第23話 再びの出会い
…異世界調査から1ヵ月、私は死んだ訳でも無いのに二階級特進を果たして3等陸尉へと昇進した。 更に言えば調査に同行した3人も何故か昇進する事が怒涛の勢いで決まった。
まぁそれ以外にもこの1ヵ月で色々と変化はあった。 日本側でも何やらあったらしくホワイトベースに防衛省、環境省、外務省、財務省等の各省庁から職員が常駐する事が決まり、ホワイトベースにその職員用の社宅や仕事をする為のオフィスの建造が始まった。
それに伴いファーストでも少人数受け入れる事になりそれ用の家の建築も施設科により始まった。 ファーストではそれとは別にシュードルフ辺境伯邸とシュバッツェ領軍の相互言語研修で滞在する為の家の建築も同時に行われる事となり一時的に隊員の増員が行われた。
その為連日のように建築に必要な資材のピストン輸送が行われた結果、ホワイトベースでファーストコンタクトがあったアナイアの森の住人達が私達を調べる為にファーストまで訪れる事態になった。 が、事前にホワイトベースでの接触に成功していた為、特に問題無く経過した。
因みに私と3人は週に一度の頻度でシュバッツェのハンターギルドへアナイアの森の素材を持って行き、その都度この世界の食材に始まり各種道具類を購入していた。 購入して来たモノは定期便でホワイトベースに送られて各種検査をされてる、と聞いてる。 尚、個人的に所持の許可が下りた物もありこっちの世界では愛用品となりつつある。
その代表例はドラヤード(ドライヤーっぽい物)で、何故こっちの世界で、と言うのは【裂け目】を越えて地球側に持って行くと全く動作しない事が判明したからだ。 之は検査してる人達を悩ませたが地球側には魔力が無い為に動力源の魔石の魔力が無くなるのが原因では? と仮説が上がってると聞く。
魔力の話が出たので私達4人は辺境伯から貰った本を元に修練して見た結果、魔法が使える様になった。 その結果を受け挟間陸将補は辺境伯へ、先ずはファーストに居る全隊員の魔力適性検査を依頼。 辺境伯もこの依頼を受けて後日相互言語研修に参加する人達と共に例の検査球も一緒に持って挨拶にファーストに訪れる事になっている。
それに伴い私達4人は次のシュバッツェへの素材を売りに行った後、辺境伯邸で一泊して相互言語研修に来る人達と一緒にファーストに戻る予定となってる。 なってる、と言うよりも今、現在進行形で進んでる。
いつも通りハンターギルドで素材を買い取って貰い、その足で辺境伯邸へと向かっていた。 今は内壁の門の所の兵士に要件を伝え、兵士が確認の為に辺境伯邸へ伝令が出て、そのまま待たせて貰っていた。
「あ、秋山3佐、あの馬車そうじゃないですか? 御者台に乗ってる人見覚えありますし、その隣に伝令で走った兵士もいますから」
高山2曹がそう言って見てる方角を見ると確かに見覚えのある人が御者台に居り、その横に兵士も乗っていた。 様子を見てると馬車は私達の前で止まり兵士と御者の人が居りて来た。 兵士は上官の方へと向かったが、御者をしてた人は私達の方へと歩いて来た。
「お久しぶりでございます、レーコ様。 お迎えに上がりました」
「お久しぶりです、ザガットさん。 まさか貴方が迎えに来て下さるとは思いませんでした」
「レーコ様達はアンドルフ様の大切なお客様でございますので、私がお迎えに上がった次第でございます。 さ、どうぞ馬車にお乗り下さい」
「では、お言葉に甘えて」
私達はザガットさんに誘導され馬車に乗ると直ぐに馬車は動き出した。 それからしばしの間馬車に揺られてると辺境伯邸へと到着し馬車が止まると馬車の扉が開いた。
「お久しぶりです、レーコ嬢」
そう言って手を差し伸べてくれたのはファランド殿だった。 私はファランド殿にお礼を言って手を取り馬車を降りると屋敷の玄関にはアンドルフ辺境伯、そして何故かエリアルノーラ王女殿下も一緒に居た。
私達は驚いて固まったが私はファランド殿に手を引かれ2人の前まで連れて行かれた。
「お久しぶりでございます、シュードルフ辺境伯様。 エリアルノーラ王女殿下もお元気そうで何よりでございます」
2人の前に連れて行かれるまでに少し間があったお蔭でどうにか気を取り直して私は2人に挨拶をした。
「うむ、レーコ嬢達も元気そうで何より」
「久しぶりですわね、レーコ。 それと堅苦しい言葉使いは要らないわよ、私と貴方は対等な友人なのですから。 そうそう、聞いたわよレーコ、ハンターランクが上がったそうじゃない、おめでとう!」
「あ、ありがとうございます」
王女殿下の言う通り私達4人は前回来た際、ギルドランクが全員1つ上がって居た。
「ほらまだ言葉使いが硬いわよ、この前の様にもッとフランクな感じで話して頂戴」
「はぁ~ 王女がそう言うのならそうしますが、後で不敬罪だ、とか言い出さないで下さいね?」
「そんな事する訳ないじゃない」
私はエリアルノーラ王女殿下に両手を握られて迫られた為、仕方なく折れて要望通りフランクな感じで対応する事にしつつも不敬罪にされない様に王女から言質を取った。
「エリアルノーラ王女殿下、玄関で立ち話もなんです、先ずは移動しましょう」
「あら、それもそうですわね。 じゃぁレーコ …と、仲間の方々も移動しましょう」
王女は私の後ろに居るであろ3人に視線を向けてから声を掛けて辺境伯の案内で移動を開始した。 通されたのは前回も案内された客間だった。 それぞれが客間のソファーに座るとメイドさんが素早くお茶を配膳して部屋の隅へ控えた。 お茶を配膳してくれたのは初めて来た時に街を案内してくれたサラさんだった。
「やはりこのお茶は美味しいわぁ。 さてと、レーコは疑問に思ってるでしょ、何故私が此処に居るのか、と」
私は嫌な予感を感じつつも頷いた。
「ふふっ その顔だと何となく予想出来た見たいね。 多分予想通りかしら、私もね相互言語研修に参加する事にしたの。 だから此処に居るわ」
「やはりですか。 ですがノーラのお父様、つまり国王陛下はご存じなので?」
「勿論知ってるわよ。 と言うよりも、私が相互言語研修に参加するのは父上、陛下からの命令でもあるの。 まぁそう言う訳だから宜しくね、レーコ」
王女から返って来た返事を聞いて私は外聞を取り繕う事もせずに頭を抱えた。
「そんなに落ち込まないで、レーコ。 之はある意味で必要な事だったのよ。 自分達の国に知らない間に他国、それも異世界の国の兵士が拠点を築いたら警戒するのは当然よね?
その拠点に王族の1人が直接赴けば過激派の貴族達に牽制出来るわ。 実際貴方達の事を報告した後に直ぐに貴族会議が開かれたわ。 当然貴方方ジエンタイの脅威を理解してない、出来ない貴族は国軍を派遣して皆殺しにするべき、との意見も出たわ。
事実、その意見を大半を占めたのだけど、それに待ったを掛けたのがアンドリュー殿と私よ。 まぁ当然父上も仲間だったけど。 流れとしては、貴方方が来る切っ掛けとなった原因は詳細不明なれど我が国の貴族による物と高い確率で言える。 原因が我が国にあるのに一方的に攻撃するのは我が国に更に泥を塗るのと同意。 聞けば相手は友好的、ならば対話を持って相手を知る事から始め誠意を見せるのが国としてあるべき姿では無いか。
って感じで誘導して今に至るわ。 でもまぁそれでも反対した貴族達も居たからその貴族達への牽制の意味も含めて王位継承権を持つ私が来たのよ」
王女の説明を聞いて予測された中では比較的、穏当とも言えるが相当厄介な状況に置かれてる私達の現状を知り私は頭を抱えたまま重たい溜息をついた。
「流石にその反応は傷つくわね。 私達の国は法治国家よ、いくら何でも縄張りにいきなり入って来たからと言っていきなり襲い掛かる様な真似はしないわ。 と言うよりも父上がさせないわ。 例外もあるけど。
今回の事はその例外に該当しない、と言うのが父上、陛下のお考えよ。 陛下は私に日本国との交渉に関する権限を与えてくれたわ。 レーコならこの意味、分かるわよね?」
「ええ、何となくですが。 つまりノーラは相互言語研修に参加しながらも日本とクリフトニア王国の架け橋となるべく動く、そう言う事よね?」
「大体正解ね。 相互言語研修に参加して貴方方の国、日本と言う国と我がクリフトニア王国の差を知り、争う事が如何に無益な事かを貴族達に理解して貰う為よ」
「ついでにこの前言っていた貿易云々に関しても?」
「当然よ」
私の突っ込みに王女はさも当然、とばかりに頷いた。 その姿を見て私は王女の持つ独特な魅力の一旦を垣間見た気がした。
「…なら、丁度良いかも知れないかもね。 近い内にファーストに国の外交を任されてる部署の職員が来る事になってるわよ。 当然全てを其処で決める事は出来ないけど、要望を本国に伝えて貰える可能性もあるわ」
「…え? ?! そ、それは本当なの?」
私が伝えた事に一瞬キョトンとしたが次の瞬間に理解したのか凄い勢いで確認して来た王女に私は頷いた。
「あぁ、何て事かしら! アンドリュー殿やマルコスニア殿から聞いた料理が貿易によってこの国でも作れれば私の野望も現実味も‼ これはやる気が俄然でますわ‼」
「お手柔らかにね、前も伝えたけど私達の最終目標は【裂け目】を閉じる事だからね」
「ええ、分かっていますわ。 それに先ずは相互言語研修にて日本国語を覚えなければいけませんし最初から飛ばしたりしませんわよ」
「そう、それを聞いて安心しました」
私達は顔を見合わせてどちらからともなく笑い出した。
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