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 第4話 目の前で

 翌朝私は町田3曹に起こされるまで寝ていた。 起こされた時私は起床ラッパにすら気づかない程寝過ごした事に愕然としたが町田3曹からの「洗い物が終わりませんから早く食べてください」と言われ追撃を受けながらもベットから出て身支度を整えてから食堂で朝食を食べた。


「あ、秋山陸曹長は朝食後に司令部に来る様に先程連絡がありましたよ」


「…了解した」


 それから素早く朝食を食べた私は町田3曹に食器を渡すと一度部屋に戻り再度身嗜みを整えてから司令部に向かう為に家を出た。 司令部に向かう道すがら昨日の被害を改めて目の当たりして愕然とした。 倒壊した家が確認出来ただけでもそれなりにあり片付けをしてる隊員の中にも腕や頭に包帯をしてるのが見て取れた。 


 道すがら私に気付いて挨拶をしてくる隊員にそれを返しながら私は司令部のある家へと向かう足は速さを増した。 司令部のある家に着くと私は一度深呼吸をしてから入り食堂兼会議室の扉をノックしてから入った。


「おはよう秋山陸曹長、取り合えず椅子に座りなさい」


「はっ おはようございます。 それでは失礼します」


 私は天川1等陸尉に挨拶してから勧められるまま椅子に腰かけた。


「先ずは昨夜の巨大猪の対応ご苦労だった。 それと例の4人組の対応も、だな。 それに伴い私を含めた尉官同士で話し合ったが秋山陸曹長には今後農作業の従事から外れて貰う」


「それは… いえ、分かりました」


「不服かも知れないが今君には農作業よりも最優先でして欲しい事がある為理解してくれ」


「最優先、ですか?」


 私は天川1等陸尉から言われた事に内心首を傾げながら訊ねた。


「そうだ。 昨日あのアンドリュー殿から得た知識を纏めて提出して欲しいのが1点。 得た知識からこちらの言語の手引書、の様なモノが可能なら作って欲しいのが1点。 最後に昨日この拠点に受け入れた4人との通訳をして欲しい。 それとだ、昨夜あれからホワイトベースに視察に来ていた陸将補と協議したが今後君の重要性を鑑みて近々昇進するだろう。 それに伴い秋山陸曹長、君は司令部付きとなる見込みだ」


「…………………え?」


 私は何を言われたのか理解出来ずたっぷりと間を開けてから間抜けな返答をしてしまった。


「まぁそうなるな。 だが考えてもみろ、現在この世界の知識を有してる唯一の自衛隊員である君の重要性は計り知れない。 そらに唯一この世界の現地民と何の問題も無く意思疎通が出来るのは君だけだ」


 天川1等陸尉から言われて私は漸く事態の重要性を理解し始めた。 言われた通り現段階でアンドリュー殿始め彼等4人と会話が可能なのは私だけで、アンドリュー殿が有してた知識に限るがこの世界の知識を持ってるのも私だけ。 私が上官の立場なら当然ほっておく訳が無かった。 その事に思いいたり私は頭を抱えたくなった。


「そんな顔をするな秋山陸曹長。 悪い事ばかりでもないぞ」


「どんな所がでしょうか?」


「先ず昇進すれば当然だが給料が上がる」


「この拠点に居る限り日本円って意味ないですよ?」


「…そうだな。 それ以外だと個室が貰えるが」


「現状でも得に不満が無いのであまりメリットにも思えません。 むしろ責任が増えるばかりでデメリットが大きく感じるのは私だけでしょうか」


「…………」


「…………」

 

 私の返しに天川1等陸尉は視線を彷徨わせ互いに無言になったが天川1等陸尉は咳ばらいをして真剣な態度になったので私も姿勢を正した。


「秋山陸曹長、本日から拠点に保護した現地民4名の監視と通訳を命ずる。 また平行しアンドリュー殿から得た知識を可能な限り速やかに纏め提出を命ずる」


「了解しました」


「必要なら地下からマイクロパソコンを司令部宅より持ち出しを許可する。 基本保護した4人が治療を受けてる家に控える様に。 それと連絡用無線は必ず携帯する様に、以上」


「…了解」


 私は椅子から立ち上がり敬礼をしてから部屋から退出すると大きな溜息を付いてから地下室司令部付き備品庫からマイクロパソコンを受け取るとアンドリュー殿達が居る家へと向かった。


「おはようございます。 昨夜は寝れましたか?」


 私はアンドリュー殿達が治療を受けている家に着くとノックをしてから家に入り其処にいたマルコスニアさんに声を掛けた。 マルコスニアさんは私を見て驚いた顔をしたが私の顔を覚えて居たのか直ぐに気が付いてくれた。


「ああ、おはよう。 寝心地の良いベットのお蔭でぐっすり眠れました。 それと怪我の手当てをして頂きありがとうございます」


 マルコスニアさんはそう言うと私に向けて頭を下げた。 が、その時奥から鋭い声が聞こえた。 そちらを見ると騎士団長のベンドール殿だった。


「マルコス‼ 得体も知れない相手に気安く頭を下げるとは何事だ!」


「しかし団長、彼女と彼女の仲間に我々が助けられたのは事実です。 ならば礼を言うのは王国騎士として当然の行為です」


「それは王国民ならそうだろう。 だがこの村、村か? 兎に角此処の連中はアンドリュー曰く別世界の者達だと言うでは無いか、だとすれば正体も分からぬ得体の知れぬ者達ではないか」


「ベンドール殿、それは助けてくれた方を目の前にして言う事では無いのでは? いささか聞いてる私でも不愉快に思いますよ、先ずは助けてくれた上に治療までもしてくれた事に礼を述べては如何です?」


 ベンドール殿の後ろから声を掛けたのはこの周辺を領地としてる辺境伯の次男のファランド殿だった。 だがそんなファランド殿の指摘もあまり意味は無かったようだ。


「ふんっ 平民が貴族で騎士である私を助けるのは当然の義務では無いか。 何故当然の事に対して礼を言わねばならんのだ」


 ベンドール殿は腕を組み不機嫌さを隠そうともせずファランド殿の言い分に対して真っ向から否定した。 すると更に奥からアンドリュー殿が出て来るとベンドール殿を殴り飛ばした。


「なっ!?」


 アンドリュー殿の予想もしない行動に私は驚いて動けず、ベンドール殿を殴り飛ばしたアンドリュー殿をガン見してしまった。 その視線に気づいたのかアンドリュー殿は苦笑を浮かべたが直ぐに殴られた事で床に転んだままになってるベンドール殿を冷めい目で見つめた。


「団長、現時点を持って貴方のクリフトニア王国の王国第2騎士団長としての立場をブレンハワード・フォン・クリフトニア国王陛下の命により剥奪し拘束致します。 尚これを拒否、抵抗する場合は王に対して反意有とみなしこの場で処刑も許可されております」


「「「「なっ!?」」」」


 アンドリュー殿は懐から羊皮紙と思われる物を取り出しベンドール殿に見える様に突き出しながら言った内容にその場に居た全員が驚愕の声を上げたがベンドール殿が真っ先に正気に戻りアンドリュー殿に噛み付いた。


「アンドリュー、貴様どういう事だ‼ たかが子爵如きが何故その様な王命書を持ってる‼」


「以前から貴方のその特権階級特有の傲慢な態度は騎士団内に止まらず問題視されていました。 が、貴方の御父上が貴方の問題行動を権力で揉み消されていた為今まで見逃されていました。 その為3年前から私が内定調査を進めて来たのです。 そして十分な証拠も揃いそして今回の事が決定打となりこの命令書が出たのです。 今頃王都では貴方の御父上の伯爵も近衛兵により捕縛されているでしょう」


「何だと、王国建国以来ずっと王国を支えて来た我がルッツカード伯爵家を王は切り捨てたとでも言うのか!?」


「その通りです。 いくら建国以来続く伯爵家と言えども国にとって害になる事をすれば当然でしょう。 心当たり、ありますよね?」


「何の事だ?」


「まぁ惚けたければ惚けて構いませんがどうせ証拠は全部揃ってますから極刑に課せられるのは避けられませんよ。 大人しく縛について下さい」


 そう言うとアンドリュー殿は突き出してた王命書? を丸めて懐に戻そうとしたらベンドール殿が勢い良く飛び上がり腰の剣を抜いてアンドリュー殿に斬りかかった。 が、アンドリュー殿はベンドール殿の剣を難なく交わすと腰の剣を抜き逆にベンドール殿を斬り付けた。 


 斬られたベンドール殿はその衝撃で態勢を崩した所を追撃されアンドリュー殿に剣で胸を突き刺された。 突き刺されたベンドール殿は持ってた剣を落とすとアンドリュー殿にしがみ付いたが直ぐに力付き膝から崩れ落ちた。


 床に崩れ落ちたベンドール殿を冷たい目で見降ろしてたアンドリュー殿は剣に付いた血を振り払ってから取り出した布で綺麗にすると剣を鞘に納めた。


「秋山殿」


 アンドリュー殿に呼ばれ私はビクッと体が震え、まるで夢でも見てる様な感覚から一気に現実に引き戻され情けない事にその場にへたり込んでしまった。 


「秋山殿!? 大丈夫か?」


 その様子にアンドリュー殿始め他の2人も私に近づいて私を心配してくれたが私は目の前で人が殺される光景を見て酷く動揺してる事に気付いた。


「マルコスニア、食堂に水がまだあったはずだ。 コップに次いで持って来てくれ」


「分かりました」


「それからアンドリュー殿は一旦秋山殿から離れた方が良いだろう。 人を目の前で殺した貴公に秋山殿が恐怖を覚えた可能性もある」


「…そうだな、そうしよう」


「水を持って来ました!」


 それから私はファランド殿に支えられ殺人現場となった今から出て食堂の椅子に座らされマルコスニア殿から差し出された水を飲み干した。 私は気持ちを落ち着かせる為テーブルに肘を付き頭を抱えたが3人は何も言わずただじっと待ってくれた。


 どれほどそうしてたか分からなかったが何とか気持ちを落ち着かせて腕時計を見ると意外な事に10分程しか経って居なかった。


「アンドリュー殿、説明はして貰えるのですね?」


 私は頭を上げて私から一番遠い位置で壁にもたれていたアンドリュー殿を見つめ訊ねた。


「勿論だ。 だがその前に昨日お会いした秋山殿の上官である将軍もご一緒して頂けると有難い」


「分かりました」


 アンドリュー殿の要望に応える為私は無線機を操作した。


「此方秋山、ポイントT-09にて問題発生」


「此方司令部、問題知らせ」


「T-09にて対象内にて傷害事件発生。 対象者1名死亡」


「…もう一度報告頼みます」


「T-09にて対象内にて傷害事件発生。 対象者1名死亡」


「了解、直ちに警務科隊員をそちらに送ります」


「了解、それと状況報告に天川1等陸尉の同席を対象が希望しています」


「了解、直ちに天川1等陸尉にも伝えます。 秋山陸曹長はその場で待機、対象者の監視願います」


「了解」


 私は無線での連絡を入れ終わると一度大きく息を吐いた。


「間もなく専門の隊員が来ます。 それまでこの部屋で待ってて下さい」


 私が伝えると3人は頷いた。

誤字脱字がありましたらお気軽にご連絡ください。

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