表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/51

 第34話 さぁ気合を入れましょう

 どうやら私はソファーで寛いでる間に寝てしまったらしく呼びに来た侍女さんに起こされた。 起きた時にこの世界の時間帯に合わせた腕時計を確認すると午後3時半を回った所だった。


「すいません、ありがとうございます。 それでどうかされましたか?」


「はい、王女殿下から早馬が到着しまして…」


「早馬、ですか?」


「はい。 恐らく今旦那様がお話を聞いているかと思われます。 旦那様が早馬が来たと聞いて皆様に集まって貰う様指示を頂きお呼びに参った次第でございます」


「分かりました。 案内をお願いします。 それで後の3人は?」


「別の者が呼びに行っております」


「では、案内をお願いします」


「畏まりました。 では案内いたします」


 それから私は侍女さんに案内され一度だけ入った事のある別の応接間へと案内された。 部屋に入ると既に鈴原達も居り部屋に入った私に気付き軽く頭を下げて来た。 それに気付いて軽く頷いて返答してる間に案内された椅子へと腰を下ろした。 私が椅子に座ったタイミングで部屋に居た侍女さんがお茶を入れ私達に配膳してくれた。


「恐れ入りますがこちらでもう暫くお待ち下さい」


「分かりました」


 私が返事をすると侍女さんは呼び出し用の鈴を置くと部屋から出て行った。


「秋山3尉、どう思いますか」


 侍女が扉を閉めて少し様子を伺ってから柳田が訊ねて来た。


「何かしらのトラブルが起きた、と思う。 ただ予定通りなら相当街の近くまで来てるだろうから盗賊とかでは無いと思うわ」


「と、なると考えられるのは馬車の故障… ぐらいでしょうか」


「まぁそんな所じゃないかしら。 早馬からの報告を聞いて対処したら教えてくれるでしょ。 出なければわざわざ私達を集めたりはしないでしょうし」


「それもそうですね」


 それから私達は出されたお茶を楽しみつつ10分程他愛も無い話をしてまった。 するとノック音と共に侍女さんが伯爵が来たと言い入室して良いか確認して来たので問題無いと告げると少しだけ間が空き扉が開き伯爵が入って来た。


「すまないね、ゆっくり寛いで居た所を呼び出して」


「いえ、お気になさらず。 それでノーラから早馬が来たと聞きましたが」


「ああ、何でも街まで後少し、と言う場所で魔法師団が乗ってた馬車の車軸が折れたらしい。 一様御者が修理をして見るが到着が遅れる事は確実だからその旨を知らせに行くよう指示された、との事だ」


「そうでしたか」


「まぁ話を聞いて修理工を乗せた迎えの馬車を手配はした。 それに殿下も修理に時間が掛かりそうであれば先にシュバッツェ入りも視野に入れているとおっしゃっていたらしい。 案外既に此方に向かって来てるやもしれん」


「あ~、ノーラならそうかも知れませんね」


 私は頬をかきながら言うと辺境伯も微笑みながら頷いた。


「そう言えば、今回来る魔法師団の人達はどんな方々が来られるのかご存じですか?」


「ん? あ~そうじゃな、名簿を見る限り此度来る調査団の代表は真面目で部下に慕われて居る良い奴じゃ。 平民から魔法師団入りを果たし、常に努力を忘れん好感を持てる者じゃよ」


「それは凄いですね。 私はてっきり貴族出身の方が代表を務めてるのかと思っていました」


 私がそう言うと辺境伯の顔が微妙な物になったのを見逃さなかった。


「貴族出身の方も居るのですね」


 私が訊ねると辺境伯は溜息を付いて頷いた。


「居るの、儂が気にしてるのは副代表に記されて居った者じゃ」


「どの様な方か聞いても?」


「まぁ隠してもこの後、遅くとも明日には合わねばならんか。 そ奴は伯爵家の3男で3属性も適性があるんじゃが実力はレベル2じゃ。 しかも貴族階級、それも上位貴族故に特権階級思考が強くてのぅ。 それが原因で何度か平民の魔法師団員と揉め事を起こしたと聞く。 恐らくじゃが今回の人事にも不満を抱えておるじゃろう」


 話を聞いて私は頭を抱えたくなった。 柳田達を視線だけ動かして見たが3人も微妙な表情をしているのが見て取れた。 それでも、と思い辺境伯に確認して見た。


「以前聞いたお話ですと、魔法師団に入ったら元々の身分に囚われない果然な実力主義で聞いた覚えがあるのですが」


「うむ、その通りじゃ。 とは言え、実際は貴族と平民の隊員の間に確執はあるのも曲げようも無い事実なのじゃよ。 陛下もその事を問題視はして居るが中々難しい事もこれまた事実でのぅ」


 辺境伯はそう言うと今度こそはっきりと分かるほどの溜息を付いた。


 "いや、溜息を付きたいのはこっちですよ"


 と喉から出かけた言葉を何とか飲み込み私は何とか表情を取り繕った。


「一応その副代表の方の名前をお聞きしてもよろしいですか?」


「ああ、別に構わん。 そ奴はゴーマン・レッバリー。 さっきも言ったが伯爵家の3男じゃ」


 名前を聞いた瞬間私は吹き出しそうになった。 それを何とか堪えると同時にある諺を思い出していた。 表情に出さない様に努力しつつ更に訊ねてみた。


「その方と話す場合、助言等ありますでしょうか」


「儂もそ奴と直接会話した事が無い故確実な事は言えんのじゃが、あえて言うのであれば上位貴族にする様な対応をすれば良いかも知れん。 じゃが、其方らは言うなれば国の国賓じゃ。 其処まで気にする必要も無かろう。 ゴーマンめが問題に発展する様な発言をしたなば護衛の者に言えば良いじゃろう。 何せ護衛は近衛情報小隊が極秘に勤めておるからの」


 それを聞いて今度こそ私は額を抑えるのを堪える事が出来なかった。 クリフトニア国王が私達を徹底的に利用しようとしている、と思ったからだ。 恐らく今回の人事も意図的な物だろう。 で、件のゴーマン氏が問題を起こせば国王は魔法師団に責任を負わせるために喜々としてメスを入れる気だろう。 でなければこんな人事編成は普通は行わない。


 もし、私が国王陛下にお会いする機会に恵まれたならば一発殴らせてもらえないかしら、等と物騒な考えが頭をよぎったが何とかその考えを振り払って落ち着く為にまだ残ってたお茶を飲んで落ち着こうとした。 丁度私がお茶を口に含んだ瞬間部屋の扉がノックされ入室許可を求めて来た。


 辺境伯が許可を出すと入って来たのはザガットさんだった。 ザガットさんは私達に軽く頭を下げた後足早に辺境伯に何事かを耳打ちすると辺境伯は頷いた。


「直ぐに支度せよ。 儂も直ぐ向かう」


「畏まりました」


 短いやり取りを終えたザガットさんは再び私達に軽く下げた後足早に部屋から退出して行ったのを見送り辺境伯を見つめた。


「伝令からじゃ、殿下がシュバッツェへ到着したとな。 それと魔法師団の代表と副代表もご一緒らしい。 それ以外はまだ着いておらん、との事じゃ。 予想通り一足先に移動して来たみたいじゃの。 そう言う訳で準備をする為これで失礼させて貰う。 そうそう、レーコ嬢達も何時呼ぶとも分からん故、持って来たと言う礼服に着替えをお願いする」


「分かりました。 着替えた後は客間にて待機しておきます」


「済まぬが宜しく頼む」


 辺境伯はそう言うと部屋にずっと待機していた侍女に私達を客間に案内する様に指示を出し部屋から出て行った。 私達も侍女さんの案内で客間に戻ると持って来た荷物から3装を出し手早く身支度を済ませた。 が、ふと真田准尉に渡されていた小箱を思い出し、小箱を取り出し開けると小さいメモと共に小粒の真珠が付いたイヤリングが入っていた。 メモには


 "魔法師団の中に貴族が居た場合に付けるように"


 と書いてあったので私はああ、成程。 と思い姿見で確認しつつ真珠のイヤリングを付け気合を入れたが呼ばれる事も無く時間だけが過ぎて行った。 よくよく考えば分かる事だったがシュバッツェの外門からこの屋敷までは馬車で真っすぐ来た場合でも道が入り組んでる為20分以上はかかる。 更に今は夕方の人通りが増える時間帯と言う事も考えれば時間はもっと掛かるだろう。 其の上辺境伯への挨拶をし多少の雑談も行う可能性も考えれば更に呼ばれるまでの時間はかかるかも知れなかった。


 私は気持ちを落ち着かせる為鈴を鳴らして来た侍女さんにお茶を頼んだ。 暫くしてお茶を持って来てくれた侍女さんから先程ノーラと魔法師団の代表達は到着して挨拶してる所との事でもう少ししたら呼ばれる可能性がある事を聞いた。 私はその事にお礼を伝え入れてくれたお茶を飲んで一息入れた。 


 それから暫くしてノック音と共に辺境伯が呼んでる事を伝えられると私は今度こそと気合を入れ直しソファーから立ち上がって部屋を出た。

誤字脱字がありましたらお気軽にご連絡ください。

感想、コメントもお気軽にお願いします。

また続きが気になる、読んでて面白い、等少しでも思って頂けたら下の☆☆☆☆☆マーク評価宜しくお願いします。 書き続けるモチベーションになります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ