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 第3話 拠点防衛、そして話し合い

 私達が破壊された防護塀に辿り着く前に重機関銃の射撃音を止んだ。 その為私は配給されている弾薬が底を着いたのだと判断し更に急いで防護塀へと急いだ。


 破壊された防護塀へと着いた私は自分の目を最初信じられなかった。 何せ破壊された防護塀の向こう側には地面から突き出た太い槍に突き刺されて息絶えた巨大猪が3頭居たからだ。 しばしその光景に飲まれたがその脇にアンドリュー殿の姿が見えた事で正気に戻った。


「アンドリュー殿!」


 私は声を上げてアンドリュー殿を呼びながら彼の元まで走り寄った。


「秋山殿か。 無事で何よりだ」


「ありがとうございます。 それよりこれは一体…」


 其処で私はアンドリュー殿から視線を外し串刺しにされた巨大猪を見た。


「ああ、この壊された塀から入ろうと走って来たランデスボアに向けてアースニードルを撃ったのだ」


「アースニードル… 魔法、ですか?」


「そうだ。 秋山殿の知識では貴方方の世界では魔法は無い様だがそれは誠なのか?」


「え、あ、はい。 私達の世界では魔法は空想上の力とされております」


「成程。 魔法は無い代わりに今貴方方が手にしてる様な武器が発達した、と言う訳ですか」


「っ!?」


 アンドリュー殿からの指摘に私達は息を呑んだ。


「そう警戒されずとも良い。 と言っても無理であろうな。 それよりも早い所このランデスボアを処理した方が良い。 こいつらの血の匂いでアナイアの森から更に魔獣共が出て来るやもしれん」


「アナイアの森? 魔獣?」


「ん? ああ、俺の知識を得ても全てを理解出来て無いのだな。 尤も俺も貴方の知識を全て理解出来て無いのだがその辺は明日以降話し合おう。 それよりも今はランデスボアの解体だ。 そちらから手伝いを数名出して貰えないか? 流石に一人でこの数をこなすのは大変でなんでな」


「あ、はい、分かりました。 暫くお待ちください」


 それだけ答えると私は一度アンドリュー殿から離れ部下の元に戻った。


「鈴原2曹は居るか」


「はい」


「鈴原は無線で驚異の排除完了の報告をしてくれ。 それと…安藤3曹、すまないが未使用の対戦車弾を集め武器庫に返還した後使用した弾頭数を確認して武器科隊員に報告してくれ。 それと高山2曹は被害状況と負傷者の確認を急いでくれ。 それから天川1等陸尉に報告したら手の空いてる者で破壊された家屋の片づけの手配を頼む。 それから需品科の隊員をこっちに回してくれるように言ってくれないか? どうやらアンドリュー殿があの猪の解体を教えてくれるらしい。 来る時に解体用の大型包丁を忘れずに持って来るよう言ってくれ」


「り、了解しました」


 指示を出し終えた私は既に何やら作業を始めてるアンドリュー殿の所に向かって行った。


「アンドリュー殿、しばらくしたら手伝いに数人来ると思う。 それで今は何をされてるので?」


「秋山殿か、首の血管を切り魔法で掘った穴に落としてる。 言わば血抜き作業だな」


「ああ、成程」


「血抜きには時間が掛かる。 それも3頭分ともなれば朝まで掛かるだろう」


「ん? アンドリュー殿、このランデスボアは村の中でも2頭仕留めたがそちらも血抜きをした方が良いのか?」


「何? 確かに其処の壁が破壊されているのだから中に入った個体がいるのも当然か。 そうだな出来るなら血抜き作業をして欲しい」


「分かった、指示を出して来る」


「頼む」


 そう言って私はアンドリュー殿から離れて無線を持つ隊員を捕まえると村の中で倒した巨大猪の血抜き作業をする様に指示を出した所で天川1等陸尉から呼び出しを受けた。


「アンドリュー殿、私の上司が貴方と会って話がしたいと言っている。 血抜き作業に時間が掛かるのであれば出来れば一緒に来て貰えないだろうか」


「そう言うのは明日になると思って居たが良いだろう、案内して貰えるか」


「では私について来て欲しい」


 それから私はアンドリュー殿を伴い司令部のある家に向かった。 その道中は互いに何も言わず黙ったまま移動し司令部のある家へと着いた。


「こちらの家で上司がお待ちです」


 アンドリュー殿にそう言って家の玄関に入ると中に居た隊員に食堂で天川1等陸尉が待ってると告げられそちらにアンドリュー殿を案内した。


「秋山陸曹長、アンドリュー殿を案内して参りました」


「入って貰ってくれ」


「入ります」


 断ってから入ると私は一瞬驚いたがそのままアンドリュー殿を案内して室内へと入った。 部屋の中には中山2等陸佐以外の尉官全員が常装夏服に着替えて待ってた他に目立たないが部屋に隅にカメラが配置されていた。 恐らくあのカメラの映像はホワイトベースにも中継されてるのだろうと思った。


「秋山陸曹長、そちらの方に席を進めてくれ」


「はっ アンドリュー殿、そちらの椅子にお座り下さい」


「分かった」


 アンドリュー殿は頷くと椅子に座り佇まいを正した。


「秋山陸曹長、私達の紹介を彼にして貰えるか」


「分かりました。 アンドリュー殿、貴方から見て左から真田准陸尉、宮内2等陸尉、八神2等陸尉、そして現最高責任者の天川1等陸尉です」


「初めまして天川将軍、私はクリフトニア王国第2騎士団副団長のアンドリュー・クリトバニアと言います。 お会い出来光栄です」


 アンドリュー殿の言葉を通訳して伝えると天川1等陸尉は頷いた。 それから合図をすると町田3曹が全員の前にお茶を配膳し退出していった。 お茶が安全である事を示す為か天川1等陸尉始め他の3人もお茶を飲んだ事を確認するとアンドリュー殿も安心したのかお茶を飲むと驚いた顔をした。


「美味い」


「舌に合いましたか? このお茶は私達が良く飲んでる緑茶と言います」


「緑茶、ですか。 独特の渋みがありますがその中に茶葉の自然な甘みもあり奥深い味わいがありますね、普段飲んでる紅茶とは全く違いますがこれは之で美味しいですね」


「ありがとうございます」


「秋山陸曹長、彼は何と?」


 宮内2等陸尉に聞かれ私は素直に彼の緑茶に関する感想を伝えると嬉しかったのか笑顔を浮かべながら頷いた。


「陸曹長、希望されるなら少量だが茶葉を譲る事が可能だと彼に伝えて貰えるか」


「分かりました。 アンドリュー殿、宮内2等陸尉が緑茶の茶葉を少量ならお渡し出来るとの事ですが如何いたしますか?」


「何と!? それが本当なら是非にお願いします」


 私は頷くと宮内2等陸尉に茶葉をお願いするとやはり嬉しそうに頷いた。

それから宮内2等陸尉は明日の午前中には茶葉を用意すると約束した。


「さて茶葉の話は此処までとしてアンドリュー殿に来て頂いたのはこの拠点の防衛に際し助力を頂けた事に関してお礼を述べる為です」


 宮内2等陸尉とアンドリュー殿の会話が一区切りついた所で天川1等陸尉がアンドリュー殿を呼んだ理由を説明し通訳して伝えるとアンドリュー殿は頭を振った。


「私は仲間達を治療をして頂いたお礼にここの防衛に助勢したに過ぎません。 私の方こそ貴方方にお礼を述べたい。 仲間の命を救って頂き心より感謝申し上げる」


「だが貴方の助勢により救われた部下も居るのも事実なのです。 で、あれば部下を持つ上の立場の者が礼を言うのは当然の事」


「貴方は人格者で在らせられる。 私も部下を率いてる身、その在り方は尊敬に値する」


「貴方の様な方からその様な評価は身に余る賛辞、ですが有難く受け取らせて貰います。 ですがこれ以上は堂々巡りになります故。 アンドリュー殿は本日はもうお休み下さい。 猪、ランデスボアの処理は此方で引き受けますので」


「それではお言葉に甘えさせて頂きますが一つだけ宜しいでしょうか?」


「何でしょうか?」


「ランデスボアを解体した際、心臓の所に拳よりやや小さめの水晶の様なモノが取れる筈です。 それはこの世界ではそれなりの金額で取引されますので残しておいて損は無いかと」


「分かりました。 秋山陸曹長、彼を案内したら君も今日は休んで構わない」


「分かりました」


 これまでの会話の通訳を終えて私はアンドリュー殿を伴い司令部を後にすると治療後に案内した家へと案内を終えて私も割り振られてる家へと戻りそのまま私はベットへ潜り込むと直ぐに眠気に襲われそのまま眠りについた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 秋山陸曹長とアンドリュー殿が立ち去った後の司令部では先程まで事を振り返っていた。


「真田、お前はあのアンドリュー殿をどう見る?」


「そうですね、秋山さんの通訳が何処まで正確かにもよるかと思いますが一言で言うなら曲者でしょうね」


「やはりそうなるか、八神お前は?」


「正直言うと俺は相手を見極めたりするのは苦手ですが俺はあいつは信用は出来るが信頼は出来ないタイプかと」


「俺と同じ感想か」


「天川1等陸尉もですか」


「ああ、事前に秋山さんから聞いてた居たが此処は王政のある世界だ。 となれば貴族階級は常に権力闘争、陰謀術中を張り巡らしてるのは物語でも定番だ。 油断すれば敵性貴族に付け込まれ蹴り落とされる、そんな世界を生き抜いてる彼が早々腹の内を見せるとは思えん」


「言われて見ればそうですなぁ」


「ですが茶葉の件に関しては本心からだと思いますが」


「まぁ、それはな。 だがそれ以外では油断ならん相手だろう」


 俺がそう言うと他の3人も苦笑いを漏らした。


「尤もライブ配信した陸将補がどう思うか、次第でもあるんだろうが出来れば彼等と友好関係を築いて裂け目の情報を得たいな」


「全くです。 それはそうと秋山さんが彼から得た知識を纏めて皆にフィードバックする事も進めなければいけませんね」


「ただでさえこの拠点では彼女の負担が大きいのに更に負担を掛けるのも心苦しいですね」


「この拠点で一番の農業経験者で裂け目防衛最古参ですからねぇ…」


「…………」

 

 3人の言いたい事も十分に理解してるが故に俺も何も言えなかった。


「取り合えず明日から秋山陸曹長は農作業から外そう。 大分他の隊員達も農作業を任せられる様に成って来たんだ。 それよりも明日以降は彼らの通訳にこの世界の知識を纏めて貰う方が重要度が高い」


「了解です。 ではその様に」


「所であの人は如何します?」


「…定期便まで懲罰房に入れて置け。 陸将補からも許可は貰ってる」


「分かりました」


 俺の言った事に他の3人も苦笑交じりで敬礼してから部屋を出て行った。 それを見送ってから自室に戻り今日の報告書を仕上げる為に机に向かった。


誤字脱字がありましたらお気軽にご連絡ください。

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