第30話 戦、直前 2
今回は気持ち短め、となっています。 その分次回は長めとなります。
私と羽根井1曹、横崎1曹、萩山2曹は軍服風ドレスを身に纏い司令部のある元村長宅の一室で優雅にお茶を楽しんでいた。 と、言うより貴族連合軍が揃ってから直ぐ開戦、とならなかったからだ。 連合軍は当初の予想通りの時間に全軍がファーストから1km程離れた平原地帯に集まった後テントやら持って来た物資を荷馬車から降ろしたりと陣地構築を始め気が付けば既に夕方。 警戒レベルも下げられて適時休憩を取りつつも監視は今現在も続けられてる。
真田准陸尉が一度報告に部屋に訪れた際私達の恰好を目を見開いて固まった後頭を抱えたのが印象的だった。 その後気を取り戻した真田准陸尉が現状報告をして退出した後天川1等陸尉達が揃って私達の恰好を見て頭を抱えたのには私達4人は笑ってしまった。
その際にどうして私達が選ばれたのか萩山2曹が訊ねたら何でもファーストの女性隊員の人気投票が有志で行われたらしく私以外の3人がそのTOP3との事だった。 で、その事を偶然知った挟間陸将補が検討中の新規式典用衣装のテスターにどうだろうか、と言った事で話が飛躍してしまったらしい。
が、試作品が出来たタイミングで今回の戦の騒動が起きそれ所では無くなったのだがこの世界の戦の作法に口上交換が行われるらしいとしり挟間陸将補が私の分も何故か追加発注をし送って来た、と言うより先日来た際に一緒に持って来たそうな。
で、もし本当に口上交換が行われる際に反応を見てみようと画策したのが今回のあらすじだと説明されて正直私は項垂れた。 挟間陸将補、貴方は何やってんですか、と。
他の3人も似た様な事を思ったのか何とも言えない表情で苦笑していたのはまぁ仕方ないだろう。 厳格なイメージがある挟間陸将補のイメージが彼女達の中では崩壊しただろう事は想像に難くない。 だが、天川1等陸尉達は実際に私達のこの衣装で隊員を鼓舞すれば士気は上がるだろうと言った。
実際に約10倍の兵力差、そして何より初の実戦で不安に襲われてる隊員も多数居るのも事実であり、そんな状況でこの格好をした私達が隊員達を鼓舞するのは有効な手段である為複雑な顔をしながらも天川1等陸尉達は私達に頭を下げてまでお願いして来た。 流石に其処まで言われては私達も断る雰囲気では無くとある条件で引き受けた。
「秋山3尉の心配も尤もだ。 其の件については挟間陸将補にも掛け合って対処しよう。 それと今日は連合軍が野営の支度に入ったのを確認したので戦闘は行われない、と判断した。 よってその恰好はもう良いぞ、楽にしてくれ。 ただ4人はすまんが明日から暫くその恰好で過ごしてもらう事になるが宜しく頼む」
「「「「了解」」」」
「それと、4人は暫く司令部の空き部屋を使ってくれ。 後程通常兵装に着替えた後、必要な身近な物を移動を頼む。 明日も06:30時に全体ミーティングを行う、その恰好はその後からで頼む」
「「「了解」」」
私達の返答を聞いて天川1等陸尉達は部屋から退出して行った。 私は早速とばかりに来てるドレスを脱ぎ棄て通常兵装へと着替え、自分の兵舎の家へと荷物を取りに行った。 が、化粧と結い上げられた髪型はそのままだったのですれ違った隊員達から驚かれ幾人からは質問された。
「もし口上交換が行われる際に私が行く事になったので… 」
そう説明すると何故か皆納得して「頑張って下さい」と言われるか「大変ですね」と言われるかのどちらかだった。 兵舎の家で必要最低限の荷物を纏め司令部のある家へ戻る途中で偶然アンドリュー殿と遭遇した。
「アンドリュー殿? 何故此方に居るのですか? 確か王女殿下の護衛としてシュバッツェへ居る筈では」
「っ!? …ぁ、いや夕方に王女殿下の元に貴族達が挨拶に訪れたのでその際の事を伝えて来る様王女殿下に下命されて此方に訪れたのだ」
「そう言う事でしたか。 と言う事は行き先は司令部のある家ですか?」
「その通りだ」
「でしたら私も今から行くので一緒に向かいましょう」
「そうですね、では一緒に向かいましょう」
そう言って私とアンドリュー殿は並んで司令部のある家へと歩き始めた。
「所で今日は随分と印象が違いますね。 化粧もされているので大変綺麗だ」
「っ?! ぁ、ありがとうございます」
私はアンドリュー殿に指摘されるまでまた今化粧をしたままの事を忘れていた。 その事を指摘され、更には綺麗とまで言われ顔が赤くなるのを自覚した。
「普段の生き生きとされてるレーコ嬢も好ましく思っていましたが、化粧をされ美しくなったレーコ嬢も違った魅力があり素敵です。 ですが、戦場で化粧をする女性はある決意をしてる、とも聞きます。 レーコ嬢もそうなので?」
「えっと、これは…その、もし口上交換が行われる際に私が赴く事になりましたのでそれで」
私はアンドリュー殿からの思いも寄らぬ口撃に更に顔が赤くなるのを自覚し、今アンドリュー殿に顔を見られたくなかったので若干しどろもどろになりつつも答えた。
「成程、そう言う事でしたか。 確かに化粧は女性にとって戦装束とも聞きますね。 で、あるならば可憐な化粧では相手を侮辱する事になりかねません。 明日はその辺りを意識されて化粧をされるのが宜しいかと」
「…そうなのですね、分かりました、ならば明日は凛々しく見える様に化粧をしましょう」
「そうされた方が良いでしょう。 (レーコ嬢の美しい化粧は彼奴等には見せるのは気に入らんしな)」
「? あの、後半は何と言いました?」
「ああ、単なる独り言ですのでお気になさらず。 それと、口上交換は行われますよ。 挨拶に来た貴族達に王女殿下が釘をさしていましたので」
「そうですか」
内心アンドリュー殿から聞いた事にノーラに「余計な事を」と一瞬思ったがこれはノーラが今出来る事をしてくれた事だと思い直した。 口上交換を行う事は戦う相手を対等な相手と見なし行う事だとも事前に聞いていたからだ。
貴族連合軍の貴族達は私達自衛隊の事を蛮族、つまり格下と見ていた。 それがノーラが何と言ったかは分からないが口上交換を行うに値する対等な相手として認識した事に他ならない。 これは明日からの戦闘は容易に如何なるだろうと気を引き締める事にした。
等と会話をしてる内に司令部のある家へと到着し私はアンドリュー殿を天川1等陸尉達の元へと案内した後与えられた部屋でその日の晩は過ごした。 因みにその日の晩の事は語りたくない。 ええ、絶対語りませんとも。
翌朝のブリーフィングを終え、私達は軍服風ドレスに着替えて部屋で待機していた。 自衛隊側は夜明け前から準戦闘待機状態で警戒態勢を取っていた。 一方の貴族連合軍側は夜が明けてから動き始め完全に太陽が昇り切って2時間程たった午前9:00時を回った頃に漸く隊列を組み少しづつファーストに向けて進撃して来た。
ただ、1900名全員では無く500人程の部隊が進み出てファーストから200m程の所まで進軍して止まった。 様子を伺って居ると10人程のこの世界の馬、ボウスと呼ばれる動物に騎乗した兵士が100m程の所まで来た、と報告を受けて私達は互いに顔を見合わせて頷き装備の最終確認を行い部屋を出た。
「相手までの距離は此方の有効射程距離だ、君達の援護は任せろ。 秋山3尉、もしもの時は特秘02の使用を許可する。 生きて戻って来い」
「了解しました」
部屋を出た所には天川1等陸尉達が揃っており、天川1等陸尉はそう言って私達を送り出してくれた。 司令部宅を出てからは私達4人は好奇の視線に晒されながらも堂々と歩き門に到着した。 私は3人にその場で待機して貰い門横の防壁の足場へと上がった。
「双眼鏡を」
「どうぞ」
双眼鏡を持ってた隊員から双眼鏡を借り受けて凡そ100m程の所まで来た貴族連合軍の兵士達を除いて見た。 結果10人中2人程他の兵士よりも鎧の装飾が豪華になって居たのでその2人が指揮官、或いは貴族だろうと判断した。 私はそのまま双眼鏡をノーラが居るであろう丘を見るとノーラは天幕から出て此方を見てるのが分かった。
そうこうしてると軽装甲車が門に到着したので足場から降りて4人で乗り込みいよいよ口上交換を行う為に私達はファーストを出た。
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