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 第35話 さぁお話しましょう

 私達が案内されたのは何度も案内された応接間だった。 侍女さんは私達を連れて来た事を扉越しに伝えると中からアンドルフ辺境伯の許可が聞こえ侍女さんが扉を開け私達を中へ招き入れた。


 部屋の中にはアンドルフ辺境伯とエリアルノーラ王女殿下、王女殿下の専属侍女、王女殿下の護衛2人、そして初めて見る顔の男性2人、辺境伯の筆頭執事のザガットさんの8人が居り全員が椅子から立って私達を迎えてくれた。


「呼びたてて済まないね、レーコ嬢。 本当は夕餉の時に顔合わせを、と思って居ったのだが」


「いえ、お気になさらないでください、辺境伯様」


 辺境伯が実にすまなそうな表情をして私に謝意を見せつつもさり気なく視線は初めて見る男性の1人に向けられた事に私は気づいた。 その事に気付きつつも私はにこやかに答え軽く膝をおり辺境伯からの謝意を受け取った。


「それはそうと小粒だが見事なパールだね、良く似合っているよ」


「ありがとうございます。 軍属故、あまり装飾の類を身に着ける事が許されぬ身でありますがこの程度であれば許可があれば身に着ける事は可能ですので」


「そうじゃったか。 しかし見事な輝きのパールじゃな、小粒じゃがさぞかし値が張りそうじゃのう」


「いいえ辺境伯様、この程度であれば我が国では一市民でも購入出来る品でございます。 我が国は海に囲まれし海洋国家、海からの恵みもまた豊かに御座います」


「まぁレーコ、それは本当なの? パールと言えば百の貝から一つ取れれば当たりと言われるのよ。 採れたとしても大きさや形、輝きはバラバラ。 小粒とは言えレーコが身に着けてるそれは大きさも形も輝きさえ揃っているわ。 いくら恵みが豊かとは言え見事な品であるのは間違い無いわ」


「お久しぶりでございます、エリアルノーラ王女殿下。 ありがとうございます。 ですが、先程言った事に嘘は御座いません。 もし宜しければ本国に問い合わせて殿下へ友好の証として手配してみましょう」


「それは嬉しい申し出だけど、辞退させて貰うわ。 この流れでお願いすれば私が日本にパールの装飾品を強請った事になりますからね。 今はレーコのその気持ちだけで十分よ」


「畏まりました、差し出がましい申し出申し訳ございません」


「構わないわ、私とレーコの仲ですもの。 これぐらいでとやかく言うつもりも無いわ」


「殿下のご配慮、心より感謝いたします」


「殿下、宜しいですかな?」


「えぇ、話に割り込んで不作法でしたわね、アンドルフ」


 辺境伯がわざとらしく咳ばらいをしてノーラに確認するとノーラは辺境伯に頷いて話の主導権を辺境伯に返した。 そのタイミングでさり気なく視線だけで初見の男性2人を軽く伺うと2人の反応は全く異なって居た。 薄い茶髪の30代後半と思しき男性は非常に驚いた顔を。 もう一人のくすんだ金髪の20代半ばと思しき男性は忌々しそうな顔をしていた。


「さてレーコ嬢に紹介しよう、此方の2人が今回レーコ嬢達が言う【裂け目】を調査する為に来られた王宮魔法師団の方達じゃ。 レーコ嬢から見て右の者が代表のクレイスト殿、その隣がゴーマン殿じゃ。 クレイスト殿、ゴーマン殿、此方が此度の陛下から命じられた調査案件の【裂け目】を有する日本国からの使者、レーコ嬢とアイン殿、マーク殿、トージ殿となる」


 辺境伯に紹介され名を呼ばれた時私は2人に向け軽くカーテシーの真似事を、後ろの3人はクリフトニア王国貴族風に胸右手を添え軽く頭を下げた。


 茶髪の30代の男性がクレイスト殿でくすんだ金髪の男性がゴーマン殿と。 さて、名前と顔を確認は出来た。 後は辺境伯からの情報通りなら警戒すべきはゴーマン殿、気合いを入れましょうか。


「お初にお目に掛かります、日本国の方々。 私は今回の調査団の代表を務めるクレイストと申します、以後お見知りおきを。 隣に居ますのが副代表となるゴーマンとなります」


「調査団副代表のゴーマン・レッバリーと申します。 以後お見知りおきを」


 2人も鈴原達がしたように右手を胸に当て軽く頭を下げた。 が、2人からの視線は全く異なって居た。 クレイスト氏からは期待が篭った視線であったがゴーマン氏からは私達警戒、或いは値踏みする様な視線を感じた。


「さて互いに紹介も終わった所で座って話そうかの。 皆に茶を頼む」


 辺境伯から着席の許しを得て私達はそれぞれ席に座ると控えていた侍女さんが素早くお茶を配膳してくれた。 カップに注がれたお茶の匂いで以前私が辺境伯へと送った物だと分かった。


「うむ、やはりこのお茶は上手いのぅ。 レーコ嬢よ、改めて礼を言うぞ」


「お気に召して頂けて私も嬉しく思います」


「ほんとに美味しいわ、このお茶一つとって見ても日本国が如何に豊かで栄えているのか良く分かるわ」


「殿下にその様に言って頂け心より嬉しく思います」


「フンッ、お茶一つで大げさな」


 私達、いや私がノーラと普通? 普通に会話をしてるのが気に入らなかったのかゴーマンがわざと聞けるぐらいの小声で突っかかって来た。


「お、おい、ゴーマン良さ無いか」


「……」


 すかさずクレイスト氏がゴーマン氏、もうただのゴーマンで良い。 ゴーマンは何も言わずただお茶を口に運んだ。 


「どうやらゴーマン殿には我が国の茶はお気に召されない様ですのであの方に別のお茶をお願いできますか? アンドルフ辺境伯様」


「うむ、良かろう。 おい」


 私が辺境伯にお願いすると若干額に青筋を浮かべながらも笑顔で私からのお願いを受けて侍女さんに一言声を掛けると侍女さんは一切の迷い無くゴーマンに出されてたカップを下げると別のカップを用意し別のお茶を差し出した。


 ゴーマンはその事に小さく舌打ちをしたがそれ以上何も言わず新たに出されたお茶を一口飲んだ瞬間顔を顰めた。 その表情を見てさり気なくお茶を入れ替えた侍女さんに視線を向けると非常に分かりにくいが僅かに微笑んでいた。 私はそれに気づいたがあえて見なかった事にした。


「さて、喉も潤した所で今後の予定を確認しようかの」


 アンドルフ辺境伯もゴーマンが新たに出されたお茶を飲み顔を顰めた事に気付いているだろうがお構いなしに話を切り出した。


「そうね、それでだけど少し予定変更を考えているわ」


「殿下のお考えをお聞かせ願えますかな?」


「ええ、本来であればこのシュバッツェへ到着し一泊して翌日にレーコ達が拠点としてるファーストの村… 砦に向かう予定でしたが」


 ノーラは其処まで言ってチラッと私に視線を向けて来た。


「魔法師団の馬車の車軸が折れた為その修理に明日一日貰い、明後日にファーストへ向かいたいのだけど日本国側は問題無いかしら」


「日程についてはある程度余裕を持って組んでいますので此方は問題ありません。 この後すぐにでもファーストへ連絡し調整を行いましょう」


「そう、流石ですわね。 クレイスト殿、そう言う訳だから残りの調査団の隊員は明日一日休養に当てなさい。 恐らくファーストに付いてからは驚きの連続でしょう。 しっかり英気を養いなさい」


「はっ 畏まりました」


 ノーラの命を受けてクレイスト氏は椅子に座った状態での最敬礼をノーラに返した。 隣に座ってるゴーマンもそれに倣うがその表情には不満が見て取れた。


「ゴーマン、意見がるのならおっしゃいなさい」


 ノーラもゴーマンの表情を見て圧を強めてゴーマンに訊ねた。


「恐れながら申し上げます。 殿下は先程驚きの連続とおっしゃいましたがクリフトニア王国でも優秀な王宮魔法師団の我々がその様な事態になるとは到底思えません」


 ゴーマンはそう言うと鋭い視線を私達に向けて来た。


「確かに王宮魔法師団の方々は優秀でしょう。 ですが、その事に胡坐をかいてると足元を容易く掬われますよ。 現に先の貴族連合軍約2000は

200人にも満たない彼らに敗北したのです。 しかも彼ら日本国の兵士が手加減した状態で、です。 その事実を貴方はもう少し真剣に受け止めるべきでしょう」


「そうは申されますが殿下、聞けば貴族連合軍に魔法士は従軍して居なかったと聞きます。 魔法士が居れば違った結果になったのでは?」


「あら、貴族連合軍にも魔法士は居ましたよ。 それでもその結果です」


「き、貴族連合軍に所属する魔法士と我々を一緒にしないで頂きたい」


「ですが貴族連合軍に従軍していた魔法士も我がアルモニア王国の魔法士学園を出た者達。 その実力は本物です。 それ以上言うのであれば貴方は貴方自身でクリフトニア王国の魔法士が無能だと言うのも同義、強いてはそれは王家が無能だと言う事ですよ。 その場合貴方を不敬罪で処罰せねばなりませんね」


「それは余りに極論過ぎませんか、殿下」


「いいえ、その様な事はありません。 どうやらゴーマン、貴方は此度の件の魔法師団としての自覚が足りないと見えますね。 明後日の出立までにその自覚無しと私が判断した場合シュバッツェへ残って貰います」


「…どういう事でしょうか、殿下。 私がまるで今回の任務に就いて何も理解してない、そう言ってる様に聞こえるのですが」


「では言って見なさい、此度の魔法師団の役目を、貴方方に課せられた使命を」


 ノーラはそう言ってゴーマンを見つめた。 見つめられたゴーマンは一瞬ノーラに見つめられたじろいだ様子を見せたが咳ばらいをしてノーラを見つめ返した。


「此度の任務は其処に居る日本国なる国の軍がクリフトニア王国の領土に侵入する切っ掛けとなったと言い張る【裂け目】を我ら魔法師団が調査し【裂け目】を閉じる事で日本国の軍を我がアルモニア王国から追い返す、それが此度の我らの役目であり使命であると思っております」


 ゴードンは自信満々にノーラに答えたがその答えを聞いてノーラは盛大に溜息を付いた。

誤字脱字がありましたらお気軽にご連絡ください。

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