第41話 決意を新たに胸に秘めて
その後私はファーストに再度緊急報告を行い手紙を盗み読んで得られた情報を伝えた。 恐らく無線の向こうで盛大に頭を抱えてるであろう天川1等陸尉には申し訳無いが事を急がねば色々と後手に回るのは目に見えて居る為容赦無く伝えた。
側で聞いてた3人には報告が終わった後他言無用と伝え部屋を後にした。 部屋を出た所で運よく、いや私付として控えていた侍女さんに明日の朝食後に辺境伯と話したい旨を伝えて私はノーラの寝室へ行き泣きながら寝ていたノーラを抱きかかえる様に寝る事にした。
朝目が覚めるとノーラはまだ寝ており私の腕を抱え込んでいた。 私はそっとノーラの腕を解くとベットから降り身支度を整える為に私に当てが割れた部屋へ戻った。
朝食後、私は辺境伯の執務室に初めてお邪魔していた。
「レーコ嬢、何やら話があると言う事じゃったが何用かの」
「はい、出来ましたらこの後クレイスト殿を呼んで頂きたいのです」
「それは構わぬが何ゆえじゃ?」
辺境伯からの問いに私は包み隠さず昨夜の事を伝え、既に現状動ける範囲で既に自衛隊が動き始めてる事も伝えた。
「…よもや、とは思ってはおったが、其処までとはのう。 余程陛下は事を慎重に進めておられたようじゃの。 相分かった、直ぐにクレイスト殿とクレイスト殿が信用出来る者を屋敷に呼ぶとしよう。 それ以外の者は拘束させる。 不安要素のある者を今の姫殿下の側に置く訳にはいかぬ」
「ありがとうございます」
辺境伯は直ぐに決断を下し側に控えていたザガットさんに指示を出すとザガットさんは一礼し部屋から出て行くのを見送ると私は辺境伯にお礼を言って頭を下げた。
「礼には及ばんよ、レーコ嬢。 むしろ礼を言うのは儂の方じゃ、どうか姫殿下の事をよろしくお願いいたしまする」
「はい、全力を尽くします」
私の返事を聞いた辺境伯は静かに頷いた。 私はこの後の準備をする為辺境伯の執務室を後にし、ノーラが居るサロンへ侍女さんに案内された。
サロンで寛いで居たノーラに昨夜手紙を読んでしまった事を謝罪し、知りえた事を元に予定を変更したい旨をノーラに伝えた。
「手紙を出したままにしたのは私の落ち度です。 それを咎めるつもりはありません。 むしろ状況を理解した上で私を迎え入れてくれる事に感謝いたします」
そう言うとノーラは私に頭を下げた。
「お礼は天川1等陸尉にお願いします。 それと確認したいのですが馬車の隠し金庫の中身を移動させる事は可能ですか?」
「…可能ですが馬車の隠し金庫の存在を知ってるのは極僅かです。 正確に言えば私と私の専属侍女だけです。 故に出発前に馬車で何かすれば相手に気付かれる恐れがあります。 金庫の中身を出すならばファーストに着いてからの方が安全だと思います」
「やはりそうですか。 ではその様に護衛の手筈を整えます。 そうなるとやはり移動は明日になりますね」
「お手数をかける事になると思いますがどうぞよろしくお願い致します」
「ええ、お任せ下さい。 それでは色々と準備をしてまいりますのでこれで失礼させて頂きます」
「ええ」
それからファーストと連絡を取り合いながら諸々の準備を整えた所でクレイスト殿達が屋敷に到着したと侍女さんから報告を受け柳田を連れてクレイスト殿達が待つ応接間へと向かった。
「昨日ぶりですね、クレイスト殿。 此方は私の副官の柳田と言います」
「ありがとうございます。 初めまして柳田様、私はクレイストと申します。 それと、私の部下のオルフ・バングレー、アデリア・ツイストファー、ソニア・マッカーソン、セレドアです。 今私の部下で信用出来ると判断した者達です」
「そうですか、性がある方も居ますが貴族の方でしょうか?」
「オルフ、アデリア、ソニアの3人は貴族出身です」
「クレイスト、後は私が」
「…アデリアか、頼む」
「初めまして、異世界の方。 私はアデリア・バングレーと申します。 子爵家の次女となります。 オルフ、ソニアは共に男爵家の3男と次女となります。 私達3人は王宮魔法師団に入隊した時に実家からの縁は切れておりますのでご安心ください。 それに私達は元上級貴族位の隊員とは半ば仲違いをしております。 私自身もクレイストと志を同じくしておりますし、此度の任務も理解しているつもりです」
「…分かりました。 今はその言葉を信じます。 之からの詳しい話は座ってしましょう。 お掛け下さい」
椅子を勧めると5人は軽く頭を下げてから椅子に座った。 私達も席に座ると部屋に控えていてくれた侍女さんがお茶を配膳すると私に呼び出しベルを渡し退出していった。
「率直にお聞きします、皆さんは私達の事をどの様に思って居るのか教えて頂けますか? そうですね、先ずはアデリアさんから」
「……正直申し上げると困惑していると、言うのが一番近いでしょうか。 今対面してお話しておりますが貴方方が異世界の方、と言う事実を疑っていますが信じてみたいと言う気持ちもあります」
「おっしゃりたい事は何となく分かります。 ですが、之だけははっきりと申し上げる事が出来ます。 私達は間違い無くこの世界とは別の世界から人間です。 今此処にいる柳田と後2人が今この伯爵邸にお邪魔しており、明日向かう場所には90名程、そして拠点には3000名程がこの世界に滞在しています」
「3…ぜん」
私が伝えた人数に5人は驚いていた。
「他の方はどうですか?」
驚く5人には申し訳ないが私はどんどん訊ねて行くと5人ともアデリアさんと同じ様なモノだった。 そして昨日クレイスト殿にノーラが訊ねた事を4人にも訊ねて見ると微妙に異なるが概ね概要は理解出来ている事が確認出来た。
「皆さんが大体共通認識を持てて居る事を知れて安堵しました。 先にお伝えしておきますが、明日向かう事になる場所からしてこの世界の文明から逸脱した物が多々あります。 1週間程其処である程度慣れて頂き、その後拠点へと向かい皆さんの任務の【裂け目】を調査して貰う形となりますのでよろしくお願いします」
「分かりました」
私の簡単な説明を聞いて5人は頷いた。 その後も明日からの予定の打ち合わせを積めて行きそろそろ終わりに差し掛かった。
「あの、確認したいのですが俺達以外の人達も行くのですか?」
「…正直にお伝えします、私達の拠点へ案内するのは此処に居る皆さんのみです。 他の方につきましてはシュバッツェへ残って貰います。 勿論残る方はアンドルフ辺境伯が責任を持って対応して頂く事になっております」
「それは… いえ、分かりました。 不安要素を抱える者を排除するのは当然の事ですね」
「その通りです。 ご理解頂けて何よりです」
クレイスト殿は昨日のゴーマンの事を思い出したのか苦虫を嚙み潰したような表情をしたがその表情をかみ殺して答えた。
「それと皆さんは本日はこの館に泊まって頂く事になります。 そして明朝私達とエリアルノーラ王女殿下、皆さんと護衛で出発しますので」
「…分かりました。 迎えが来たと時荷物も一緒にと言われたのでもしや、とは思っておりました」
「そうでしたか、では明日から宜しくお願いします」
「此方こそ、宜しくお願いします」
私達は互いに頭を下げた。 私と柳田は一言断り先に部屋から退出し部屋へ戻り調査団の打ち合わせが終わった事を報告した。 それから私は再度のノーラの元に行き同じ報告するとノーラは安堵したのか椅子に深くもたれ掛かった。
「そうですか、クレイストが連れて来た者達は取り合えず信用出来そうなのですね」
「はい。 さっきまでの話し合いの場ではゴーマンの様な事もありませんでした」
「そう、良かったわ」
「それでは先程お伝えした通り、明日の朝出発しますので準備の方お願いしますね」
「ええ、分かったわ。 と、言ってもするのは私の次女なのだけど」
ノーラはそう言うと微笑んだ。 それを見て軽い冗談が言える程には落ち着いた事が分かり私も微笑んだ。
「あ、そうだ、レーコ。 その… 出来れば今夜も、その、えっと」
「分かりました。 用事が終わりましたら今夜もお邪魔させて貰いますね」
「…ありがと」
私が答えるとノーラは若干顔を赤くしつつ小さい声でお礼を言って来た。 そんなノーラが微笑ましく私は自然と微笑んだ。 同時にノーラを絶対に不幸な思いをさせてなる物かと改めて思った。
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