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現実

作者: 山川俊則

八月の熱帯夜、ベランダに出てタバコに火をつける。

まだまだ吸い慣れない俺は肺に煙を入れる良さなんて分かりはしないけど身の丈を少し上げるため

少しずつ煙を入れる。咳き込みながらもどこか晴れ晴れとして何がいいのかなんてわからずにただただ大人になろうとしていた。手にはハイボール。最近流行りのやつはチャミスルを飲むらしいがついていけない。ひと口仰ぐ、いい匂いがする。炭酸の味、冷えてないからアルコールに嫌な匂いが鼻を刺す。酒も何がいいのかわからない。気持ちよくなんてないしカッコつけてられるほど酒には強くない。ただただ熱病に犯されたみたいに頬が熱くなる。

結局大人になんかなれないんだな。映画やドラマで見たあの主人公は当たり前のように煙をふかしてたし

ワンピースのルフィだってビールは樽で飲んでる。俺の憧れてたロックスターだってラッキーストライクの赤丸をくしゃくしゃにしてたし、エディバンヘイレンだってギターに蒸したタバコを挟んでた。

フーと息を吐き出す。灰をベランダから落とす。星は見えない。やけに臭い。

どんなに変わろうとしたって、俺はもうかわれないのかもしれない。

いや変わろうともがいているうちにただ変な方向に進んでって周りの目線だけが変わった。

俺は今なんだ?俺の大好きだったあの子はタバコをすうなら端と端の部屋にして住むといっていた。

高校の友達や先輩とソフトドリンクで盛り上がっていた頃が何よりたのしかった。

大好きだったあの子は真面目な子だ。やらないといけないことはちゃんとやる。

デートの時はイメージが違った。子供じみたくだらない行動が多かった。しっかりものだけどどこかマイペースで自分のやりたいことが通らないと多少不機嫌になる。くだらない行動やそんな君の綺麗な笑顔があまりに可愛かった。

まだ君を忘れられない。それだけが残った。俺は何をしてるんだ。

暑い中頭を下げて働く毎日、行きたくもない飲み会に参加してうまくもない酒を飲む。

かっこいいからと始めたタバコは今じゃ休憩の為だけにある。

頬を熱くして帰った夏の夜制服の高校生は二人乗りで花火に向かって自転車を漕いでた。

サークルの仲間なのか大学生はロング缶のストゼロにブルーシートを持って歩いてた。

カートコバーンが言ってた誰かに偽りを愛されるよりありのままを嫌われた方がいいって。

タイラーダーデンは言ってたブランドの打ち出す広告の男はお前の理想なのか?全てを失え、どん底に落ちた時初めて自由になるって。でもそんなムービースターやロックスターにはなれなくて。

中途半端に音楽をかきむしってた。才能なんてないなんて気づくことはやめた。

俺は今どん底なのかもしれない、ボロアパートに住んで、一緒に住もうなんて言ってた君はもういない。

ポルシェどころか車なんてないしオンボロのスクーターが唯一に移動手段だった。

この世界は平等。痛いほどわかる。しっかり勉強、努力を重ねたあいつは上智大学に行って俺にプロポーズの話をしてきたし、一般受験の地獄を生き抜いた、努力のできるあの先輩は本当に輝いて見えた。

軽音部でバカしてた奴らもなんだかんだニートやら家族やら楽しそうだった。

努力の前には俺は立てない才能は努力じゃ生まれない。

才能は努力をしたやつが終わった後に気づくものだ。

天才なんていない。俺は凡人で天才に憧れてるだけだった。

劣ってすらいるのかもしれない。何もできないわけじゃないし今だってこうやって文を書き殴ってる。

俺はお前なんだ。いいか?お前は今受験生だ。お前は何もできないんじゃないただやらないアホだ。

丸々太ったデブと一緒だ。我慢なんてできやしないし食い続けるだけ。

何かを諦めるんじゃない。何もかも良くしろ。彼女だって大切にしろ、お前の人生の1番の幸運だ。

ギターはほどほどにしろ。友達は大切にしろ。お前がお前であったことを世界に残せ。

こんなこと言ってももう遅い。絶対にあの頃の日に戻れないし、何も起きても変わらない。

ベットに行ってアダルトビデオ、いつもこれじゃない感覚だけが残る。

作り物にしか感じない会社の飲み会にあの頃の楽しさなんか残っちゃいないし口渡しでポテトを食べさせようとしてくるイケメンもいない。俺はなんなんだ?思い出しても昔は良かった。瞬間風速を肌で体験した。

飲み過ぎたみたいだった。今更になってこんなの打ち込んでも遅いし

何も変わりなんかしない。ああどうにでもなれ。なんでも書いてやる。上司の田口は口が臭い。

課長は結婚したと自慢げに言ってくるが奥さんはブスだ。どうせ幸せなんだろ、わかってんだよ。

同僚の金子はうざいしだるい勘弁しろ。たまに見かける斉藤さんは金子がうるさいくらいに

言ってくるが確かにかわいい、でも違う。斉藤なんか××は比じゃない。

たまに飲みに行くあいつは今でも元カノが可愛かったって言ってくる。Fランでも彼女見つけろ

くそが。軽音部は楽しかった。もう疲れたんだよ。誰が好んで産んでくれと言った。

母さんありがとう。無理はするなよ。頼むから寝させろどうせだれもみちゃいないんだ。

スーツのまま寝てやるからな。





母さんいつもありがとう

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