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 第51話 一方其の頃…


「ありがとうございます、トージ。 これで時間を持て余す事も無くなります」


「分かりますよアンドリューさん。 入院してる時は兎に角時間が余るんですよね。 それに1日寝込んだだけで筋肉は直ぐ落ちますからね」


「そうですね、私も毎日の鍛錬をしないと落ち着かなくて」


「分かります、俺も休暇を貰っても気が付いたら筋トレをしてた事ありますよ。 何かこう体を動かさないと落ち着かないと言うか」


「トージもそうなのですね。 休む時は休まなくてはいけないと分かってはいるんですがこればかりどうしようも無くて」


「はははっ まぁこれも一種の職業病何でしょうかね。 取り敢えず頼まれた物で持ち込み許可が出た奴の内基本的な物は大体持って来ましたよ」


「しかし… 世界は違えども筋力訓練での道具は似た物ばかりなのですね」


「そりゃ世界は違っても体の構造は一緒なんですから同じ様な道具があっても不思議じゃないでしょ」


「成程、そういう物ですか」


「少なくともそう解釈してるみたいですよ。 お偉い方は」


 アンドリューが頼んだトレーニング道具のレクチャーが一通り終わり2人は談笑をしていた。 


「所で結果の方はまだ?」


 アンドリューが気になってた事を訊ねると尋ねられたトージは壁に掛かってた時計を見た。


「そうですね、国民投票の締め切りがあと1時間で集計がどれくらいかかるか分かりませんから少なくとも後2時間はかかるんじゃないですかね」


「そうですか」


「まぁもう賽は投げられた訳ですから後はただ待つしか無いですよ」


「ええまぁそうなのですが。 やはりどうしても気になりまして」


「まぁ気持ちは分からんでも無いですよ。 自国の命運が掛かってるかも知れないんですから気になって当然でしょ」


「すみません」


「謝らなくて大丈夫ですよ」


「気になると言えば私達は日本には無事来られましたがちゃんと向こうに帰れるのか、と言う事も気になりまして」


「あ~ それに関しては俺は何も言えないですね。 ただ、俺達自衛隊員が何度も行き来出来てるんで帰れる確率は高いと俺は思ってるんですが」


「それに関しては私も同意見です。 が、最悪の場合は此方に骨を埋める覚悟もしております」


「…もしもそうなってしまった場合、アンドリューさんはどうされるおつもりですか?」


 トージからの質問にアンドリューは考えるそぶりを見せたがやや苦笑気味答えた。


「自衛隊に入団するのも悪くないかも知れませんね。 幸いレーコ嬢の知識で日本の事はある程度は理解していますので他に出来そうな事も他に思いつきませんし」


「確かにそれが一番無難なのかも知れませんね。 しつこい連中に押しかけられる事も無いですし」


「報道記者… でしたか?」


「特にゴシップ系のね。 所でアンドリューさん、一つ込み入った事を聞いても?」


「ええ、私で答えれる事なら構いませんが」


「前から気になって居たんですがアンドリューさん、貴方班長、秋山准陸尉の事どう思ってるんで?」


 マークからの質問を受けそれまでの何処かのんびりとした雰囲気が一気に消し飛び張り詰めた空気が病室を包み込んだ。


「それはどう言う意味でしょうか?」


「別に大した意味じゃ無いですよ。 ただ、秋山准陸尉の事をどう思ってるのか気になりましてね。 俺の気のせいじゃなければ少なからず好意を持ってるでしょ」


「…上手く隠してたつもりでしたが何処でお気づきに?」


「俺が気づいたのは何と言うか、俺も一時期秋山准陸尉に恋慕を抱いて居たから、ですかね。 だから気づけたんだと思います。 まぁ今じゃすっかり諦めましたが」


「それはどうしてでしょうか? レーコ嬢は素敵な女性だと思いますが」


「確かにそれは否定しませんよ。 自衛隊と言うより此処の部隊に属してる男なら少なからず誰もが秋山准陸尉に惹かれる程でしょうね。 故にライバルも多い。 だけど俺が諦めたのは別の理由ですよ」


「参考までにお聞きしても?」


「別に構いませんよ。 俺が諦めたんは彼女の祖父の事を知ってしまって逃げたんです」


「レーコ嬢の御爺様ですか? すみません、話が見えないのですが」


「簡単に言えば彼女の祖父は自衛隊の将軍なんです。 俺はその事にビビって、怖くなって逃げたんですよ」


「それは、本当なのですか?」


「ええ、知ったのは本当に偶然でしたが。 知ってる奴は殆ど居ないと思いますよ。 少なくとも上官クラスなら知ってる人が居ても不思議じゃないですけど」


「そう…ですか」


「あ、俺が押してた問うのは内密にお願いしますよ」


「ええ、分かりました。 それと貴重な情報に感謝します」


「いや、お礼を言われる程の事じゃ無いですけどね」


 トージ、高山はアンドリューからお礼を言われて頭を掻きながらそっぽを向いた。 が、直ぐに表情を引き締めてアンドリューに向き直った。


「今の言葉だと諦める気は無いんですね?」


「そうですね、レーコ嬢は簡単に諦められない程素適な女性ですので」


「…ですが、どうするつもりです? 俺達自衛隊、いや日本はアンドリューさん達の世界と繋がる【裂け目】を閉じる事を目的に動いてる。 【裂け目】を閉じたらもう二度と会えなくなるでしょ」


「ならば私と向こうに残って貰える様に鋭意努力しましょう」


 トージからの質問にアンドリューは当然とばかりに答えた。


「…今の言葉が何を意味するか貴方は理解して居るのですか?」


「それはどう言う意味でしょうか?」


 アンドリューからの問いにトージはそれまで座ってたパイプ椅子から勢い良く立ち上がりアンドリューの胸倉を掴み引き寄せた。


「今、アンタが言った事は秋山准陸尉に家族との縁を永遠に切れって事だ。 家族だけじゃ無い‼ あの人の友人や仲間、あの人と関わりのある全ての人達と縁を切れって事だ。 聡明なアンタがその事に気付いてねぇ訳ねぇだろうが!?」


「私は王に忠誠を捧げた身、それをおいそれと捨てる事等出来る筈もありません。 ならば、レーコ嬢に私と共に居たいと思って貰える様努力するのは当たり前でしょう」


「…その様子じゃ貴方が日本に残る選択肢ははなっから考えて無いな?」


「それは立場が逆になるだけです。 何も根本的な問題は変わっていません」


 トージは掴んでた手を離すとパイプ椅子に座り直した。 手を離されたアンドリューは服を直すと姿勢を正した。


「トージ、貴方の先程の怒りは本物でした。 故に私の本心を話しましょう」


「ああ、聞かせてくれ」


「確かに私はレーコ嬢を本気で好いています。 ですが、私はこの先を望みません。 望んでしまえばどちらかが必ず辛い思いをするからです。 故に私はこの気持ちをレーコ嬢に伝えるつもりはありません」


「…いいのかよそれで」


「良いか悪いかでは無く、他に手の施し様が無いのです。 この先を望めば… 私はレーコ嬢にそれを望みませんし望みたくありません」


「チッ 分かったよ。 ったく神様ってのが本当にいるんなら相当捻くれてるよ。 互いに叶わない恋心を抱かせるんだからな」


「本当にそう…で… ん? トージ、今なんと?」


「あ? 何がだよ」


「ですから先程トージは互いにと言いましたか? それはつまり」


「…もしかして気付いて無かったんですか? どう見ても秋山准陸尉はアンドリューさんに惚れてるのは丸分かりでしょ」


 トージから指摘されてアンドリューは驚いた表情を見せて次第に顔が赤くなっていった。 本人もそれに気づいたのか両手で顔を覆って俯いてしまった。


「まさか気付いて無かったのか!? あんな分かりやすかったのに? と言うか良い大人の男がそんな女っぽい仕草しても誰も喜ばねぇぞ!?」


「仕方ないでしょ‼ 今迄純粋な好意を向けられる事等無かったのですから‼ 今迄私にすり寄って来たのは皆私の顔と職柄か爵位に引かれ下心満載な鬱陶しい女性ばかりですよ。 一時は女性不審に陥ったりしたのです、それでどうやって気づけと言うのですか‼」


 トージからの問い詰めにアンドリューが今までに無い程感情を露わにして叫んだ。 その姿に問い詰めた筈のトージの方がたじたじになった。


「お、おう。 それは何と言うか大変だったんだな、すまん」


「あ、すみません。 つい感情的になってしまいました」


「いや、気にしないで下さい。 元はと言えば俺から降った話題ですし。 と、取り合えずお茶での飲んで落ち着きましょう」


「そうですね」


 2人はトージが持って来ていたペットボトルのお茶をほぼ同時に飲んだ。


「そう言えばアンドリューさん、俺の向こうの言葉どうですか?」


「え? ああ、随分上達されましたね。 もう普通に会話は問題無いと思いますよ」


「ぅっし‼」


 そう、今までの会話はトージからの願いでアンドリュー達の世界の言葉で全て行って居た。


「しかし【裂け目】を閉じるつもりなのに何故其処まで向こうの言葉を?」


「あ~ アンドリューさんだから言うけどさ、俺【裂け目】を閉じる時向こうに残ろうと思ってるんだ」


「…理由を聞いても?」


「辺境伯邸のメイドのサラさんは分かります?」


「ええ、何度かお会いしましたので」


「実は内緒にしてるんですが密かにお付き合いを始めてましてね。 それで必死になって勉強してるんですよ」


「な!? それは本当ですか?」


「ええ、本当です。 まだ誰にも言って無いのですけどね、ただ同じ班の柳田、マークは薄々気付かれるっぽいですが」


「しかしトージ、貴方のご家族はどうするのです」


「実は俺は孤児院出身で親兄弟は居ないのでその辺りは心配して無いんですけど、問題は自衛隊の方でしてね。 どうしたモノかと今悩んでます」


「孤児院… それは申し訳ありません。 確かに組織を抜けるとなると色々大変でしょう」


「ああ、孤児ってのは気にしないで下さい。 俺の中で等の昔に折り合い付けてるんで。 で、一番の問題はどのタイミングで抜けてどうやって残るかって事なんですよ」


「それは確かにそうでしょう。 そもそも可能ですか?」


「正直難しい、と言うより余程上手く立ち回らなければ無理でしょうね。 かと言って撤退前に辞職してしまえば早々に日本に戻されるでしょうし。 ホント悩んでます」


「其処は素直に上官に相談されてみてはどうです? 天川殿は話の分かりそうな方でしょう」


「それはそうですけど、天川一佐に相談したら更に上まで話が行きそうで躊躇してまして」


「まぁそうなるでしょうね」


 その時高山が持つ端末の呼び出し音が鳴り響いた。

誤字脱字がありましたらお気軽にご連絡ください。

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