第31話 開戦、そして
私達4人が乗り込むと軽装甲車は門を出て口上交換を行う為に出て来たと思われる10人組の手前8mの所まで進んだ。 軽装甲車から降りる前に積まれていた双眼鏡で相手側を確認するとその表情は驚ろいているのが手に取る様に分かった。
「それじゃ皆、覚悟は良いわね。 行くよ」
「「「了解」」」
気合いを入れ直して私達4人は軽装甲車を降りて10人組に対峙する様に並んだ。 私達が出て来た事に気付いた向こうは多少動揺する気配を感じたが直ぐ4人が出て来て5m程の所まで来た。
「我はクリフトニア王国が貴族、ネイタール・アラカイル伯爵である。 恐れ多くも王国の土地に何の宣言も無く侵略し、あまつさえ村一つを不当に占領する不届き者に正義の鉄槌を下す者である。 これが最後の慈悲だ、直ちに武装を解除に降伏せよ!」
事前情報によれば貴族連合軍の首魁はコンラード侯爵だが口上交換を行う為に目の前に居るのはアラカイル伯爵と名乗った。 情報では侯爵の右腕的存在だったはずだが… そんな事を考えてると無線が入った。 私は無線の指示通りに返答をしていく。
「お初にお目に掛かります、アラカイル伯爵」
私は1人進み出てアラカイル伯爵の手前3m程の所でノーラに教えて貰ったカーテシーをした。
「私の名は日本国陸上自衛隊の尉官の玲子 秋山と申します。 以後、お見知りおきを。 先ず言わせて頂きます、貴方は先程村を不当に占領とおっしゃいましたが10年以上前に廃村となった場所を再整備しても不当な占領になるのでしょうか」
私の声はマイクを通しているのでかなりの広範囲に聞こえた様で伯爵とその後方の6人は当然とし更に後方の貴族連合軍まで届いた様だった。
「次にこの地域を治めるシュードルフ辺境伯からかの村に関しては一時的に領有を認める書簡を頂いており、辺境伯とエリアルノーラ王女殿下を通しクリフトニア国王へ我々の目的をお伝えしております。 その結果として近々王宮魔法師団の皆様がかの村へ訪れる手筈となっておりましたが貴方方の挙兵により延期となっております」
私が告げた内容に伯爵とその仲間達は分かりやすい程に動揺していた。
「更に言えば、私達日本国自衛隊はエリアルノーラ王女殿下を通じ貴方方貴族連合軍に対して戦闘の意思は無いと散々伝えて来ました。 が、そちらから返答は以下の通りです」
其処で私は事前に渡されていた書簡を朗読していった。 朗読した書簡は当然報道クルー達に説明したあの内容が記された書簡だ。 朗読を終えた瞬間伯爵が叫んだ。
「何だその内容は! 捏造では無いのか?!」
「いいえ、残念ながらこれが貴族連合軍総指揮官からの正式な返答の書簡です。 この書簡はエリアルノーラ王女殿下もご存じであり、我々としても到底受け入れがたい物である事はご理解して頂ける物と貴方様かの反応でお分かり頂けると思います」
「た、確かにその様な内容であれば受け入れられないのは想像に難くない、だが!」
「因みに! この内容にはエリアルノーラ王女殿下は大変お怒りを見せておいででした。 王国の顔に泥を塗ったとして」
伯爵が否定しようとした所で私はかぶせ気味に事実を伝えると伯爵達は分かりやすく蒼褪め始めた。
「以上の事実を知った上で尚、己が正義が貴方方にありかの村を責めると言うのであれば私達は生きる為に全力を持って抗いましょう。 但し! 私達日本国自衛隊は無用な殺生を望みません、その証拠に殺傷力皆無の武器でお相手致します。 が、当たり所が悪ければ死ぬ可能性もありますのでご覚悟を。 ああ、この書簡は此処に置いて行きます。 後はご自由にお持ちください」
私はそう言うと書簡を地面に置き、踵を返すと軽装甲車に向かって歩き始めたが直ぐに声が掛かった。
「ま、待つのだ、レーコ嬢とやら。 殺傷力皆無の武器とはどういう事だ!」
「言った通りの意味でございます。 私達が持つ武器は余りにも殺傷力が強すぎるのです。 それこそこのまま戦となれば一方的と言えるほどに」
「…それを信じろと?」
「では実演致しましょうか?」
「手の内を見せても良いのか?」
「上官からの許可は頂いております」
「では見せて頂こう」
伯爵の言葉を受けて私はすっと右手を上げた。 そして無線越しに準備完了の報告を受け右手を降ろすとファーストから4発の砲撃音が聞こえ、数秒後に貴族連合軍の陣地横左右100mの所に2発づつ榴弾が着弾、爆発が起こり砂塵が舞い上がった。 そして、防壁の足場に設置された機関銃1丁からの射撃が同地点に向けて断続的に30秒程続けられた。
「今のはあくまでも牽制、いざ戦となればあれらの武器が貴方方の頭上に降り注ぎ、其の身を打ち抜きます。 故に私達は殺傷力皆無の武器に持ち替えて戦に挑みます。 我々の意思が変わる前に懸命な判断に期待します」
そう言うと今度こそ私達は軽装甲車に乗り込みファーストへと帰還した。 一方伯爵達はそれから暫くその場に佇んでいたがやがて前進していた集団と共に陣地へと引き返して行った。 その日はそれ以降何の動きを見せなかったが翌日は800名程の集団が陣地より前進を始めた。
「接近する貴族連合軍の兵士に告げる、それ以上の前進をする場合当方は攻撃を開始する、直ちに停止、転進されたし。 繰り返す、直ちに停止し、転進されたし」
全身を続ける集団に砲撃予告を出した直後は集団に乱れが生じたがボウスに乗る騎兵は走りまわると前進するスピードは元通りになりファーストまで残り800mとなった所で遂に砲撃命令が出された。
砲撃音が鳴り響いた数秒後前進する集団の頭上で砲弾が爆発しその衝撃波と熱波は集団を襲った。 集団は爆発の衝撃波を受け大勢が転倒して居るのが双眼鏡を覗いていた私から確認出来た。 そして第二射が行われ同じく集団の頭上で爆発した事により集団の前進は完全に停止した。 そして次に機関銃による掃射が先頭集団に向け行われた。
「今のは警告射撃である。 それ以上の前進をする場合は其の身に先程の攻撃を受ける覚悟をされたし。 転進し兵を引き上げなさい、此方は無用な戦闘は望まない」
拡声器越し私の警告が聞こえたのか末端の兵士から少しづつ引き返し… いや、逃げ出し始めた。 逃げ出し始めた兵士を止めようとする集団も居たが一度逃げ始めた兵士の流れを止めらずにいた。 最終的に800名程居た集団は200~250名程まで減っていた。
その手段はその場で陣形を菱形の陣形に変え、尚且つ先頭は前面と上部に盾を掲げて最初は早歩き程度から徐々に駆け足へとスピードを上げてファーストへと向かって来た。
「接近する集団に告げます、これは最終警告です。 進軍を停止し、転進しなさい。 繰り返します、進軍を停止し、転進しなさい」
私が最終警告と告げても尚、その集団は走るのを止めず重い鎧を着て更に盾を掲げてるとは思えないスピードでファーストへと向かって来た。 そしてついに機関銃による直接射撃の命令が下された。
そして響き渡る機関銃の射撃音。 機関銃の射撃で盾持ちが詰まるとその直ぐ後ろの兵士がぶつかり転倒、転んだ兵士につまずき更に後ろの兵士が転んだりした所に再度降り注いだ機関銃の弾で更に転倒し人同士の多重玉突き事故の様相を見せ集団の突撃は大きく瓦解した。 機関銃の射撃は既に止んではいるが銃身は集団に向けられ警戒していた。
先頭集団が止まってしまった集団の後方からボウスに乗った騎兵約80基程が左右に分かれてファーストに向けて向かって来た。 騎兵集団は先頭を通り越すと一塊となり速度を上げてファーストに向かって来た為再び機関銃の射撃命令が下り機関銃の掃射を受ける事となった。
が、次々と落馬して行く兵士がいる中騎兵集団は突撃を止めずに突っ込んで来た。 そして150mを切った所で小銃での射撃命令が下り、防壁上の隊員から集中砲火を浴びる形となり遂に騎兵集団は全員が落馬しボウスはそれぞれファーストからちりじりになりながら逃げて行った。
「無事な貴族連合軍の兵士諸兵に告げる、先程突撃して来た騎兵を引き取られたし、今なら治療すれば助かる命も多いだろう。 尚、救助作業中は此方から一切攻撃はしない事を宣言する。 但し、おかしな行動を取ればその限りでは無い。 今より2刻を救助の時間とする」
宣言後はしばし誰一人として動く者が居なかったが騎兵たちのうめき声が聞こえたのか突撃してきた集団の兵士が恐る恐る近づいて来て1人の騎兵を助け起こして撤収して行くと徐々にその流れが生まれ、陣地からは負傷者を運ぶ為とからの荷車を引いて来る者達も出始めた。
2刻経つ前には全ての負傷兵が貴族連合軍の陣地へ収容された。 救助の様子を双眼鏡で観察していたが転倒していた集団の中に亡くなった人も多少出たらしくその人達は荷車に無造作に積み込まれ運ばれて行った。
そして貴族連合軍の陣地から青い旗(話し合いの用意あり)を掲げた14人の騎兵集団がファーストへと向かって来て200m程手前で止まった。 其処で一人の騎兵がノーラが居る丘へと走り出した。 私達はその様子を監視するに留めていたがいつでも射撃できる態勢は整えていた。
10分後、近衛兵を引きつれてノーラが集団の所へと赴き集団の中の3人と何事かを話あっているのが見て取れた。 やがて話し合いが終わったのか3人とノーラ、旗を持った兵士、近衛がファーストまで150mの距離まで来た。 其処からは近衛が1人旗を受け取りファーストの直前まで来た。
「日本国自衛隊に申し上げる。 貴族連合軍は貴軍に対して降伏する意思があると申しています。 故に降伏会談をエリアルノーラ王女殿下の元行う事をお願い申し上げる。 指揮官殿に取次ぎを」
即座にその事は報告され挟間陸将補は即座に会談に赴く事を承諾、準備に半刻貰う様に指示が出された。
「近衛の方にお伝えします。 我が方の指揮官は会談を承諾、準備に半刻頂きたいと仰せ出す」
「あい分かった。 では半刻後再びお尋ねする故、攻撃を控えられたし」
「了解した」
返答を聞くと近衛は踵を返しノーラ達の所まで戻るとその場で待つのか全員がボウスが下馬して兵士が用意した椅子に座って見た目寛ぎ始めた。
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