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 第29話 戦、直前

 報道クルー達への現状説明が終了しクルー達は用意された宿舎となる家へと案内された。 同時にクルー達と自衛隊側の配信は終了した。 今頃日本側は一体どうなってるのだろう、と思ったが既にやらかしてしまった後の為どうすることも出来ないか、と思い明日に備え色々確認する事にした。


 正直今回の投稿サイトを通じての暴露動画はホワイトベースに所属してる情報科、通信科隊員をも巻き込んで現場の私達が独自に動いた事で天川1等陸尉達を始め挟間陸将補にバレない様に行った事だった。 何故こんな事をしたのか、そんなのは決まってる。 犠牲者を少しでも減らしたかったからだ。


 此方の世界の標準的な金属鎧に暴徒鎮圧用弾を使った試射を行った結果は小銃では多少よろめく程度の威力しか無かった。 機関銃でやっと後ろに転ばせれる程度の威力。 確かに暴徒、鎧等無い地球側でなら暴徒鎮圧用弾は十分な威力だろう。 だが、この世界の軍勢相手ではそうでは無い。 それにもし突破されたら私達自衛隊側はナイフしか近接武器を所持していない。 そうなれば銃は迂闊に使う事も出来ないし、相手は近接戦闘を主眼に置いた軍隊、その後の展開は容易に想像出来る。 


 これで世論が動いて通常弾の使用許可が下りれば確かに相手側、貴族連合軍の死傷者の数が劇的に増えるのは容易に想像出来る。 だけど私達自衛隊員だって死にたく無い、と思うのは普通で、自然な思考だ。 だから行動を起こした。 上には内緒で。 正直この戦が終われば処罰が待ってるとは思うがそれも生き残れれば、の話だと実行した私達は思ってる。


 その日は挟間陸将補どころか天川1等陸尉達にも呼び出される事は無く就寝時間となりそのまま寝る事となった。


 翌朝、事前通達があった通りに戦闘装備を最初から着用し06:30時、ファーストの発着場に全員が集合した。 発着場には当然報道クルー達の姿もあり、カメラを私達に向けていた。 そして用意された壇上に治療跡が痛々しい挟間陸将補が上がった。


「総員、敬礼!!」


 バッ!


「直れ!!」


 バッ!


「皆、おはよう。 皆も知っての通り本日昼過ぎにクリフトニア王国の貴族連合軍の軍勢が此処ファーストに到着予定となっている。 再三エリアルノーラ王女殿下と通して戦を回避しようとしてきたが相手側から返された内容は非常識な物であり、到底受け入れられない物であった。 事此処に来ては戦は回避不能である。 


 尚、事前工作の結果だが貴族連合軍に付いていた傭兵集団は離れ、連合軍の人数は1900名程と減ったが戦力差は依然とある。 各員の奮闘に期待する、以上!」


「総員、敬礼!!」


 バッ!


「直れ!!」


 バッ!


 敬礼後、挟間陸将補は壇上から下り指令所のある村長宅へと案内されて歩いて行った。 代わりに壇上に上がったのは天川1等陸尉だった。


「さて、私からもいくつか言わせて貰う。 先ずは昨日の配信の一件だが関わった隊員が多すぎる為現場が混乱する恐れもあり、現時点で処罰は保留とする。 よって当初の予定通りのローテンションで警戒に当たれ! 最後に、生き残る為に最後まで諦めるな! 以上! 解散‼」


「敬礼!」


 バッ!


「直れ!」


 バッ!


 天川1等陸尉も壇上から下りると指示通り事前に決まったローテンションの警戒に当たるべく全員が動き始めた。 私が配備された班はこの後からの警戒となってる為即座に防壁へと向けて移動を開始した。


 警戒を始め3時間後、そろそろ交代時間になると言う時双眼鏡を覗いてた隊員が声をあげた。


「目標視認! 貴族連合軍の先遣隊です!」


「了解、直ちに航空科に小型ドローンによる偵察を依頼! 総員戦闘警戒へ移行」


《了解》


 無線で指示が素早く伝達され要請から1分後には30cm程の小型ドローンが3機、ファーストから飛び出して行くのが見えた。 そして防壁各所には隊員が続々と昇り配置に付き始めていた。


『警戒1班~4班は予定通り交代し休息を取る事を命ず。 それと秋山3等陸尉は司令部へ出頭せよ』


「…了解しました」


 無線越しに私だけ司令部に呼び出された事に返答し溜息を付いた。 周りを見渡すと私を気遣う様な視線を向けられてるのに気付き愛想笑いを浮かべてから防壁を降りて司令部へと向かった。


「秋山3等陸尉、出頭しました」


「入れ」


 私が案内された部屋に入ると天川1等陸尉達と何故かエリアルノーラ王女殿下が居た。 その事に疑問に思いつつも私は天川1等陸尉に視線を向けた。


「さて秋山3等陸尉、王女殿下から聞いた此方の戦の作法では戦の前に口上交換が行われるのが通例だと聞いたが今回は行われる可能性は低い、との事は既に聞いてると思う」


「はい、その様に聞いています」


「が、可能性が低いが行われる可能性も捨てきれない為もしも口上交換が行われた場合秋山3等陸尉、君に行って貰いたいたい。 理由は分かるな?」


「はっ 私が一番此方の言語を理解し話させる為ですね」


「その通りだ。 もし行われる事となった場合に備え準備をして貰いたい」


「了解しました。  それで準備とは何をすれば宜しいのでしょうか」


「先ずは用意した衣装に着替えて貰う。 口上は王女殿下及びアンドリュー殿から助言を頂き既に複数パターン用意してある。 相手側の口上を聞いてその中から最適な物を無線で伝える」


「了解です。 それでその衣装とやらに着替えて置けば良いのですね」


「その通りだ。 衣装は隣の部屋に用意されてる、この後着替えてくれ」


「はっ」


「私からは以上だ。 殿下、どうぞ」


「ありがとう天川1等陸尉。 本当ならば私は既に観戦場に居なければいけませんが無理を言って此方にお邪魔させていただきました。 私が言えた義理ではありませんが、自衛隊の皆様に神々の加護が在りますように。 そしてレーコ、貴方は嫌がるかも知れませんが私にとって初めての対等な友人です。 どうかご無事で」


 ノーラはそう言うと席を立ち私の前に立つと私に軽く抱き着いた。 私はその事に驚いて動けずに居たが暫くしてノーラから離れた。


「ノーラ…」


「連合軍の侵攻を止めれなくてごめんなさいね。 私にもっと…」


 ノーラは今迄に見せた事が無い苦悶に満ちた表情をしていた。


「ノーラは戦を回避しようと色々と動いてくれた事は此処に居る全ての自衛隊員が知っています。 そんな顔をしないで下さい。 それに私達は簡単にやられたりしません」


「ですが! 貴方方は本来の力を行使出来ないと聞いています。 もし万が一の事があれば… 私は私を許せそうにありません」


「その為に私達も色々と手を打っていますので大丈夫ですよ。 それよりも今、ノーラにしか出来ない事をお願いします」


 私はノーラの目を見て伝えた。 やがて揺れていたノーラの瞳に普段の強い意思を宿した瞳に戻るとノーラはしっかりと頷いた。 それからノーラは天川1等陸尉達にお辞儀をしてから部屋を退出して行った。


「王女とは言えまだ17歳の少女には今回の事は色々と堪える物があるでしょうね。 それでも王族としての矜持、とも言える物があるのか彼女は強いですなぁ」


 出て行ったノーラを見送っ八神2等陸尉が呟いたのを聞いて部屋に残ってた私達は頷いた。


「さ、王女殿下も気合を入れて己の仕事を為される。 俺達も気合を入れてかかろう」


「「「「はっ」」」」


「秋山3等陸尉、直ちに準備を」


「はっ」


 私は敬礼をしてから直ぐに隣の部屋へ移動した。 其処には3人の女性隊員が居り、私が部屋に入ると私が身に着けていた装備を3人がかりで剥ぎ取り迷彩服まであっという間に脱がされてしまった。 下着姿にされた私はそのままベットに横倒し押し倒されたと思ったらこれまた3人がかりでマッサージをされ始めた。 私は3人の気迫に押されその時点で抵抗は諦めてされるがままにした。


 マッサージが終わると次はドレッサーの前に連れて行かれ化粧を施されたがその前に言いたい。 数日前までこのドレッサーって無かったよね? この為だけに用意したの? このドレッサー滅茶苦茶高そうな奴だけどこれ幾らしたのよ?! 化粧の下地が終わった所で私は私が着る衣装を見せられて固まった。


 え? これを着ないといけないの? 冗談でしょ? 20代後半の私がこれを着た姿を想像し私は即座に逃亡を図ろうとしたが3人に阻止された。 1人に見事に関節を決めれ私は逃れられない事を悟り大人しくするしかなかった。


 用意されていたのは緑を基調とした軍服風のドレスだ。 正直な第一印象は何処のコスプレ衣装? だった。 大人しくなった私を3人は逃げれない様に包囲しつつ立たせてその軍服風ドレスを私に着せていった。 着付け終わると再度ドレッサーに座らされ化粧の仕上げ、髪の毛まで結い上げられた。


 全ての作業を終えた3人は非常に満足そうな顔をしてハイタッチを交わしていた。 その姿を私は恨めしそうに見つめたが最終的には諦めて盛大な溜息を零した。 が、その後衝撃的な事を1人から伝えられた。


「あ、秋山3等陸尉、挟間陸将補から戦が終わるまでその衣装で過ごす様に、とのご命令です」


「…え?! はっ? ちょ、それ本気(マジ)もんの命令なんですか?!」


「そうですよ。 因みに分かりにくいですけどその衣装の上着には各種ハードポイントが設けられてるので各種装備も付けれますし、衣装の素材は対刃用繊維で出来てますし、防刃性能は折り紙付きです」


「いやいや、そう言う問題じゃないでしょ! 何で私がこんな恥ずかしい恰好で戦に参加しなきゃいけないのよ!」


「何でも味方自衛官の戦意高揚の目的もあるそうで、わざわざ高名なデザイナーに依頼して特注で作ったそうですよ?」


「挟間陸将補は何してんの?! いや、それよりもこの格好で報道クルー達の前に出ないといけないんじゃ… え? マジこの格好で前線で指揮しないと駄目なの?」


「それが挟間陸将補からの命令ですので」


 容赦なく伝えられた内容に私は本気で頭を抱えドレッサーの椅子に座り込んだ。 


「因みにですけど、私達3人も秋山3等陸尉よりは簡素な物を着て口上交換が行われる際は一緒に行きますから」


「そうそう、それに私らもその服着て1小隊指揮すっから何も3尉1人って訳じゃないよ」


「だから元気出して下さいよ、秋山3尉」


 3人が言った事を理解した私はバッと3人の顔を見た。 その表情に何の後悔の念も無く屈託の無い笑顔が浮かんでいた。


「貴方達もし防壁を突破されたら分かってるの? 貴方達も聞いてるでしょ、この世界で敗軍の女性兵士の扱いを」


「知ってますよ。 だからなんですか、そうならない様に周りの男共を鼓舞すれば良いんですよ」


「そうそう、普段から厭らしい目付きで見て来てんだったら死ぬ気で私らの事守って見せろっての」


「まぁその後が怖そうかなぁとは思わなくも無いけど、男共に気合を入れる事は出来るわね」


「あ、それとですね、口上交換時のみ私達が携帯する武器には実包の装備が許可されてます。 また警戒用狙撃兵も実包装備です」


「許可が下りてるのは?」


「私と羽根井1曹は小銃と予備弾倉4つ、秋山3等陸尉と萩山2曹は拳銃と予備弾倉3つ、以上です」


「そう… 口上交換が行われる位置にもよるけど何かあった際は上手くやってファーストには戻れそうね。 もしもの時は何としても生きてファーストに戻るわよ」


「「「了解!」」」

誤字脱字がありましたらお気軽にご連絡ください。

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