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 第38話 やはりそうなの

 重苦しい空気に包まれた応接間は誰一人動かず時間だけだが過ぎて行った。 そんな中私は意を決して口を開いた。


「エリアルノーラ王女殿下、日本国に助力を求めますか?」


「…え?」


 私の問い掛けにノーラは驚いたのか、私を見つめて来た。


「私達の世界には国際平和維持活動協力法、通称PKO法と言うのがあります。 これは通常であれば戦争終結後に戦禍となった地域の復興支援や両方の当事者の間に立って停戦や軍の撤退を監視することで再び戦闘行為が発生することを防ぎ、対話を通じた戦闘行為の解決が平和に着実に実行されていくことを支援する活動です。


 ただ、この法で私達自衛隊がPKO活動を行うには当事国同士が必ず停戦に合意していなければなりません。 それとは別に国際緊急援助隊法と言う物もあります。 今回の場合だと此方が該当すると思われます。


 ただし、これは悪までも私達の世界の国同士で結ばれた法であるので日本国議会がどの様に判断するのか私からは申し上げる事は出来ません。 現状出来るとすれば精々良い所で小型機を使った長距離偵察でしょうか。 


 長距離偵察であればクリフトニア王国の国土把握と言う名目で現場判断で行える可能性があるかと。 ですが、期待は禁物です。 それで如何いたしますか?」


 ノーラは私からの告げられた事を徐々に理解したのか驚愕の表情となり俯いた。 良く見るとノーラの肩が微かに震えているのが見て取れた。 やがて顔を上げたノーラの表情はその決意が見て取れた。 その際目元に涙が溜まっていたのは見なかった事にした。


「日本国自衛隊、レーコ嬢にお願いします。 貴方の言う所の長距離偵察をエリアルノーラ・フォン・クリフトニアの名に置いて要望します。 お願いできますか」


「分かりました。 ですが、過度な期待は禁物です。 最悪王女殿下の要望は却下される可能性がある事はご理解下さい」


「分かりました」


 ノーラの返事を聞いて私は頷きザガットさんを見た。


「ザガットさん、私の部下3人を呼んで下さい。 その際に通信機も一緒に、と伝えて下さい」


 ザガットさんはチラッと辺境伯を見て辺境伯が頷くと私に一礼して素早い動きで応接間から出て行った。 ザガットさんを見送ると私はすっかり冷めてしまったお茶を飲み喉を潤した。 正直私のした事は越権行為に当たる可能性が十二分以上にあり、何らかの形で処罰されるだろうなぁと密かに思った。


「レーコ、どうして…」


 ノーラの問い掛けに反応してノーラを見ると眉を下げ心配そうな表情で私を見つめて来ていた。


「…そうですね、あえて申し上げるならば、交渉相手国が戦禍に包まれれば私の任務が複雑化しそうだから、でしょうか」


「ふふっ そう言う事にしておきますね」


 私の答えを聞いたノーラは一瞬キョトンとした後笑いながら言った。 ノーラが笑った事で応接間の雰囲気が幾分か和らいだのを感じた。 その後ザガットさんが3人を連れて来たと告げて入室許可を求めると直ぐに辺境伯が許可を出した。


「お待たせしました。 レーコ嬢、お連れ様をお連れしました」


「ありがとう」


「3尉、通信機を持ってこいとは何かあったので?」


 部屋に入って来た3人は私を確認すると柳田が訊ねて来た。


「そうね… 場合と程度にもよるけど最悪クリフトニア王国の滅亡の危機、かしら」


「「「はぁ?!」」」


「と、言う訳だからファーストに緊急連絡、直ちに準備を」


「「「はっ」」」


 指示を出すと3人は直ぐに通信機をセットし始め3分後には全ての調整が完了した。


「3尉、どうぞ」


「ありがと」


 調整の完了した通信機を柳田が渡して来たのでお礼を言って受け取った。


「ランナー1、ランナー1、ファースト、応答願います」


 ザザッ


「ランナー1、ランナー1、ファースト、応答願います」


 ザザッ ザっ!


「此方ファースト、ランナー1、状況知らせ」


 ザッ


「此方ランナー1、エマージェンシー、エマージェンシー、至急天川1等陸尉に繋いで下さい」


 ザッ


「エマージェンシー了解、繋ぎます。 …どうぞ」


「此方ランナー1、エマージェンシー発生」


 ザッ


「天川だ、報告せよ」


 ザッ


「エリアルノーラ王女殿下と合流後の状況確認中に不測の事態が発覚。 至急長距離偵察の要有と判断しました」


 ザッ


「不測の事態を説明せよ」


 其処から私は先程までノーラ達と話して居た内容を伝えた。 そして考えられる最悪の事態、つまり王都陥落、クリフトニア王国の滅亡を伝えた。 その内容に柳田達も通信機の向こうの天川1等陸尉さえ息を呑むのが分かった。


「良いだろう、長距離偵察を行う。 だが、それは明朝だ。 それと現状それ以上の事は出来ない。 その事は王女殿下にもしっかりと伝えてくれ。 それと予定通り明日此方へ来るのか?」


 ザッ


「いえ、乗って来た馬車の車軸故障の修理により明後日の午後にファーストに到着予定となります」


「分かった、そっちはそれで調整しよう。 来られた際に偵察の事もお伝え出来る様にしておく。 他に何かあるか?」


「いえ、以上です」


「分かった。 通信終わり」


「了解」


 ザザッザー ブツッ


 報告を終えた私は大きく溜息を付いた。 


「3尉…」


「レーコ…」


「安心して、ノーラ。 長距離偵察は夜明けと共にしてくれる事になったわ」


 ノーラは私の答えを聞いて安堵の溜息を付き私達に向かって頭を下げて来た。


「ありがとう」


「お礼を言うのはまだ早いと思うわよ。 取り敢えず、ノーラ達と魔法師団の方々は明後日にファーストに来て貰うわ。 それは良いわね?」


「ええ、分かりました」


「それとアンドルフ辺境伯、お願いしたい事があります」


 何処が安堵しきっていた辺境伯に声を掛けると辺境伯は何かあると分かったのか非常が引き締まった。


「明後日、ファースト行く際に護衛の兵を出して貰う事は可能でしょうか」


「ふむ、勿論じゃ。 編成はどうするかね?」


「全員騎兵でお願いします」


「全騎兵じゃと?」


「はい、これは悪までも最悪の事態を考慮した場合、全員騎兵の方が安全です」


「もしや襲撃があると言うんか」


「可能性が低くとも僅かにでも可能性があるのならそれに備えるに越した事はありません。 勿論自衛隊からも護衛は出ますが合流するまでの僅かな時間で襲撃を受けた場合、現状の兵力に不安を感じましたので」


「確かに姫様の身を案じればそうじゃな。 分かった、騎士5名と兵士15名、全員騎兵で用意しよう」


「恐れ入ります」


「礼を言われる様な事でも無いわい。 他に何かあるかの?」


「場合によっては護衛の兵にはそのままファーストに入って頂く必要が出る可能性もありますね。 ですので護衛の兵には替えの下着等も用意する様にお願いします」


「う、うむ。 分かった、その様に手配しよう」


「それと…」


「まだ何かあるのか?」


「ええ、此方も杞憂であれば良いのですが屋敷周辺の警備を普段よりも厚くしておいた方が良い気がして」


 私が言った事に私以外の人の視線が私に突き刺さった。 


「姫様が来られる事は分かって居った故、警備は普段より厚くしておるぞ」


「そうでしたか、申し訳ありません」


「待ってほしい辺境伯。 レーコ嬢、どうしてその様な事を言ったのです? 何か理由でも」


 私と辺境伯の会話が終わり掛けた所でアンドリュー殿が割って入って来た。


「明確な理由は無いのですが、ただ…」


「ただ、どうしたのです?」


「その、魔法が使える様になってからこう何と言うか感が鋭くなった、と言うか。 危険があるとぞわぞわすると言うか、兎に角そんな感覚がありまして」


「「ふむ」」


 私の答えを聞いた辺境伯とアンドリュー殿が揃って首を傾げ、互いに顔を見合わせた。


「これはアレかの?」


「そうかも知れませんね」


「ザガット、警備兵長に今夜から更に警備の兵を増やすよう至急伝えよ」


「畏まりました」


 辺境伯の指示を受けザガットさんは又もや素早い動きで部屋から出て行った。 私はその光景に驚いて辺境伯とアンドリュー殿をマジマジと見つめてしまった。


「レーコ嬢、魔法が使える様になった者の中には妙に感が鋭くなる者が出て来るんじゃ。 しかもそれは女性の方が多い傾向が今までの統計で分かって居る」


「ですので今回のレーコ嬢が感じてる感覚は信じても良いと判断した訳です」


「そうなんですね。 それとは別の可能性についてもお話したいのですが良いでしょうか」


「ほう、まだ何かあるのかねレーコ嬢」


「はい。 これは諸々の事も含めてなのですが今此処に王女殿下が居る件についてです」


「聞こう」


「え?」


「もしかしたらブレンハワード陛下は私達自衛隊に王女殿下を預ける事により、クリフトニア王族の正当な血筋を残そうされてる可能性です」


「やはりレーコ嬢もその可能性に思いいたったか。 と、言っても儂はその可能性は先程思いいたったのじゃがの」


「レーコ、アンドルフ辺境伯、どういう事ですか」


「陛下はうてる限りの手を講じておられる、と言う事です」


「そして姫様を大事になされてる。 が、もしそうだとしたら姫様に過酷な道を示されておるのう」


「っ」


 私達の答えを聞いてノーラが息を呑むのがはっきりと分かった。 


「尤も今は全て想像の域を出ないのも確かじゃし其処まで思い悩む必要もなかろう」


「そう…ですわね」


 辺境伯がノーラを剥げます言葉をかけ、深呼吸をしてノーラがややぎこちない笑顔を浮かべ返事をした時俄かに外が騒がしくなった。 その時私は無意識に拳銃を取りだし外に向けて発砲するとぐぐもった悲鳴と共に窓の外で人影が倒れるのが見えた。


「総員戦闘態勢、防御を固めろ!」


 私の掛け声で辺境伯が壁に賭けられてる剣を取り、アンドリュー殿とライラ殿が剣の抜きノーラの側へ。 ザガットさんとノーラの専属侍女も辺境伯が投げ渡した剣を受け取りノーラを守る様に円陣を組んだ。 私達4人もそれぞれ拳銃を抜き円陣に加わり周囲を警戒した。

誤字脱字がありましたらお気軽にご連絡ください。

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