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 第33話 新たな局面にむけて

 貴族連合軍との戦闘から3日は後処理(主に書類関係)に追われた後、戦に参加したファーストの全隊員は半数づつ1週間の特別休暇を貰い日本へと帰還し休暇を満喫した。 


 日本国内では未だに私達の戦闘行為について賛否両論でテレビやネットで騒がれているが概ね容認派が優勢であった。 ただ報道クルー達は案の定批判が殺到しており自衛隊の警務科から護衛が付く事になったらしい。


 そんな中私は久しぶりに実家に帰省して休暇を満喫して再びファーストに戻って来た。 一週間ぶりの部隊の皆も休暇を満喫したのか皆精神的にも元通りになって居る様に見えたがやはり一部隊員はPDSEにより治療が必要と判断され配置転換が行われていた。


 私が休暇を終えてファーストへ戻るとノーラ達が3日後に宮廷魔法師団を連れてシュバッツェへと到着、翌日にファーストへと来る予定になってると連絡事項で回って来た。 それと私が戻る3日前に畑の収穫可能な物は収穫されたと聞いた。 更にこの世界で栽培された初物の為、収穫された物は全て検査の為研究所行きとなったと聞いて私は少し不貞腐れた。


 その日の夕方、天川1等陸尉に呼ばれ私は指令室に出頭した。


「ご苦労、秋山3等陸尉。 帰還後直ぐで申し訳ないが3日後の早朝に部下を連れてシュバッツェへ行って貰いたい。 理由は分かるか?」


「はっ エリアルノーラ王女殿下及び王都から来られた宮廷魔法士達の出迎え、であると考えます」


「その通りだ。 今回は最初ハンターの恰好でシュバッツェ入りして貰い辺境伯邸で着替えて出迎えて貰う手筈になっている。 そのつもりで準備する様に」


「はっ 一つ確認があります」


「言って見ろ」


「服装を着替えるとおっしゃいましたがどの服装でしょうか?」


「通常第3装で大丈夫だ。 そう警戒しなくても良い、部下にも伝えてくれ」


「了解しました」


「以上だ。 準備を怠らない様に」


「はっ」


 敬礼をして指令室から退出後、私はその足で部下の3人に連絡する為彼らが寝泊まりしてる家に赴き先程の事を伝え準備する様に指示を出し半ば自宅と感じてる自分が寝泊まりしてる家へと戻り床に就いた。


 翌朝からは戦前の通常常務と訓練を行いつつシュバッツェへ行く準備を整えて3日目の早朝、ファーストを出発して昼前にはシュバッツェへと到着した。


 辺境伯邸に行く前にハンターギルドに顔を出し、最近の情報を仕入れ得に大きな問題が無いのを確認した。 するとギルド長が2階から降りて来て私を見つけると直ぐに私達の所までやって来た。


「久しぶりだね、先日の戦騒ぎ前から考えると約一月ぶりぐらいかな? 元気そうで良かったよ」


「そうですね、大体それぐらいかしら」


「いやぁ、君達がアナイアの森の素材を持って来てくれなくなったから結構心配したよ」


「あら、素材を持ち込むのは私達以外にも居るんじゃないの?」


「居るには居るが… 素材の状態が段違いでね。 君達の持って来る素材、特に毛皮は最高級品なんだ。 之からも宜しく頼むよ」


「そう言う事なら頑張るしかないわね。 でも当分は先日の戦のせいでゴタゴタがまだ続きそうだから納品は暫く先になりそうよ」


「そうかぁ… まぁ無事に顔を見せてくれた、と言う事で今は満足しておくとするよ」


「今は…なのね」


「おっと、それじゃ俺は之で仕事に戻るよ。 君達も体には気を付けてくれ」


 私が突っ込むとギルド長は如何にもな様子で手を振りながら事務所的な場所へと入って行った。 ギルドを後にして内門の所で衛兵に通行手形を見せて内門をくぐり、私達は辺境伯邸へと歩いていると後方から馬の駆ける音が聞こえて来たので私達は道の隅へと避けた。


 私達を追い越した騎兵は旅装束だったのでもしかして、と思い3人を急かして辺境伯邸へと向かった。 到着した辺境伯邸には私が予想した通り先程の騎兵のモノと思われる馬が従者により裏の方へ引かれて行ってる所だった。


 門兵に手形を見せ辺境伯に取次ぎをお願いすると1分ほどで顔なじみとなった執事の1人が出迎えに来ていつもお世話になってる部屋に案内された。


 「主様は現在接客中の為、用意が整いましたらお声をかけさせていただきます。 それまでお寛ぎ下さい」


「ありがとうございます。 お言葉に甘えてそうさせて頂きます」


「はい、それでは失礼致します」


 執事さんは頭を下げて部屋を出て行った。 私は荷物を降ろすと部屋備え付けの椅子に座りのんびりと過ごしてると30分程して侍女さんが呼びに来た。 侍女さんの案内で今までも何度か入った事のある応接間に案内された。 侍女さんが入室の確認を取ると中からの返事があり私達を中へ入れてくれた。


「おお、久しぶりですなレーコ嬢。 それにお仲間の皆さんも。 元気そうで何より」


「お久しぶりです、アンドルフ辺境伯様。 辺境伯様もお変わりなくご壮健でいらっしゃるご様子に安堵致しました」


「はははっ 硬いぞ、レーコ嬢。 いつもの様にもっとフランクな感じで構わんよ」


「ありがとうございます。 ではお言葉に甘えまして。 それと、遅くなりって申し訳ないのですが昨日の戦の折、色々とご助力頂き本当にありがとうございました」


 私はそう言って深々と頭を下げると後ろに居た3人も頭を下げる気配を感じた。


「良い良い、気にするな。 実はアマクァワ殿からも礼の品と言葉も頂いておる。 レーコ嬢達も気にするな」


「そうですか、分かりました」


「さぁ立ち話もあれだ、座ってくれ」


「はい」


 アンドルフ辺境伯に促され私達がソファーに座ると侍女さんが素早く私達の前にお茶を配膳し部屋の隅へ控えた。 お茶と同時に出された茶菓子を見て私はオヤ? と思った。


「ほう、早速気づかれたか、レーコ嬢」


「このお菓子はもしかして」


「家の料理人が貴国のクッキー? と言う物を再現しんとして作った物だ。 是非とも食べて意見を聞いて欲しいと料理人に頼まれておる」


「そうですか、では早速」


 私は断りを入れてクッキーを一枚食べて見た。 味はまぁ普通かなと思ったが日本で食べなれた物に比べると妙にパサパサしておりお茶が無ければ口の中の水分を一枚で全部持って行かれそうだと感じた。


「どうかね?」


「はい、味は日本で食べる物に近いのですがパサつきが少々」


「うぅむ、やはりそうか。 儂も何度か試食したのだがレーコ嬢と同じくパサつきが気になって居る。 レーコ嬢、何か知恵は無いかね?」


「申し訳ありません、私はお菓子関係は少し…」


「そうか、済まぬな」


「いえ、此方もお力になれず」


 私と辺境伯が共に暗い雰囲気になった所で鈴原がおずおずと手を上げた。


「どうしたの、アイン」


「このクッキーのパサつきですが、バターはなんのバターでしょうか?」


「ん? バターは山羊のバターだが… もしやそれか?」


「その可能性があるかと。 日本では牛と呼ばれる動物の乳から作られたバターが一般的です。 後、使われてる小麦粉の違いによる可能性もあります」


「ふむ、成程の。 何か解決策は其方、思いつくか」


「簡単な物であればクッキーの生地を混ぜる時にほんの少しだけ冷ましたお湯かミルクを混ぜるのが宜しいかと。 後は試行錯誤するしか御座いません。 何せ此方と日本では食性は似ていても微妙な違いがありますので」


「それもそうか。 いや、助言感謝する。 おい」


 辺境伯は一言声を掛けると部屋に控えていた侍女さんが1人部屋から出て行った。


「さて、前置きが長くなったがそろそろ本題に入るとしよう。 実は先程王女殿下から先触れが到着してな、予定通り今日の夕方にシュバッツェへ到着するそうだ。 王女殿下はそのままこの館に来るが魔法師団とその護衛は街の宿へ泊る事になる。 まぁ代表の者が王女殿下と共に挨拶に来るそうだ」


「そうですか、分かりました。 では顔合わせもその時に?」


「いや、顔合わせは夕餉の時に行うとしよう。 王女殿下も代表の者も旅の埃を落としたいであろうからな」


「ああ、そうですね。 了解しました」


「所でレーコ嬢達はその恰好のままかの?」


「いえ、上官の指示で礼装を今回は持ってきております」


「うむ、要らぬ心配であったか。 それでは済まぬが儂も色々仕事がある故これで失礼させて貰おう。 レーコ嬢達は夕餉の時までゆっくり休まれよ」


「はい、お気遣いありがとうございます」


 アンドルフ辺境伯ソファーから立ち上がり軽く頭を下げると辺境伯は満足そうに頷くと颯爽と応接間から出て行った。 その後は侍女さんに案内され客室へと戻ると私は椅子に座ってまったりと過ごす事にした。

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