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 第36話 さぁお話しましょう 2

 盛大な溜息をついたノーラは私達を一度見てからゴーマンを見据えた。


「此度の貴方方、魔法師団の任務の表層だけを見ればその様に取る事になるでしょう。 尤も貴方の先程の物言いは当事者の方が目の前に居る事を考慮しても余りにも一方的な物言いですが」


 其処で言葉を区切ったノーラは椅子から立ち上がり私達に膝を折り頭を下げた。


「日本国の使者として来られました方々に対して我が国の者の不遜な物言い、申し訳ございません。 クリフトニア王国国王に変わり私、エリアルノーラ・フォン・クリフトニアが謝罪致します」


「「っな?!」」


 ノーラが私達に向け王族、国として日本国に謝罪した。 その事に魔法師団の2人は驚きの声を上げたが部屋に居たそれ以外の人達はノーラに続き私達に頭を下げた。 その事に益々2人は驚きの表情を濃くした。


「殿下、及び皆様からの謝罪をお受けいたします。 此処での事は私の胸に秘める事とし、本国には報告しないとお約束いたします」


「寛大なご配慮、痛み入ります。 ハザマ副将軍閣下にはよしなに」


「ええ、分かりました。 さぁ、それよりもこれからの予定について話を続けましょう。 互いの国の為に」


「ええ、そうしましょう。 皆も席へ」


 ノーラの言葉でそれまで頭を下げていた他の面々はそれまで座っていた椅子へ座り直した。 魔法師団の2人は目の前の出来事に驚き未だに動けずに居た。


「なにを呆けているのじゃ2人とも。 お主ら魔法師団の今後の予定じゃぞ、しっかりせんか!」


 辺境伯からの叱責を受けて2人は正気を取り戻したのかハッとした表情を見せた。 そして当然そうなると…


「殿下‼ 今のはどう言う事ですか?! 何故貴方様が頭をさげ謝罪を⁉」


 ゴーマンからの疑問をぶつけられたノーラはそんなゴーマンをチラッと見ただけで視線をあわせず言い放った。


「部下の非礼を詫びるのは当然の事。 その様な事も分からぬのですか?」


「ひ、非礼?!」


「分からぬですか? 貴方の先程の日本国の方々への物言いを非礼と言わず何と言うのです? 此度のお前達、王宮魔法師団への任務の件、王城でされた此度の経緯、ゴーマン、貴方は何も聞いて居なかったのですか?」


 其処まで言うとノーラはゴーマンを睨みつけた。


「何を… それは其処に居る連中が不敬にも我が国に無断で侵攻しあまつさえ砦を築き、我が国の貴族連合軍を打ち負かしたが故に我ら王宮魔法師団が出張り、こ奴らを…ぐほっべ」


 椅子から立ち上がりゴーマンは己の意見を言っていたが隣に座っていたクレイスト殿がゴーマンを殴り飛ばした。


「貴方はもう口を開くな‼ 殿下の言う通り貴方は一体何を聞いていた! 貴方の言う事は何一つ真実を、いやそれよりも殿下、申し訳ございません。 ゴーマンの責は私にあります、部下を御し切れず恥じるばかりでございます」


「クレイスト‼ 平民上がりの分際で伯爵家の人間に手を上げ、ただで済むと思って居るのか‼」


「普通ならただではすまんだろう、だが王宮魔法師団では実力が全てのはず。 元の身分に囚われず、王国の魔法士の技量・技術向上を目指すのが我らの役目の筈だ。 そして今、貴方は私の部下で私は貴方の上司。 部下が間違えば正すのが上司の役割、其処に権力を持ちだすか‼」


「もう良い、クレイスト。 アンドリュー、ライラ、処罰を実行せよ」


「「はっ」」


 殴られたゴーマンが殴ったクレイスト殿に言い放った言葉を聞いてノーラが背もたれにもたれ掛かり後ろに控えていた護衛、近衛情報小隊の2人に指示を出した。


「なっ お待ちください、殿下?!」


「ど、え? グボベッ」


 ノーラの指示が聞こえたクレイスト殿がノーラに向き停止を求めたがその時にはアンドリュー殿にゴーマンは殴り飛ばされ、もう一人の近衛情報小隊の人に取り押さえられて手刀を叩きこまれ意識を飛ばした。


「アンドルフ、其方の所の独房を借りるぞ。 王都へ戻る時に身柄は引き受ける故、それまでこ奴を世話してやってくれ」


「畏まりました、殿下。 ザガット、警備兵長を呼びこの者を極房へ入れるよう伝えよ」


「畏まりました」


 辺境伯からの指示を受けザガットさんは私達に一礼して部屋を出て行った。 一方のゴーマンは何処から出したのかアンドリュー殿に縄で縛られつつあった。 って、ホントに何処から出したのその縄‼ 


 驚いてまじまじとアンドリュー殿を見てると私の視線に気づいたのかアンドリュー殿が私をチラッと見て微笑むと直ぐ真剣な顔になってゴーマンの拘束を完了させた。 それから暫くして部屋に入って来た兵士達にゴーマンは引き渡された。 其の頃になると既に日は完全に落ち、空には星が輝き完全に夜になっていた。 が、ゴーマンが連れて行かれた後そのまま話し合いは続けられる事となった。


 私達の前には入れ直されたお茶が配膳され、皆お茶を飲み気を落ち着かせた。


「さてレーコ嬢、マーク殿、アイン殿、トージ殿、改めて済まなかった。 そして感謝するわ」


「いいえ、お気になさらず。 このツケは国王陛下に返して貰いますので」


「そ、そうですか。 私が言える事では無いのだけどお手柔らかにお願いするわ」


 私が良い笑顔で言うとノーラは頬を引き攣らせながらそれだけ言うと再びお茶を飲みその味に癒されていた。


「それでクレイスト、貴方は此度の魔法師団の役目についてどの様に考えてるか聞かせて頂戴」


 癒されていたノーラは気を引き締めたのかクレイストに訊ねた。


「はっ これから述べるのは悪まで私個人の見解であると先に述べておきます。 之までの経緯を踏まえると事の発端は我が国の貴族が極秘で異なって居た禁忌魔法の研究。 その影響による物と思われる裂け目が出現。 そしてその裂け目が開いた場所がアナイアの森の奥地故に日本国の方々が軍を送り込まなければならなかった。 


 そしてこの地での活動拠点をアナイアの森の近くで廃棄された村を再生させた所でアンドルフ辺境伯様と接触、交流を開始。 その交流に王女殿下も参加された事を快く思わなかった一部貴族が暴走し戦闘行為に発展。 その際王女殿下は戦闘に発展しない様に色々動かれた様ですが暴走したその貴族により無下にされたと聞いております。 戦闘は貴族連合軍の敗北、そして予てより決まっていた裂け目調査の為今此処に我々が来ている。


 以上の事を踏まえ日本国の方々は圧倒的な軍事力を有し、アナイアの森の奥地から森を踏破する実力をも有する強国と判断します。 またその目的はこの世界と繋がった裂け目を閉じる事と聞き及んで居ります。 我々はその方法を探る為、また裂け目を閉じる為の手助けをする為の此度調査派遣と思っております。


 それとは別に我々王宮魔法師団は裂け目の調査を行いつつ日本国の方々と交流し、日本国の持つ様々な文化、技術を少しでも学びその知識をクリフトニア王国の発展の為生かすのが真の役目であり使命と愚行します」


 クレイスト殿の意見を聞いたノーラは満足そうに頷いた。


「さすがクレイスト殿、王宮魔法師団でも優秀と言われるだけあるわね。 概ねその通りよ。 でも残念ね、その事に思い至ってる魔法師団の人は何人居るのかしら」


「恐らくは私を含め4人、居れば多い方かと」


「そう、残りの魔法師団の方は?」


「ゴーマンと似たり寄ったりの考えかと」


「それは元貴族出身の魔法師団員かしら?」


「…」


「この場で言えないのなら後程時間を上げます。 紙に書いて提出しなさい」


「はっ」


「それと見込みがありそうな者達は貴方がしっかりと説き伏せなさい。 場合によっては王国の未来を左右するのだと」


「畏まりました」


 ノーラからの命令を受けクレイスト殿はしっかりと頷き答えた。 


「お待たせして申し訳ないわね、レーコ。 それじゃ今後の予定だけど日本国側としてはどの様な予定を想定してるのかお聞きしても?」


「分かりました。 その前に前提となる事を確認致しますが宜しいですか?」


「勿論よ、それで何かしら」


「はい、事前の連絡では王宮魔法師団の方々の調査期間は3週間と聞きしておりますが変更はありませんか?」


「ええ、その通りよ。 3週間で一度切り上げ王都に戻り報告。 追加調査が必要と判断されれば改めて双方予定を調整し追加調査になると思うわ」


「わかりました。 此方としてはファーストに到着して1週間はファーストにて過ごして頂き、我々に多少慣れて頂いた後にアナイアの森の奥、【裂け目】を有する場所へ案内。 残りの期間を調査に当てて頂きたいと思っております」


「ああ、成程。 確かにその方が良いわね。 特に移動手段には慣れる時間は必要でしょう」


「その通りです。 殿下もご希望されるのであれば【裂け目】までご案内しても構わない、と本国より通達されておりますが如何いたしますか?」


「まぁそうなの? であれば、答えは決まっています。 【裂け目】までの案内を希望しますわ」


「「殿下」」


 ノーラの返事を聞いて護衛のアンドリュー殿とアンドルフ辺境伯から諫める様に呼ばれたが肝心のノーラはどこ吹く風でお茶を口にした。


「ご安心ください。 殿下の身柄は日本国自衛隊の総力を挙げてお守り致します」


「ならば安心ね」


 私の言葉を聞いて嬉しそうに言うノーラを見た護衛2人と辺境伯は溜息を付いた。 


「と、言う訳でクレイスト殿。 我々日本側はこの様に予定を立てておりますがいかがでしょうか」


「そう…ですね。 私としても初めてお会いする国の方々に多少でも慣れてから現場に行けるのであれば嬉しく思います。 宜しくお願いします」


「此方こそよろしくお願いします」


 私とクレイスト殿は互いに軽く頭を下げ合った。


「さて、話が纏まった所で夕餉と致しましょう。 準備は既に整ってるそうじゃ。 皆でこのまま移動で宜しいですかな、殿下、レーコ嬢」


「そうね、私は構わないわ」


「私達も構いません」


「それではクレイスト殿は申し訳ないが当初の予定通りになるが構わないかね?」


「はい、それで結構でございます、辺境伯様」


「すまんの、では移動しましょうか」


 辺境伯の掛け声で私達はそれぞれ椅子から立ち上がり辺境伯を先頭にして応接間から移動を開始した。 クレイスト殿はこのまま辺境伯邸を後にし城下の宿に送られる事となった。

誤字脱字がありましたらお気軽にご連絡ください。

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