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 第24話 エリアルノーラ王女殿下、驚愕す

 その後も辺境伯と王女殿下と雑談を続けて、と言う訳にはいかず本題へと話題は移った。


「さてレーコ嬢、書面でもお伝えしましたが相互言語研修の受け入れは大丈夫ですかな?」


「ええ、大丈夫ですよ。 相互言語研修に来られる人達が泊まる為の家も完成してますから。 ただノーラが居るとは思って無かったからシンプルな造りになってますが」


「それは気にしないわ。 と言うより一月程で家を完成させた方が驚きよ。 短い期間で作られた家に装飾まで期待するほど傲慢でもないわ。 それにね、王族と言えど一定期間軍に所属して訓練を受けてるし、野営も経験してるからその辺は平気よ」


「え、王族の方が軍で訓練をされるのですか?」


「当たり前でしょ? いざとなれば王族と言えど軍を率いて戦いに赴くわ。 それなのに軍の行軍について行かなければ示しが付かないじゃないの。 因みに私は軍の訓練期間中に魔獣の討伐経験もあるわよ」


「そ、そうなんですね」


 私は、いや私達はこの世界の王族への認識が甘かったとこの瞬間に痛感した。 言われて見れば地球の歴史でも王、或いは王族であっても軍を率いて戦に赴いた記録はある。 


「そんな事より、レーコ。 相互言語研修に行けばアンドリュー殿達が絶賛してた貴方達の国の料理は食べれるのかしら?」


「え? あ、はい。 滞在期間中は自衛隊で纏めて食事を用意しますので食べれますよ」


「そう、それは楽しみだわ」


 そう言ってエリアルノーラ王女殿下は凄く嬉しそうな微笑みを浮かべ、その微笑みに思わず同性である私も見惚れてしまった。


「? どうしたのレーコ」


「あ、いえ、ノーラの笑顔に見惚れてしまって」


「ふふっ ありがと、レーコ。 でも残念ながら私はそっちの趣味はないわよ」


「え? あ! 私もありませんよ!」


 私が本気で否定して王女殿下を睨んだが王女殿下はそれを軽く受け流した。 


「話がそれてしまったわね、それでジエイタイ側の受け入れ態勢は万全と言う事でいいのかしら?」


「そうですね、想定してる範囲内なら、と付きますが受け入れ態勢は出来てると思います。 ノーラが居る事以外は」


「あら、言うわね」


「事前の打ち合わせも無く王族が参加すると言う重要案件を処理するこっちの身にしてみれば文句の一つも出ます。 それで確認ですがノーラが参加する事で人数の変更はありますか?」


「そうね、私の護衛に兵士が3人と私専属の侍女が1人追加されるぐらいかしら」


「ではノーラを含め5人増える、と言う事で良いですか?」


「そうなるわね。 行ける?」


「アンドルフ辺境伯から人員が増える可能性があると連絡が来ていましたので問題はありません。 それに備えて準備もしてましたから」


「なら、問題なしね」


 それから事務的な打ち合わせを済ませ私達は以前来た時に泊まった部屋へと下がり夕食までのんびりとさせて貰った。 ただし、高山にはファーストに王女殿下含め追加要員が居る事を連絡して貰った。


 翌朝諸々の準備を終えて私達は辺境伯邸を出発した。 先頭は私達が乗る馬車、次にエリアルノーラ王女殿下が乗る馬車、次にファランド殿が乗る馬車、辺境伯邸の使用人が乗る馬車2台と言う順番でシュバッツェの街を出た。 シュバッツェ兵は城壁を出た所で合流し、ファーストに向けて歩みを進めた。


 行きとは違い馬車と歩兵の組み合わせで移動した為、ファーストに到着したのはお昼を回ったぐらいになった。 ファーストに到着した私達は王女殿下とファランド殿には一軒家をそれぞれ案内し、シュバッツェ兵には宿舎へと案内した。


 案内が終わった後、私達は王女殿下とファランド殿、シュバッツェ兵の隊長と副隊長が天川1等陸尉達士官と挨拶と今後の予定の打ち合わせを行う為、元村長宅を更に改築して作った応接間へと案内した。


「失礼します、エリアルノーラ王女殿下及びファランド・シュードルフ殿、シュバッツェ守備隊隊長及び副隊長殿をお連れしました」


「分かった、入ってくれ」


「はっ」


 入室の許可を貰ったので扉を開けて4人を応接間の中へ招き入れた。 部屋の中には予定の無かった挟間陸将補が居たが昨日の連絡を受けて書いて時の如くホワイトベースから飛んで来たのだろうと予想した。


 それ以外は予定通り天川1等陸尉、宮内2等陸尉、八神2等陸尉、真田准陸尉が揃っていた。


「ようこそ、我々自衛隊は皆様の来訪を心よりお待ちしておりました。 先ずはお掛けください」


 最初の挨拶はこの世界の言語を練習していた天川1等陸尉が行い、それぞれ椅子に着席した。 エリアルノーラ王女殿下は着席する前にカーテシーをしてからファランド殿が曳いた椅子に着席し、その左横にファランド殿、右側に守備隊隊長と副隊長が着席した。


 対面側の自衛隊側は挟間陸将補が真ん中に座り、左側に天川1等陸尉、真田准陸尉、右側に宮内2等陸尉、八神2等陸尉が座った。 私は通訳として両陣営が見える位置に着席した。


「座ったままで失礼致しますが、私がこの世界での自衛隊の総指揮官を任されてる挟間と申します。 私は陸上自衛隊陸将補と言う官位に付いております、以後お見知りおきを」


 挟間陸将補はそう言って軽く頭を下げた。


「ご丁寧な挨拶、ありがとうございます。 私はクリフトニア王国第二王女のエリアルノーラ・フォン・クリフトニアと申します。 今回の相互言語研修の責任者は私となりますが実際に指揮を執るのは隣にいますファランド殿がする形となります」


「分かりました、では何か要望等がありましたらファランド殿を通してお伝え致します。 逆に何かありましたら秋山に言って頂ければ此処の責任者である天川に伝わります」


「畏まりました。 では早速で申し訳ございませんがお尋ね致します。 ジエイタイの目的は貴方方がこの世界に来る切っ掛けとなった【裂け目】を閉じる事に相違ありませんか?」


「はい、それに間違いありません。 我が国、日本は【裂け目】を閉じ平穏を取り戻す事を最終目標としております」


「それを聞けて安心しました。 現在我がクリフトニアは貴方方ジエイタイを討伐すべし、と言う意見が大半です。 この相互言語研修の結果が双方にとって良き物となる様頑張りましょう」


「王女殿下のお言葉、しかと受け取りました。 お互いに良き結果となる様、此方も努力する事をお約束致します」


「ありがとうございます。 それともう一つ、我が国の魔術師団から一度その【裂け目】を直接調査をさせて欲しい、との要望が出ております。 可能でしょうか?」


「それは願っても無い申し出ですね。 私達の世界では魔法と言う物が無い為、【裂け目】の調査に難航しておりますので此方からお願いしたい次第です」


「では、王都に文を出し魔術師団を派遣して貰って構いませんね?」


「勿論です。 ただ、事前にどれ程の人数が来られるか教えて頂ければ泊まる宿の等の手配を致しましょう」


「それは有難い申し出ですが、お手間では?」


「人数にもよりますが、簡易的な造りで良ければ左程問題ありません」


「分かりました。 それではお言葉に甘えさせて頂きます。 悪まで予想となりますが凡そ20名から30名程になるかと。 正確な人数が分かり次第お伝え致します」


「分かりました、宜しく頼みます。 ただ、【裂け目】があるのはアナイアの森の奥地です。 移動には我々の移動手段を使わせて頂きたいのですが大丈夫でしょうか?」


「それは… 報告にあった空を駆ける鋼鉄の天馬、の事でしょうか?」


「その通りです。 我々の世界ではヘリコプター、と呼ばれる空の移動手段の一つです」


「ヘリコピター、ですか?」


「ヘリコプター、です。 もし宜しければ私が此処に来る為に乗って来たモノがあります、この後軽い空の旅を経験されて見ますか?」


 挟間陸将補の提案に私は驚きながらもノーラに伝えると、ノーラは目を見開いて挟間陸将補を見つめた。 両隣りに座ってるファランド殿と隊長達も驚いた顔をしていた。


「……大変、魅力的な、ご提案なのですが、今はまだ心の準備が。 空を飛ぶ前の実物を見させて頂けるなら其処までにしたいのですが」


「確かにいきなりでしたな、申し訳ございません。 実物を見るだけであればいくらでも構いません。 良ければ実際に飛んでる所をお見せする事も出来ますがいかがでしょうか?」


「それは…私達が乗らなくても飛んでる姿を見せて頂けると?」


「ええ、その通りです」


「で、あれば、飛んでる所も見て見たいです」


「分かりました、準備させておきます。 其方が宜しければ相互言語研修に来られた方全員見学されますか?」


「宜しいのですか?」


「ええ、構いません」


 ノーラの問い掛けに挟間陸将補は満面の笑みを浮かべて頷いた。 その姿を見てノーラは考え込む様に顎に手を当て俯いたが暫くして顔を上げて挟間陸将補を見た。


「出来れば宜しくお願い致します」


「分かりました。 八神2等陸尉、頼むぞ」


「了解しました。 準備の為、席を外します」


「構わん、行ってこい」


「はっ」


 八神2等陸尉が途中退席した理由をノーラ達に話すと納得したのか頷いた。


 それからも今後の予定を確認しあいこの日の会談は終了となった。 が、ヘリコプターの見学及び飛行デモの為、ノーラ達は同行者を全員集めファーストの発着場へと案内した。 現在発着場には航空科の多用途ヘリUH-90SPJが2機留まっていた。


 その姿を見たノーラ達はこの鉄の塊が空を飛ぶのが信じられなかったのか色々質問して来た。 私は航空科の隊員に聞きながら答えられる範囲で答えた。


 相互言語研修に来た人達の中でもノーラは特に興味を示して実際にヘリに触ってみたり、隊員に手を借りて中に入って椅子に座ったりしていた。 その姿を見て危険は無いと分かった他の人達もヘリに近づき触ったりする人もいた。


 ノーラ達、と言うよりノーラが満足してヘリから離れた後、いよいよUH-90SPJのエンジンを起動しローターが回転し始め、ローターの起こす風が強くなって遂にヘリが空へと舞い上がった。 空へと舞い上がったUH-90SPJはその場で軽く旋回すると高度を徐々に上げて行き、曲芸飛行しながら空を自由に飛び始めた。 


 その姿をノーラ達は皆、口を上げて見つめていた。

誤字脱字がありましたらお気軽にご連絡ください。


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