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 第48話 いやいやいや、え? マジで?

新年明けましておめでとうございます。


今年も宜しくお願いします。

 その後柳田達がアンドリュー殿の荷物から薄い赤い液体が入った小瓶が収められた木箱が見つかったと報告があり3人に1本づつ医務官が慎重に飲ませた。 が、それで3人の状態が劇的に良くなった訳では無かった。


 私はと言うとあの加藤医務官からノーラに魔力を吸われ倒れかけた事を報告されあの後念の為と言いつつも強制的にベットで静養させられる事となっった。 まぁそれでも病室はノーラ達の病室の隣にしてくれたりと色々気遣って?くれたみたいだった。


 だが魔力欠乏症に近い症状だろうと判断された私は衛生科を主軸に複数の科の隊員から様々な問診を受けた後にもう一度うんざりするほど色々検査を受ける羽目となりそのせいか検査を終えた後に倒れる結果となった。


 翌朝遠くで聞こえた起床ラッパで目が覚めた私はベットから起き出して体を動かして自分の状態を確かめて見ると多少の倦怠感、だるさを感じたが普通に動けそうだと思えた。


 病室で朝食を食べた後ノーラ達の様子を見に行こうとしたら加藤医務官がアンドリュー殿が目を覚ましたと報告に来た。 ただアンドリュー殿も日本語が話せるのだが微妙にコミュニケーション、会話が怪しいので通訳として来て欲しいと言われて加藤医務官の案内で私はアンドリュー殿の病室に向かった。


「アンドリュー殿、目が覚めたんですね。 今の状況はどの程度把握されてますか?」


 病室のベットにはまだ顔色が若干悪いがそれでも美味しそうに朝食を食べてるアンドリュー殿を見て安心しながら私は訊ねた。 私が訊ねるとアンドリュー殿は持ってたフォークを皿に置くと私に頭を下げて来た。


「レーコ嬢、日本に来て早々迷惑をかけて申し訳ありません。 状況はトージ、高山殿から大体は」


「そうですか。 それで体の方はどうですか?」


「まだ万全とは言えませんが私は鍛えていますので動けます。 魔力も4から5割程の回復程度ですね」


「それは大丈夫なのですか? あ、それと無断でアンドリュー殿の荷物を漁り、中にあった回復薬と思われる赤い飲み物を3人に処方しました。 非常時とは言え荷物を勝手に漁り申し訳ありません」


「それこそ気にしないで下さい。 その処置が無ければ私はまだ寝たままだった筈ですから」


「そうなのですか? 魔力は休めば自然と回復すると本には書いてありましたが」


「レーコ嬢、それは我々の世界での話です。 日本、更に言えばこの世界では魔力はとても希薄で自然回復では数日は掛かったはずです」


 アンドリュー殿の言葉に私は引っかかりを覚えて一瞬首を傾げたが何処に引っかかったのか気付いて驚いた。


「アンドリュー殿、今、この世界にも魔力があるんですか?」


「ええ、私も驚きました。 ですが私達の世界と比べるとほぼ無いに等しい程ですがそれでも本当に極わずかですが魔力を感じました。 恐らく魔力欠乏症になって無ければ魔力が無いと言われればそのまま納得してしまう程ですが」


「それでもこの世界にも魔力があるんですね?」


「ええ、ありますね」


 アンドリュー殿の返事に私は息を詰まらせそうになりながらもその重要性に慄いた。 この世界には無いと思われていた「魔力」。 それが私達の世界にも極極僅かだがある。 それが意味するモノを考えようとして私はそれ以上の思考を止めた。 私が思った事が余りにも荒唐無稽で現実味が無いと思えたからだ。 だがそれでもこの事は上に報告すべきだと思った。


「それでレーコ嬢、之から私はどうすれば良いですか?」


「取り合えず3人の体調が戻るまで此処で休んで貰う事になると思いますがそれ以上の事はまだ私も聞いていませんので…」


「分かりました。 まぁ今の状態では満足に動けませんから回復に努める事にします」


「はい、ゆっくり休んでしっかり回復して下さい。 それでは私は一度失礼しますね」


「ええ、ありがとうございます」


 私は椅子から立ち上がるとアンドリュー殿に一度頭を軽く下げてから病室を出ると自分が休んでた病室には戻らず1階にある事務所へと駆け込み駐屯所司令の猪狩1等陸佐に至急面会を申し込む為連絡を入れて貰った。 


 猪狩1等陸佐は私の直接口頭で伝えるべき事案が発覚したと言う発言を受け直ぐに迎えを寄越すと言って面会を承諾してくれた。 その発言は本当で医療棟の正面玄関に迎えの車が到着したのは連絡して3分後だった。 私は直ぐにその車に乗り5分後には渡辺1等陸佐の執務室に立って居た。


「それで人払いまでさせてまで私に直接口頭で伝えなければならない事とは何だね? 秋山准陸尉」


「はっ 目を覚ましたアンドリュー・クリトバニア殿との会話から驚くべき事実が判明しました」


「【裂け目】なんて超常現象が目の前にあるんだ、それ以上に驚く事なのか?」


「はい、もしもこの事が世界に知られた場合には世界大戦が起きても可笑しくは無い程の事だと愚考します」


「…聞くのが怖くなって来たね。 だが聞くしか無いんだろう。 言って見ろ秋山准陸尉、何を知った?」


「はっ 驚くべき事にこの世界にも極僅かながらにも魔力がある事がアンドリュー殿との会話から判明しました」


「・・・・・・・・・・・・・・・は?」


 私が伝えると猪狩1等陸佐はたっぷりと間を開けてから一言だけ言って眉間を解し始めた。


「いやいやいや、え? ちょっと待ってくれ。 え? どう言う事? この世界にも魔力が? マジで? え? これどう報告すりゃ良いんだ?」


 猪狩1等陸佐は眉間を解すのを止めると両手で頭を抱えて独り言… と言うには大きい声で呟き始めた。 報告した手前猪狩1等陸佐がそうなる事は予想していたが実際目の前で頭を抱えて呟いてるのを見るとどうにも居た堪れなかった。


 猪狩1等陸佐はその後2分程頭を抱えて呟いていたがふいに頭を上げて座っていた椅子の背もたれにもたれかかった。


「取り合えず秋山准陸尉、君の判断は間違って無い。 この件は例え同じ駐屯地内ので電話越しでも報告すべき事では無い。 君が人払いを申し出たのも頷ける、その点は褒めよう」


「ありがとうございます」


「だがこの件は余りにも私の手には余る。 いや、余り過ぎる。 此処からは無礼講で話そう。 秋山、お前はこの件どうすべきだと思う?」


 猪狩1等陸佐はそう言うと真っすぐ私を見つめて来た。


「本来ならば許されない事ですがこの話は上には上げず、私と猪狩1等陸佐、私達2人の胸の内に仕舞っておくのが最善かと。 上に上げれば当然政府にも話が行きます。 政府に話が行けば諸外国に漏れる恐れがあり、漏れた場合にはどの様な事態になるか想像も出来ません」


「ああ、俺もそう思うよ。 出来る事なら俺もそうしたい。 したいんだがなぁ…」


 猪狩1等陸佐はそう言うと椅子を回転させて視線を窓の外に向けると遠い目をして…いや悟りを開いたかの如く穏やかな顔をしていた。 それ以上に何と言うかもう猪狩1等陸佐から存在感と言うべきモノが物凄く希薄に感じとても危ういのではと心配になって来た。


「あの、もしご存じなら私のお爺ちゃんにだけは報告を上げるのはどうでしょうか?」


 余りにも猪狩1等陸佐の存在感の希薄さに危機を覚えて普段の私なら絶対言わない提案をした。


「君のお爺様? 誰? 何してる人かな? こんな時にそんな事言うって事は政界とかに強いコネがあったりするの?」


 猪狩1等陸佐は私の提案の意図が読めなかったのか首を傾げながらも穏やかな表情で尋ねて来た。


「えっとその、お爺ちゃんからあまり言わない様に言われてるのですが幕僚長やってます。 はい」


「バクリョウチョウ… 爆寮長? ば… 幕僚長!? え、じゃぁ秋山准陸尉、君はまさかあの秋山幕僚長のお孫さん?」


「ええ、まぁ、はい」


「まじか」


 猪狩1等陸佐はそれだけ言うと再び椅子を回転させて今度は体ごと窓の外に向けてしまった。 それを見てやはりこの事は言わない方が良かったかもと後悔し始めた。


「秋山、確かにいい案かも知れない。 が、今は秋山幕僚長は多忙で手が離せないと思う。 それにどうやって幕僚長だけに伝える気か教えてくれ」


「まぁ幕僚長ともなれば忙しくても不思議は無いと思いますが。 どうやって、と言われたらプライベート通信ですけど」


「成程な、組織間での報告じゃなくて身内の強みを生かすのか。 ありかもしれん。 因みに忙しい理由は政府とバチバチにやり合ってるからだ」


「政府と? あ、もしかして例の件ですか?」


「それもあるがホワイトベースにファーストでの不始末等がメインだろうな」


「ああ、成程。 納得しました」


 猪狩1等陸佐から伝えられた忙しい理由を聞いて私も思わず遠い目になって納得してしまった。 そりゃあの人1人で収まらず結構な数の人が関与し更迭された人も多く自衛隊内も一時的にガタガタになり掛けた程だと聞いた。 その陣頭指揮をとったのがお爺ちゃんだと聞いて驚いたのは記憶に新しい。


「それでどうしますか?」


「そうだな、黙ってて後でバレた時の事を考えるならば秋山幕僚長には知らせておくべきだろう。 そうすれば上には最低でも報告したと言う言い訳も出来る。 規則違反になるのは重々承知の上だがこの件は秋山の案で行かせて貰おう。 頼めるか?」


「分かりました。 まぁ私が言い出した事ですので、それと私とお爺ちゃんの間柄は出来れば」


「分かってる。 誰にも言わんさ。 むしろ知りたく無かった」


「えっとその、何かすみません」


「気にするな、この件をどうにかするにはそれが最善だろう。 と言うより打ち明けてくれて感謝する。 それでいつ連絡する?」


「なるべく早くした方が良いと思うのでこの後にでも、と思ってますが」


「そうか、分かった。 くれぐれも連絡する時は周囲に人が居ないのを確認してからにしてくれ」


「了解です」


 私は猪狩1等陸佐に敬礼して執務室から出ると私の荷物がある医療棟へと向かった。 

誤字脱字がありましたらお気軽にご連絡ください。

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