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 第6話 【裂け目】への考察

ブックマークが過去最高の16件を突破! 更に評価ポイントも過去最高に‼ これを励みに次話のストックをどんどんキープして行きます。 ただ仕事が忙しので更新ペースは毎週土曜日と変わりませんがこれからもよろしくお願いします(_ _) 

 私の質問にファランド殿は顎に手を当て真剣に考え始めたが直ぐに何かに気付いたのかアンドリュー殿を見た。


「アンドリュー殿、貴公が此処に来た調査目的は確かアナイアの森から聞こえて来る様になった爆発音でしたね」


「そうだ、そして昨夜のランデスボアとの戦闘でその爆発音の原因も判明した」


「では貴公は王へどの様に報告するのだ? そして王はどう判断されると思う? それによって私の父上の対応も変わって来ると思うのだが」


「そうだな…」


 アンドリュー殿はファランド殿から問われた事に腕を組んで暫く考えていたが考えが纏まったのか顔を上げた。


「陛下には秋山殿達の事は隠さず報告するしか無いだろう。 秋山殿達の存在を隠して報告するのはまず無理だ。 それに秋山殿達がこの世界に来る遠因となった【裂け目】だがルッツカード伯爵が密かに研究していた禁術が原因となった可能性がある」


「どういう事ですか?」


 私はアンドリュー殿が言った事を無視出来ずすかさず訊ねた。


「ルッツカード伯爵が研究していたのは禁術とされてる召喚魔法だ。 俺も詳しく知ってる訳では無いが聞いた話だと遠く離れた場所から術者が望む対象を強制的に術者の元へと召喚する魔法らしい」


「それだと私達はそのルッツカード伯爵の元に召喚されてるのでは?」


「その通りだが、その召喚魔法が失敗して【裂け目】が出来たとしたらやや強引だが辻褄は合う」


「あの俺からも良いですか? 何故その召喚魔法は禁術に?」


 私達の会話に今まで聞くに留めていたマルコスニア殿が訊ねて来た。


「宮廷魔法師団長の調査報告書では召喚魔法には召喚した対象を強制的に隷属させる術式が組み込まれてたらしい。 つまり召喚されれば召喚した術者の言いなり、と言う訳だ。 召喚されたのが動物ならまだ良い、だがそれが人ならどうだ?」


「「「っ!」」」


 アンドリュー殿が吐き捨てる様に言った事を想像して私達は息を呑んだ。 召喚された場合召喚主の術者に逆らう事が出来ない状況では従うほか無い。 指示、或いは命令された事がまともな事なら良いが禁術とされてる事をしてまで召喚するなら指示、命令される事は絶対まともな事では無い。


 その事に思いいたり召喚魔法が禁術とされたのにも私は納得出来た。 が、何故その召喚魔法が失敗した事と【裂け目】が繋がるのか疑問に思った。


「秋山殿は疑問に思ってるだろう、何故【裂け目】に繋がるのかと。 考えてみて下さい。 召喚魔法は遠く離れた場所をつなぎ対象を術者の元に引き寄せる魔法です。 言い換えれば離れた場所を距離に関係無くつなぎ合わせてしまう魔法です。 【裂け目】はその繋ぎ合わされた時に出来る空間の【裂け目】とも考えられます」


「ちょっと待って下さい!」


 アンドリュー殿の説明を聞いて私は思わず叫びながら椅子から勢い良く立ち上がった。


「もし私達が通って来た【裂け目】がその召喚魔法によるモノだとしたら何故【裂け目】は消えないで存在し続けてるんですか!? 少なくとも私達が【裂け目】を確認してから3年は立ちますよ」


「俺も其処が疑問に思ってもいる所なんだ。 本来召喚魔法で繋ぎ合わされる裂け目は一瞬の筈。 それが何年も消えずにあり続ける事はあり得ない、筈なんだが」


 アンドリュー殿は腕を組んだまま難しい顔でそう言うと黙ってしまった。 その様子を見て私はそれ以上何も言えず椅子に座り直した。 その時無線から連絡が入った。


「此方司令部、秋山陸曹長、応答願います」


「此方秋山陸曹長です」


「天川1等陸尉がそちらの3名との会談を承諾しました。 司令部の会議室にお連れして下さい」


「秋山陸曹長、了解」


 無線でのやり取りを終えると私は湯呑に残っていた麦茶を飲み干した。


「…秋山殿?」


「取り合えず、天川1等陸尉が貴方方3人とお話したいそうです。 なので移動をお願い出来ますか?」


「分かりました。 ただ剣を持って行く事を許可して貰えますか? 向こうに付いたら預けますので」


「…向こうで預けて頂けるのなら許可します」


「ありがとうございます」


 アンドリュー殿からの申し出に許可を出すと3人も麦茶を飲み干してから椅子から立ち上がり剣をそれぞれ持つと私について移動を開始した。 司令部に着くと会議室に入る前に司令部付きの隊員に3人は剣を預けてから会議室に入った。 


 会議室には天川1等陸尉他八神、宮内2等陸尉、真田准陸尉、そして萩村警務官が椅子から立ち上がりで迎えた。 天川1等陸尉がジェスチャーで着席を促すとそれが通じたのか3人は軽く頭を下げてから椅子に座ると出迎えた4人と私も椅子に座った。


「秋山陸曹長、通訳を頼む」


「了解」


「それには及ばない。 私も秋山殿の知識で貴方方の言語はある程度理解が進んで居る。 尤も読み書きはまだ無理そうですが会話ぐらいなら可能でしょう。 言葉は通じてますか?」


 アンドリュー殿がいきなり日本語を話し出した事に私を含め部屋に居た全員が驚いた顔でアンドリュー殿を見つめたが天川1等陸尉は直ぐに気を取り直した。


「ええ、私達日本人と遜色がありません。 見事な日本語です」


「それは良かった」


「それではお聞きしますが、アンドリュー殿がベンドール殿を殺害した経緯は其処の萩村警務官から聞きました。 何でも王命であったと、間違い無いですか?」


「その通りです」


「で、あれば私達からアンドリュー殿にどうこう言う事はありません」


「寛大な処置に感謝する」


「それで一つ確認したいのですが、現在ベンドール殿の亡骸は私達が保管していますが如何すれば宜しいですか?」


「可能であれば彼が右手の人差し指に付けてる指輪とピアスを渡して頂きたい」


「指輪とピアス、ですか? それは何故?」


「指輪は貴族家を、ピアスは所属を表します。 故にその二つで個人を特定可能です。 亡骸を持って帰れない場合はその二つの回収が可能なら回収するのが戦場の暗黙の了解となっています」


「成程、そう言う事であればお渡しします。 遺体は此方での適切な対応をすると言う事宜しいですか?」


「お手数をお掛けする事になりますがよろしくお願いいたします」


「分かりました。 指輪とピアスにつきましては後ほどお届けします」


「忝い」


 天川1等陸尉は其処で話に一区切りがついたと判断したのか出されていたお茶を飲むとアンドリュー殿達もお茶を飲んで一息ついた。


「さて、それではこれからの事をお話しましょう。 単刀直入にお聞きします。 貴方方は今後どうなさいますか?」


「マルコスニアの怪我が良くなればシュードルフ家がある城郭都市、ザライアへ帰還。 其処で馬を調達し王都へ戻り陛下へと此度の事を報告しに戻りたいと考えています」


「まぁそうなりますよね。 では我々の事はどう報告するかお聞きしても?」


 天川1等陸尉の言葉を伝えるとアンドリュー殿はチラッと私を見たが直ぐに視線を天川1等陸尉に戻した。


「先程秋山殿にも伝えたが陛下には貴方方の存在は包み隠さず報告する事になる。 その原因がどうやらルッツカード伯爵にありそうなので」


「それはどういう事ですか?」


 天川1等陸尉の問いに私は先程アンドリュー殿から聞いた話をすべて話した。 話を聞いた天川1等陸尉達は眉間に皺をよせ表情は険しかった。


「アンドリュー殿、【裂け目】が何時まで存在してるか予想出来ますか?」


「正直に言えば全く予想出来ない。 そもそも何故3年もの間消滅せず存在して居る事が信じられないのです。 それこそ今この瞬間にでも【裂け目】が閉じても何ら可笑しくはありません」


「そうですか。 そうなると今後の活動方針を大きく見直さなければいけなくなるな」


「この件は直ぐにホワイトベースに報告して指示を仰いだ方が良いでしょう。 最悪我々は此処から即時撤退命令が出ても可笑しくありません」


「そうですね。 ですが先ずは私達自身の安全確保を優先させるべきかと」


「と言うと、破られた防護塀の修復か。 資材は足りるのか?」


「一部支柱の基部から直さなければいけませんが運び込んである資材で十分修復可能です」


「ならば壊れた箇所の防護塀の修復を最優先で行いつつ撤退命令が出たら対応出来る様に準備を進めよう」


「「「了解」」」


「すまない、少し良いだろうか?」


「何でしょう、アンドリュー殿」


「もし可能ならば、ですがルッツカード伯爵の召喚魔法を調査していた王国魔法師団に貴方方が通って来た【裂け目】を調査させて貰えるなら何か分かるやも知れません」


 アンドリュー殿の提案に天川1等陸尉達は顔を見合わせて思案顔になったが何故か私を見つめて来た。


「秋山陸曹長、君が得た知識で魔法に関してどう思う? 正直俺達は魔法と言われても良く分からない。 君の意見を聞きたい」


「そうですね、正直私も其処まで理解出来てる訳ではありませんがあえて言うなら3つに分類出来るかと」


「3つ? どういう事だ?」


「はい。 先ず一つ目ですが、これは術者の魔力を利用し呪文を唱えて発動する魔法です。 これは個人の持つ魔力量や技量により使える魔法の種類が変動します。 二つ目ですが、魔法を使る術者が集まり集団で同じ魔法を発動する物です。 これは個人では発動出来ない大掛かりな魔法を集団で行います。 主な使用は城攻めや合戦場、或いは拠点の防衛でしょうか。 そして最後に魔法陣? と言えば良いのでしょうか、魔法の規模や内容を纏めた術式を地面や壁に描き其処に魔力を流し込んで発動する魔法です。 恐らく召喚魔法はこれに該当するものと思われます」


「成程、それを踏まえてどう思う」


「私の予想では召喚魔法を行う為の魔法陣、まぁそんな物があればですが。 その魔法陣に何らかの形で魔力が流れ続けていればもしかしたら【裂け目】が消えない理由になるのでは、と」


「もしそうだとするなら直ぐには【裂け目】が消える心配は無い、と言う事か?」


「恐らくは」


「私も秋山殿の推測が当たってる可能性があると思います」


「アンドリュー殿、それはどうしてですか?」


「秋山殿の言う通り召喚魔法の魔法陣に魔力が流れ続けて居れば【裂け目】が消えずに残ってるのにも説明が付きます」


「なら私はアンドリュー殿が言う魔法師団による【裂け目】調査は行って貰った方が良いと思います」


「そうか、分かった。 この件もホワイトベースに報告を上げて置こう。 アンドリュー殿、ご足労ありがとうございます。 本日の会談はこれで終了としましょう」


「分かりました。 こちらこそお話が出来て良かった。 もし何かあればいつでも相談に乗ります」


「それは心強いですな」


 そう言うと2人は席から立ち握手するのを私は見守った。 その後私は3人を家へと送り私が得た知識を纏める為部屋に篭った。

誤字脱字がありましたらお気軽にご連絡ください。

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