表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/51

 第2話 拠点防衛

次回12日土曜日更新です。 以降毎週土曜日AM8:00更新予定。

 出頭命令に従い私は司令部として使ってる元村長宅を改築した家に入り食堂兼会議室として使われる部屋の前まで来た。 其処で一度深呼吸をしてから部屋の扉をノックした。


「秋山陸曹長出頭しました」


「入ってくれ」


「はっ 失礼します」


 中にいる人物から入室許可がおり扉を開けて中に入ると中山2等陸佐と天川1等陸尉、八神2等陸尉、宮内2等陸尉、真田准陸尉が居た。 


「秋山陸曹長も席に座りなさい」


「失礼します」


 宮内2等陸尉から客席を進められ私は素直に空いてる席に座ると真田准陸尉がお茶を出してくれたのでお礼を言い受け取った。


「さて秋山陸曹長、呼び出された理由は分かってるかね?」


 中山2等陸佐は私を睨みつけながら言って来た。


「拠点に受け入れたあの4人組についてだと私は思って居ます」


 私がそう言うと中山2等陸佐はテーブルを勢い良く叩いた。


「違う‼ 君の軽率な行動によって我が方の情報が相手側に流出した件だ! この責任を君はどう取るつもりなのか」


「あの時陸佐は現場の判断を私に委ねた筈です。 確かに私が知ってる情報は相手に知られましたが、逆に彼が有してるこの世界の情報も得る事が出来ました。 情報の等価交換と言えば私達側の方が優勢であると判断します」


「良く口の回る事だな。 だが彼等の怪我が治り彼らが国に戻った際、この拠点が攻められる危険性が今まで以上に激増したのは間違い無い。 その事については君はどう思ってるのかね。 現在この拠点には80名程の隊員が居るのだぞ。 君はその80余名の生命を危険に晒したのだ」


「お言葉ですがそれは結果論でありあまりにも物事を一方的に見てる、と私は思います」


「まぁまぁ落ち着いて下さい中山2等陸佐。 確かに貴方の言う通り我々の情報が彼らに知られたのは痛いでしょう。 ですが秋山陸曹長は彼からこの世界の情報を得ました。 それは今我々が最も欲してる情報ではありませんか」


 私と陸佐が応酬をしてると見かねた天川1等陸尉が会話に入って来た。


「ふんっ それで向こう側の情報を聞こうか」


「分かりました。 彼らはこの周辺地域を支配域としてるクリフトニア王国の王国第2騎士団所属で最初に接触した男性がアンドリュー・クリトバニア副騎士団長です。 足に怪我を負っていた男性がマルコスニア・スケルドッチと言う名前です。 次いで怪我人を背負っていた男性が近くの城塞都市と周辺の農村6つを収める辺境伯の次男でファランド・シュードルフと言う名前です。 最後に背負われていた男性が第2騎士団長のベンドール・ルッツカードと言う名前です。」


「王国と言う事はやはり政治体系は王政なのか?」


 八神2等陸尉からの質問に私は頷いた。


「アンドリュー殿からの知識が正しければ間違い無く。 現クリフトニア王国国王は9代目で名前はブレンハワード・フォン・クリフトニアと言うようで国王は賢王と言われ貴族・民衆両方から高い支持を得てるようです。 また騎士団長のベンドール殿は伯爵位を、副団長のアンドリュー殿は子爵位を持っており見捨てた場合はクリフトニア国の爵位持ち3名を見殺しにした事になりかねませんでした」


「それは何と言うか…」


「良くやってくれた秋山陸曹長」


「確認だが秋山陸曹長、君はアンドリュー殿からこの世界の言語の知識も得てるんだね?」


「はい、確証はまだですが少なくともクリフトニア王国の文字であれば読み書きは可能かと思います」


「それは重畳」


「見事な判断だ。 爵位持ち3名とこの世界と周辺を収める国の知識を得た事を考えれば多少の情報漏洩等小さい事だ」


 中山2等陸佐以外の4人からお褒めのお言葉を頂いたが中山2等陸佐がしかめっ面で私を睨んでいた。 私はそれに気づかないフリをしつつ出されたお茶で喉を潤した。


「それで秋山陸曹長、彼らが何故ここまで来たのかその理由は分かるか?」


「あ、はい。 天川1等陸尉、彼らは4か月ほど前から密林の奥から聞こえる様になった怪音の調査に来たようです。 調査の為密林の中にある例の集落へ向かう途中で大型の野生動物の群れに襲われ撤退。 彼らを4人を残して全滅した様です」


「ちょっと待ってくれ、つまりあの密林で大勢亡くなったのか?」


「アンドリュー殿からの知識が正しければ騎士団から騎士10名と兵士30名。 それと辺境伯から道案内と護衛として次男のファランド殿と兵士20名の61名が密林に入って生き残ったのが彼等4名のみとなります」


 私が説明すると部屋は沈黙に包まれた。 あの中山2等陸佐ですら驚愕の表情を浮かべ私をガン見していた。


「ち、ちなみに襲って来たその野生動物は何か分かるか?」


「はい、私達も見た事があります。 裂け目から出てきた大型の猪型のアレです。 それが6頭以上の群れで襲われたみたいですね」


「アレか…」


「因みにこちらではあの猪はランデスボア、死を運ぶ猪と言われてるみたいです」


 裂け目から出て来たランデスボアは確認された生物で体長4m~6mあり厚さ60cmの鉄筋コンクリート造りの防護壁すらその突進で破壊する力を持っており裂け目から出て来た場合は速やかに122mm砲を装備する戦車で4方から打ち殺すか110mm携帯対戦車弾で同じく4方から打ち殺すべし、とされている。 


 そんな生物が6頭以上の群れで襲われたら60名程の戦闘集団でも壊滅するのは容易に想像が出来たのか全員の顔色は悪かった。 正直普通科隊員の装備する5.56mm自動小銃では密林内を移動するには威力不足だった。 12.7mm重機関銃では持ち運びに向かない為今現在持ち運び可能な軽機関銃が開発中な訳である。


 他にも体長6mを超える熊や平均3mを超える鹿、2m程の狼等。 更には体長3m~5mにもなる大型のムカデや1m程の蟻の集団等がこれまで裂け目から出て来て自衛隊が対処した生物達でありいずれも5.56mm小銃では威力不足が否めなかった。 


 小銃で対応が可能だったのはカエルやウサギ、リス、ナメクジやカタツムリ等だったがどれも地球で見かけるモノより遥かに大きかったが。 その為この拠点の防衛には私は12.7mm重機関銃が最低でも必要だと主張したが中山2等陸佐はこの拠点建設が決まった際に配属された後任佐官だった為私の主張を理解せず突っぱねた。 が、周囲から私の主張の熱い擁護があり渋々認めたが私が主張した必要数10丁に対して中山2等陸佐は4丁しか認めなかった。


 これによりこの前線拠点では中山2等陸佐の支持率は最低処かマイナスに振り切っている。 一方で最低でも12.7mm重機関銃の設置を認めさせた事によって私の支持率は非常に高かった。 そのせいで私と中山2等陸佐との溝は更に深まったのは言う間でも無い。


 その時敵性生物の接近を知らせる鐘の音が鳴り響き、部屋に今夜の夜警責任者の陸士長が部屋に飛び込んで来た。 


「大変です、密林から大型猪5頭が現れこちらに突っ込んで来てます。 重機関銃で射撃を命じましたが牽制程度にしかなりません! 対戦車弾の使用許可を‼」


「駄目だ! 今此処には現地人が居るんだぞ、此方の戦力を見せる訳に行くか!」


「いい加減にして下さい‼ 此処で出し渋れば防護塀を突破されて死者が出ますよ‼ 対戦車弾の使用許可と武器庫の鍵を出して下さい!」


「貴様上官に向かってその口の利き方は何だ‼ 使用許可は出さん、重機関銃で対応しろ」


 私と陸佐が言い合いをしてる間も重機関銃の射撃音が鳴り響いていたがドッゴーーン‼ と言う衝撃音と悲鳴が聞こえて来た。 その音と悲鳴聞いて私は即座に防護壁が破られた事を察して動こうとしたがそれよりも早く動いた人が居た。 


 宮内2等陸尉が中山2等陸佐を殴り飛ばす光景を見て私は唖然とした。 宮内2等陸尉が殴り飛ばした中山2等陸佐を取り押さえるとすかさず真田准陸尉が中山2等陸佐のポケットを探り武器庫の鍵を見つけ出して私に投げつけて来た。


「秋山陸曹長、速やかに武器庫を開放し脅威を排除しろ!」


「了解!」


 真田准陸尉の指示に短く返し私は陸士長を伴い武器庫に向けて司令部のある家を飛び出した。 その際中山2等陸佐が喚く声が聞こえたがそれに構ってる余裕は無いと無視した。 武器庫に着くと既に普通科隊員が数名居り素早く武器庫の扉を開け対戦車弾を配ると私は隊員を引きつれて拠点内に侵入した猪を目指した。


 無線を持ってる隊員に位置を確認しながら移動し目標を捕え対戦車弾を巨大猪に打ち込んだ。 1発では巨大猪を仕留めきれず1頭目を倒すのに3発必要だった。 防護塀からは今だ重機関銃の射撃音が止んでおらず外にはまだ巨大猪が居る事が容易に想像が付き無線で確認して貰うと破られた防護壁から更に1頭侵入を許したとの事だった。


 侵入したもう1頭の排除に向かおうとした時30m程離れた位置の家が吹き飛びその中から巨大猪が飛び出して私達に向けて突進してきた。


「横に飛んで避けろ!」


 私の咄嗟の指示でその場に居た隊員は全員横に飛んで避け様としたが1人が間に合わず跳ね飛ばされ近くの家の壁に叩きつけられた。 私は先程弾を打ち尽くした2名に救護を命じてまだ隊戦車弾を持ってる隊員を率いて巨大猪に対峙した。 


 巨大猪は私達を通り越した先でUターンして再び私達に向けて突進して来ようとしていた。 


「後方の安全確認良し! 各自適時撃て‼」


「「「「了解」」」」


 指示を飛ばすと横一列に並んでた隊員全てから巨大猪に向けて対戦車弾が発射され全弾命中した。 巨大猪は暫くヨロヨロと私達に向けて歩いて来たが数歩歩いた所で力尽きたのか横倒しになった。


「大野、柊の容体は!?」


「意識無し! 少なくとも肋骨をやられてます! 出血多数! 動かせません!」


「救護班は?」


「既に呼んであります」


「堀と安達3曹は周囲の安全確保! 大野と柊を援護、救護班を待て。 残りは対戦車弾の予備を持って私に続け、行くぞ‼」


「「「「了解」」」」


 指示を出して私達は破られた防護塀の方へ向けて走り出した。

誤字脱字がありましたらお気軽にご連絡ください。

感想、コメントもお気軽にお願いします。

また続きが気になる、読んでて面白い、等少しでも思って頂けたら下の☆☆☆☆☆マーク評価宜しくお願いします。 書き続けるモチベーションになります

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] いきなりドーン!と裂け目の中に突っ込むのではなく、石橋を叩いて渡るがごとく調査を繰り返して、やっと派遣する所にリアルさを感じます。 [気になる点] 読点が少なく、ちょっと読みにくいです。 …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ