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 第5話 聞き取り? 事情聴取?

 無線で連絡を入れて間もなく家の扉を叩く音が聞こえた。 私は椅子から立ち上がり家の玄関の扉を開けると8人の警務科の隊員がいた。


「ご苦労様です。 現場はこの先の居間となります。 対象者は現在全員が食堂に居ます」


「了解しました。 私は萩村と言います。 高坂と篠原、それと園部は現場の確認と遺体の収納を。 残りは食堂で簡単な事情聴取を行った後司令部へ連れて行く」


《了解》


 私は萩村警務官と他4人を食堂へと案内した。 食堂に入るとアンドリュー殿達は腰の剣を外してテーブルの上に置いてあり、出入り口から遠い壁際に揃って並んでいた。


「秋山陸曹長、これは?」


「恐らく此方に反抗する意思が無い事を示してるのかと」


「成程、そう言う事ですか。 取り敢えず彼等3人には椅子に座る様に言って貰えますか」


「分かりました。 アンドリュー殿、ファランド殿、マルコスニア殿、取り合えず椅子に座って頂けますか」


 私が椅子に座る様にお願いすると3人は顔を見合わせる、と言うよりアンドリュー殿を2人が見つめた感じだった。 見つめられたアンドリュー殿は思案顔になったが暫くしたら納得したのか頷いてから椅子に座ると2人も椅子に座った。


「これから簡単にお話をこちらの萩村警務官が聞きます。 その話を聞いて天川1等陸尉との面談の可否が決まると思います」


 私が説明するとアンドリュー殿は直ぐ頷いて残りの2人も少し遅れて頷いた。


「萩村警務官、何から聞かれますか?」


「それでは誰が殺しをしたのか、ですね」


「あ、それならこちらのアンドリュー殿です。 ですがその、かなり複雑な理由がありそうで…」


「どういう事ですか?」


「えっと、アンドリュー殿はどうやら殺害された被害者、ベンドール殿を王命で最初は拘束しようとしたのですがそれに抵抗したベンドール殿が剣を抜いてアンドリュー殿に斬りかかりました。 アンドリュー殿はそれに対応、私が見る限り正当防衛でベンドール殿を、と言う感じです」


「ふむ、と言う事はそちらのアンドリュー殿は正当防衛でベンドール氏を殺害したと?」


「私達の常識に当てはめるとそうなるかと。 それとアンドリュー殿は拘束する理由にベンドール殿が問題行為をしておりその証拠もあり、王から直接命令を受けていたと思われます」


「分かりました。 ではアンドリュー殿に王からの命令でベンドール殿を拘束しようとしたが抵抗された為に殺害した、で間違い無いか確認して下さい」


「了解」


 私は萩村警務官に言われた事をアンドリュー殿に確認するとアンドリュー殿は大きく頷いた。 


「では殺害されたベンドール氏の問題行為とは何かも聞いて貰えますか?」


「ベンドールは騎士団に入団した新人兵士に対して過剰な体罰を与えていた。 がそれは序の口程度。 女性兵士には権力を振りかざし体を差し出す様強要もしていた。 気に入らない者には真剣を使った訓練中に深手を負わせ退団に追い込む等もしていた。 更には騎士団の金を横領もしており横領した金は実家の伯爵家へと送金し、受け取った伯爵はその金で禁術魔法の研究を行って居た。 故に王から捕縛、或いは現場判断での処刑も許可された命令書が出された」


 私はアンドリュー殿から聞いた事をそのまま萩村警務官へと伝えると萩村警務官は頭を抱えた。 正直許されるなら私も頭を抱えたい衝動にかられたが何とか耐えた。


「そりゃそんな事してたら普通に逮捕状でるわな」


「その通りですね」


 萩村警務官の呟きに私は思わず同意してしまった。  ハッとして萩村警務官を見ると目が合い萩村警務官は苦笑いを浮かべた。


「さて秋山陸曹長、聞く所によると貴官はそちらのアンドリュー殿からこの世界の知識を多少なりとも得たと聞いてるが本当かな?」


「あ、はい。 そうです」


「で、あるならこの場合は彼は罪になるのかな」


「そうですね…」


 私は萩村警務官に言われ得た知識でアンドリュー殿の行為が罪に問えるのか考えた。


「アンドリュー殿は王からの命令を遂行したに過ぎません。 私達に当てはめると総理からの容疑者確保の際に殺害も止む無しの命令を遂行した結果、容疑者を殺害した事になります。 それにアンドリュー殿は斬りかかられた為防衛しなければアンドリュー殿だけで無くその場に居た私達も殺されていた可能性もありました。 よって過剰正当防衛に当てはまらない、と判断します」


「…そうか、分かった。 ではその様に天川1等陸尉にも伝えよう。 追って連絡する。 引き続き彼等を監視してくれ」


「はっ 了解しました」


 私は立ち上がって萩村警務官に敬礼した。 返礼した萩村警務官は部下を連れて食堂から出て行くのを見送り私は椅子に座った。


「秋山殿、どうなったのだ?」


「取り合えずベンドール殿の殺害は正当防衛であると認められた、と言った所でしょうか。 後は天川1等陸尉が報告を受けてどう判断するかです」


「そうか」


 アンドリュー殿の質問に答えるとアンドリュー殿は短く答え目を静かに閉じた。 他の2人も私達のやり取りを聞いて多少安心したのか何処か顔の表情も緩んだ様に見えた。


「秋山殿、昨夜のランデスボアの解体はどうなったのだ?」


「え? あ、そうですね。 恐らく既に解体作業に入ってると思いますが申し訳ありません。 先程の件で今は皆さんはこの家から出る事に許可が下りないかと」


「まぁそうであろうな。 折角だ、ただ待ってるだけでは互いに息が詰まろう。 其処で互いに知りたい事を質問し合うのはどうであろう?」


「そうですね、その方が建設的でしょう。 ならお茶でも入れましょうか。 幸い道具も揃ってますし」


 そう言って私は立ち上がって厨房へと向かった。 マルコスニア殿が手伝いを申し出たがそれは丁重に断り1人でお茶の支度を整えた。 正直な所1人になり少し頭というより気持ちを静めたかったからだ。


 厨房でお湯を沸かしつつ戸棚を確認すると缶に入ったクッキーがあったのでそれをお皿に移しお茶請けとした。 が、茶葉を確認すると緑茶と麦茶のパックしか無かったので悩んだ末私は麦茶のパックを急須に入れた。


 戸棚にはティーカップ等と言う洒落た物は無く湯のみしか無かった事に密かに呪いつつ湯呑みを準備して食堂に戻って3人の前で湯呑に麦茶を注いだ。


「これはとても香ばしい匂いのお茶ですね。 何と言うのですか?」


「これは麦茶と言います。 体に良いとされ私の世界では一般でも良く飲むお茶です」


 私はファランド殿の質問に答えつつ3人の前に湯呑を差し出して椅子に座って麦茶を一口飲んだ。


「これは、芳醇で何と美味しい」


「そうですね、こんなお茶は初めてです」


「名前からして麦が原料なのだろうが、まさか麦をお茶として飲むのは初めてだな」


「全くです。 まさかパン以外に麦の利用法があるとは思いもしませんでした」


「その通りだな」


 麦茶をチビチビ飲みながら3人の感想を聞いてどうやら口にあったらしいと判断してお茶請けとして出したクッキーを一枚食べると3人も興味を惹かれたのかクッキーを食べた。


「これは焼き菓子、だよな?」


「そのはずです。 ですが、これは」


「こんな美味しい焼き菓子を食べたのは初めてですよ」


 3人はクッキーを1枚食べて驚いた表情を隠す事を忘れてマジマジのお皿に残ってるクッキーを見つめた。


「あ、秋山殿。 この焼き菓子は何処か特別なモノなのでしょうか?」


「いいえ、私の国であれば比較的何処でも手に入る焼き菓子ですよ」


「「「なっ!?」」」


 ファランド殿の質問に何気何しに答えると3人は先程以上に驚いた顔をしたのに私は可笑しくなってクスクスと笑ってしまった。 そのせいで3人は自分が醜態をさらした事に気付いたのか恥ずかしそうにしてしまった。


「笑ってしまい申し訳ありません」


「いや、気にしないで下さい。 恥ずかしい姿を見せたのは我らの方なのだから」


「あの秋山殿、アンドリュー殿から聞きましたが貴方を含めこの村の住人はこの世界とは異なる世界から来たと言うのは本当なのでしょうか」


「私がその質問に答える権限を有してるのか分かりませんが既に私の知識はアンドリュー殿へ、そしてアンドリュー殿の知識は私へこの腕輪を通して得ました。 故に隠し立てせず答えるならは答えは、その通りです」


 マルコスニア殿からの質問に私は居住まいを正して答えるとそれまであった何処か緩やかな空気はピンッと張り詰めた。


「では秋山殿達はどうしてこの世界に?」


「それはこの世界と私達の世界を繋げた私達は【裂け目】と呼んでるモノ、その発生の原因と【裂け目】を塞ぐ為の手段を調査する事が目的です」


「【裂け目】ですか? つまり貴方方はその【裂け目】を通ってこの世界に来たと?」


「はい、その通りです。 そしてこの村は元々は廃村になっていたので私達が活動する為の拠点として再整備しました」


「成程、そう言う事でしたか。 この廃村は12年前、目の前の密林から魔獣が氾濫した際に襲われ破棄したのです。 それが復興して居たので驚いていたのですがその様な理由だった訳ですね」


 アンドリュー殿の質問に答えてるとファランド殿は納得がいった、とばかりにしきりに頷いた。


「ファランド殿、貴方がこの地域を収める辺境伯家の血縁者と知った上でお聞きします。 この私達が拠点としたこの元廃村ですが、辺境伯はどの様な対応をされるか貴方の予想で良いのでお聞かせ下さい」


 私はファランド殿を見据え、今後活動して行く柄で無視出来ないであろう辺境伯がこの拠点に対してどういう対応をするか尋ねた。

誤字脱字がありましたらお気軽にご連絡ください。

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