第46話 いざ日本へ 其の1
読者の皆さんのお蔭でもちまして、総合評価数が遂に600ポイントを突破しました‼
本当に、本当にありがとうございます。 皆様からの評価を励みに之からも頑張って行きますのでこれからも宜しくお願いします。
PS:年末年始も変わらず土曜AM8:00に更新します。
翌朝、昨夜のうちに迎えの為に来たヘリに乗り私達はホワイトベースに到着した。 ノーラ達3人は空から見えるホワイトベースの全貌に驚き、地上に降りてからは立ち並ぶ建物群に驚いていた。
ホワイトベースは【裂け目】を中心に50m間隔で高さ5mの塀で2重に囲み、その外側の北側に発電施設や浄水設備等の区画、東側には各種車両に大砲、その他武器弾薬の保管区画、南側には航空施設及びその格納庫と滑走路、西側に各種通信設備や兵舎、司令部等が集まった区画となっている。
南側のヘリポートに着陸すると迎えに来ていた車に乗って私達は司令部のある建物へと案内されて通された部屋には挟間陸将補と見慣れない女性が待っていた。
「お久しぶりです、エリアルノーラ王女殿下。 横に居るのはホワイトベースに出向して来てる外務省の者で名を雪菜 早川と言います」
「お会いできて光栄です、エリアルノーラ王女殿下。 雪菜 早川と申します。 今回の殿下の日本行きの案内人を勤めさせて頂きますのでよろしくお願いいたします」
「初めまして、エリアルノーラ・フォン・クリフトニアです。 此方こそよろしくお願いいたします」
「王女殿下、天川より説明があったと思いますが本当に宜しいですので?」
見慣れない女性の紹介と挨拶が済むと挟間陸将補はノーラを気遣ってか改めて本当に日本へ行くのか訊ねた。
「ありがとうございます。 ですが我が国の窮地を救う為とは言え無関係である貴国に助力をお願いするのです。 ならばそれ相応の対応をしなければなりません。 それに覚悟は疾うに済ませて来ております」
「分かりました… これ以上は王女殿下の覚悟に水を差す事になるでしょうから何も言いません。 それとお伝えしなければならぬ事もありますのでお座り下さい」
ノーラの言葉を聞いた挟間陸将補は目を閉じ何を思ったのか分からなかったが椅子を勧められたノーラが座ると挟間陸将補と早川さんも椅子に座った。 私とアンドリュー殿、ミーシャさんはノーラの後ろに控えた。
「王女殿下、昨日までの偵察で分かった事をお伝えします。 ですが心して聞いてください」
挟間陸将補はそう前置きをして偵察結果を淡々と語った。 一緒に聞いていた私も其処までとは思っておらず驚いたが当事国の3人は明らかに顔色が悪くなっていた。
現在攻め込まれてる川の対岸の街の後方にそれぞれ2万弱の兵団とその後方の都市の外周に凡そ3万程の兵団が偵察によってその存在が確認されていた。 又、湖の街を攻めていた軍船が戻る先を予測して対岸の偵察も合わせて行われており、対岸にある都市で大小合わせ50隻程の軍船も確認されていた。
「どうやら帝国は本気でクリフトニア王国を落とす気の様ですね。 過去にあったと言う侵攻時の軍勢より遥かに多い」
「お尋ねしますがその過去にあった帝国の侵攻時の軍勢の規模はどの位だったのですか?」
早川さんがアンドリュー殿が呟いた事に反応して訊ねた。
「私が聞いた話だと一番新しい物で17年前の侵攻時は4万程だったと記憶しています。 それに帝国は過去に3度、クリフトニア王国に侵攻して来ています。 その周期は確か10年から15年、それを思えば今回の侵攻は今迄よりもより周到な準備をしての侵攻かと」
「では過去の侵攻時はどの様に帝国からの侵攻を食い止めたのですか?」
「兎に角橋の架かった街での防衛に徹したと聞きましたが詳しくは」
「そうですか。 と言う事は橋の架かった街にはそれなりの防衛機構があるはずね。 ですが、現在攻められてる二つの街の内一つはほぼ陥落状態で更に今まで攻められた事が無かった湖畔の町は完全に占領されたと」
「早川さん、それは本当ですか?」
私は顎に手を当て考えながら早川さんが呟いた事に驚き思わず訊ねてしまった。 早川さんは私に訊ねられてしまった、と言う顔を一瞬したが諦めたのか溜息を付いた。
「ええ、本当です。 私が口を滑らさなければ挟間陸将補が恐らく伝えたでしょう」
「その通りですな。 因みに湖畔の町の住民は恐らく半数以上は逃げ出せた物と予測されます。 残り半数は逃げる者達の時間を稼ぐ為に残って抵抗をしたものと我々自衛隊は予測しています。 それと、レイニールでしたか? 其方の住民はほぼ避難出来たと予測されますが防衛に残った人達は恐らく」
そう語った挟間陸将補の表情は苦悶に満ちていた。ノーラ達3人はそんな挟間陸将補を見て何を思って居るのか私には分からなかった。 いつ侵攻が始まったのか定かではないが既にクリフトニア王国側は街と町を1つづつ落とされたと言う事は理解出来た。
「そうですか、それで逃げた住民達はどうしてるか分かりますか?」
「避難した住民は各街に向かってた王国軍と思しき軍勢と接触し保護された物と」
「それは何より」
陸将補からの返答を聞き出して初めてノーラは安堵の表情を見せた。
「王女殿下、一つ確認したいのですが宜しいでしょうか?」
「答えれる事であれば構いません」
「帝国の規模と国柄、そして双方の関係です」
「そうですね、正式な国交は開いていませんので詳しい事は私も知りません。 それでも構いませんか?」
「お願いします」
「私の教師から教えて頂いた限りでは国としての交流はありません。 ただ昔から対岸の街での個人や商会規模の貿易等は行われて来たそうです。 其処から伝え聞く帝国は武力国家であると予測されています。 又、帝国の規模は有する兵力から換算して少なくともクリフトニア王国の
3倍から4倍と予測してるそうです。 関係についてはもう語るまでも無いと思いますがあえて言うなら我が国は一方的な侵攻を何度もされてる関係です」
「そうですか、ありがとうございます」
ノーラが質問に答えると早川さんは考え込んでいるのかそれっきり黙り込んでしまった。
「王女殿下、先程のお話ですが私の方からも日本政府にあげておきます。 王女殿下からの質問が無ければこの後【裂け目】を抜け日本へご案内しますが如何いたしますか?」
挟間陸将補からの提案にノーラは一度後ろに控えていたアンドリュー殿に確認する様に見たがアンドリュー殿が首を左右に振ると挟間陸将補に向かって頷いた。
「お願いします」
「分かりました。 係りの者を呼びますのでそれまで此方の部屋でお待ちください。 早川さんも移動の準備をお願いします」
「え? あ、はい。 分かりました」
挟間陸将補に声を掛けられてそれまで思考の海に溺れていた早川さんも再起動して挟間陸将補について部屋から出て行った。 残された私達はノーラからそれぞれ椅子に座る様に促されて椅子に座って待つ事にした。 尤もノーラに遠慮してしまい係りの人が来るまで誰もしゃべらなかった。
私達は係りの人に案内されて司令部を出ると表には先に部屋を出て行った早川さんと特殊装甲に覆われたマイクロバスが止まっており私達はそれに乗り込み【裂け目】を抜ける事になった。 【裂け目】までの短い道中の間3人は見た目からは想像出来なかった乗り心地に驚いていた。
【裂け目】を取り囲む最初の防壁を通過したあたりから3人は明らかに緊張し始めた事が分かった。
「王女殿下、安心なさって下さい。 私も初めて【裂け目】を通った時は王女殿下みたいに緊張しましたがいざ通ってみると実にあっけない物でした」
「そうなのですか?」
「ええ、何せ【裂け目】を通ってる間、周りは暗闇に包まれていて何も見えないんです。 ですがドライバー… えぇっと、御者? 曰く真っ暗で何も見えないが何かに導かれる様に向かう方角は分かるそうです。 尤もその暗闇を抜けるまで1分程ですが」
「それは何とも不思議な話ですね」
「本当に不思議ですよね。 でもそう言う物なんですよ、【裂け目】って」
そう言って笑った早川さんに釣られてノーラも自然と笑ったのを見て私は密かに安堵の溜息を付いた。 本当は私がノーラ達に話しかけたかったがマイクロバスに乗る際に私の端末に送られて来たメッセージに気を取られてそれ所では無かったので正直助かった。 メッセージには
”王女殿下の来訪の情報漏洩の疑い有、複数の他国より圧力増加。 注意されたし”
メッセージを確認して正直頭を抱えたくなった。 情報が漏洩したと言うなら自衛隊側からでは無く政府側からだろう。 【裂け目】が確認されて以降日本政府は他国からの要求に時にはのらりくらりと時には強い意思で躱し続けて来た。 が、このタイミングでその圧力が急に増えたのなら間違い無く情報が洩れてると思った方が良いだろ。
今の時代の戦争はほぼ電子戦で兵士が直接戦うのは最終手段とまで言われてるがそれでも兵士が必要無くなった訳では無い。 敵国・仮想敵国に潜入する特殊部隊は言うに及ばず陸海空の各軍を各国は変わらず維持している。
そして【裂け目】が日本で確認されて以降間違い無く各国は特殊部隊の兵士を日本に派遣して来ている。 公安もそれとなく泳がさせていると聞いているが検挙するまでに至って無い為手が出せずにいるらしい。
それらの情報を踏まえると最悪特殊部隊から何かしらのアプローチが予想出来たので私は【裂け目】に着くまでの僅かな時間で柳田達と情報を共有して備える事にした。
誤字脱字がありましたらお気軽にご連絡ください。
感想、コメントもお気軽にお願いします。
また続きが気になる、読んでて面白い、等少しでも思って頂けたら下の☆☆☆☆☆マーク評価宜しくお願いします。 書き続けるモチベーションになります




