気がするんだけどな。」

「いやいや、吸いっぱだったろうに。」

「見られてたか。」

 悠輔はディンが灰皿兼火消しにびっしりと詰まっている吸殻をみて呆れたような声を出す。

そんな悠輔をみて、ディンは口元を緩ませる。

「まあディンの性格考えりゃ言っても意味ねえだろうけどさ、多分今日の事は正しいと思うぜ?」

「そっかなぁ……。どうしても不安になっちまってよ。」

「そりゃ俺だって不安だよ。でもさ、分かんねえ以上動いてみねえと。あの人達、その為にいんだろ?」

「まあ、な。」

 珍しく前向きな意見をいう悠輔に、驚きを隠せないディン。

普段は同じレベルで最悪の事態に備えているのだが、今日はなにかが違う。

「さ、冷えるし中に戻ろう。」

「そうだな。」

 そんな違和感を感じながらも、素直にいうことを聞く。

そして、冷えた体を温めるようにベッドに転がり、布団を掛ける。

「なあ、どうしたんだ?」

「どうしたって、なんだ?」

「いや、悠輔がこんなあっさりしてんの珍しいってか、優しいのが珍しいってか。」

「ん-?俺いつも優しくしてんだけどな。」

「そうか?」

「このやろ、目の前でくらいお世辞でもいいって言えよ!」

 ディンの素直な言葉に、怒ったフリをして乗りかかる悠輔。

 そして、そのままディンを起こし、包み込むように抱きしめる。

悠輔はディンのトガリめの髪を、ディンは片腕で雄輔のソフトモヒカンの髪を撫でる。

「俺はさ、ディンに無理して欲しくねえんだ。今更だけどさ、少しは楽して欲しい。本音を言っちまうと、戦わなくてもいい方法があればそうして欲しい。まあ、何百年とやってきて無理なのはわかってんだけどさ。」

「悠輔……。」

「戦わなくても良い、傷つかなくてもいい。そんな日が来てくれたら、俺は最高だと思うよ。人々も穏やかに、世界も穏やかに。何よりも、みんなが幸せになってくれたら。」

「……、そうだな。」

「そしたら、みんなでいろんなとこ行こう。いろんな思い出作ろう。誰もいなくならない、みんなが笑える場所で。」

 ディンには見えないが、悠輔の瞳はとても穏やかだ。

穏やかで、どこまでも優しい眼、澄んだ眼をして、夢を語る。

 そして、ディンもまた、どこまでも澄んだ眼でその夢を思い描く。

何百年も思い描き続けているその夢を。


「竜太やデインとはまだ分かり合えてない部分があるけどさ、きっと2人ともちゃんと家族になれる。だって、お前の息子と叔父さんだし。」

「……。」

「竜太はいい父親を持った。みんなも、いい父親に出会えた。俺は、最高の兄弟を持った。それだけでも幸せなんだから、ホントは欲張りかもしれねえけどさ。世界を平和にする為に、俺はできる限りのことをする。陰陽の王として、みんなの兄として。」

「俺もだ。良い息子、良い兄弟に巡り会えた。竜神王として、みんなの親として。絶対、その夢は叶えて見せるさ。」

 抱きしめあいながら夢を語る。

いつか、1つの体に共にいたときにはできなかった形で。

共に過ごした、いつかの時のように。

「いつか叶うといいな。」

「叶うといいんじゃない、叶えるんだ。」

「それもそうだな。」

 2人は一旦体を離し、額をつけて見つめ合う。

お互いの眼をしっかりと見つめながら、静かに微笑む。

「……。」

 静かに唇を重ねる。

 そしてディンは思い出す。

最後のくちづけを。

冷たくなった悠輔の唇に、自らの唇を重ねた瞬間を。

「…。」

 舌を絡め合いながら、悠輔は思い返す。

仄暗いディンの意識の中、ボロボロになったディンと交わしたくちづけ。

 あの時託した夢、あの時遺した希望。

それから500年の時を経て、再会出来たことを確かめるように求め合う。

「……、なんか恥ずかしいな。」

「恥ずかしいって、俺が寝てる時に散々したんだろ?」

「それとこれとは別なんだよ馬鹿。」

「……、まあそうか。俺も恥ずかしい。」

 重ねていた唇を離し、顔を赤らめる2人。

恥ずかしがりながら、お互い求めるように体をまさぐり合う。

「こうするのは始めてだもんな。」

「そうだな……。」

 悠輔がディンを押し倒し、静かに洋服をめくり出す。

ディンは抗うことなく、素直に脱がされていく。


「はあ、ほんとにこの傷の量はなんとかなんねえのか。雰囲気壊れちまうよ。」

「そんなこと言っても仕方ねえだろ?キズモノじゃ勃たねえか?」

「キズモノって、なんか変な響きに聞こえるぜ?」

「まあ間違っちゃいねえだろ?」

「確かに。みんなにされてんだもんな。」

 傷だらけながら艶やかな体にため息を漏らしながら、何かを確かめるようにディンの体に指を這わせる。

 そして、腰周りに到達したところで、急に部屋のドアが開かれた。

「あー!悠にぃずりいぞ!」

「げ、雄也!」

「俺も混ぜな!」

「僕達もー!」

「竜太と浩輔まで…。成る程、夜の運動会って理由が今わかったわ。」

 呆れ顔で笑うディンをよそに、続々部屋に入ってくる中学生組。

結局、夜の運動会は開催されてしまったのだった。

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