第1話 ファーストコンタクト
「秋山曹長、どうします?」
私は左横に居た高山3曹を見た。 その顔は強張っており一目で緊張してるのが見て分かる。 かく言う私も今同じ様に緊張で顔は強張って居るだろと思った。
「全員いつでも剣を抜ける様に備えて置け。 柳田1曹、目標までの距離は?」
私はかなり近づいて来た4人組を視界から外し門扉の左側の足場に居る部下に声を掛けた。
「目標までの距離80m、威嚇射撃しますか?」
「そのまま待機、距離50mまで来たら報告」
「了解」
私は背負ってた雑嚢から小型双眼鏡を取り出し4人組を確認した。 1人は報告通り意識が無いのか背負われており背負っている男も腕に怪我をしてるのか巻いてる布に血が染み出てる。 残り2人の内1人は足を怪我してるのかもう一人に肩を借りて此方に歩いて来てる。 問題なのは意識が無い男を背負ってる男が槍を、残りの2人は剣らしき物を腰に装備しており全員がそれなりに何かの鎧を装備してる点だ。
つまり4人組は何処かの先頭集団に所属していると言う事だ。 対応を間違えれば4人組が所属する組織と… その考えを振り払うように私は頭を振った。
「距離残り50。 どうします、秋山曹長」
「矢を何時でも撃てる用意をしてそのまま待機。 陸佐、どうしますか?」
ザッザッ
「…距離20で威嚇射撃をして様子を見るとする。 柳田1曹当てるなよ。 それまで総員警戒態勢を維持。 その後は秋山曹長、現場判断に委ねる」
『了解』
陸佐の指示に返答したが私は小さく舌打ちをした。 何か問題にあればあの臆病2等陸佐は私に責任を押し付ける気だとさっきの指示で気付いたからだ。
「秋山曹長、落ち着いて下さい。 この拠点であの陸佐を支持するのは1人も居ませんから」
「すまん、大丈夫だ」
私の舌打ちに気付いたのか右横に居た鈴原2曹に宥められ私は苦笑いしながら答えた。
「距離30、射撃準備します」
「了解、指示にもあったが当てるなよ」
「了解、距離25!」
私は柳田に声を掛けて4人組を見つめた。 其処で4人組に止まった。
「目標距離25で停止。 いえ、一人だけ出てきました。 どうしますか秋山曹長」
「威嚇射撃中止、柳田と井上はその場で残った3人を監視。 高山、鈴原は私に付いて来い。 残りはこの場に待機」
『了解』
私は一度大きく深呼吸をしてから門をより外に出て5m程の所で止まって一人だけ歩いて来た男が来るのを待った。 私の両脇を固める2人は緊張しながらも剣の柄を握り最大限警戒していた。
「2人とも安心しろ塀の離れた所から向こうをスコープ付の小銃で監視してる仲間が居るんだ。 もう少し肩の力を抜け」
「そ、そうですね」
「すみません」
2人は私の言葉を聞いて軽く深呼吸を繰り返すと肩から力が抜けるのが分かった。 男は5m程の所まで来ると一度止まり私達を一瞥すると両手を上に上げ更に3mまで近づいた。 男の行動を見るに敵意が無い意思表示はどうやら同じらしいと思ったが何もかもが不明なこの世界で判断するのは危険かと思った。
「a%!!8'%$=)*$"」
私は両手を上げた男が何か言ったのは判断出来たが何を言ってるのかさっぱり理解出来なかった。
「高山、鈴原、理解出来たか?」
「いえ、さっぱり」
「同じく」
「私もだ。 さて、どうしたモノか」
男の方も私達が言葉を理解出来て無い事が分かったのか顔を一瞬顰めた後両手降ろして腕を組んで悩んでる様に見えたが直ぐに後ろを向いた。
「#G&=='hj%$#'**%'&#!」
男が後ろを向いて何かを叫ぶと足を引きずってた男が腕から何か外すともう一人の男に渡した。 渡された男は背負っていた男を地面に降ろすと此方に向かって来て最初に対面してた男に何かを渡したら直ぐに踵を返して戻って行った。
何かを受け取った男は私達に振り向いて受け取った何かを差し出した。
「これは腕輪、だな」
「ですね、腕輪ですね」
「この腕輪がどうかしたんですかね」
男は私達が腕輪を確認したら腕輪を地面置くと腰からナイフを取り出した。 その際高山と鈴原が反応して剣を抜こうとしたが男が手を広げこちらに付き出したので私は2人を宥めた。
2人が落ち着いたのを見た男は頷いてナイフで指先を切ると腕輪に付いてる宝石に垂らした。 男はナイフに付いた血を拭くと地面に置き私を見つめて来た。 そして指差し私にも同じ様にして腕輪の宝石に血を垂らす様にジェスチャーで伝えて来た。
「曹長、どうしますか? 見た感じ何か意味がありそうですが此処が異世界だと思うと何があるか分かりませんけど」
「そうだな」
鈴原が私に近づいてどうするか聞いて来たが既に私の中では答えは決まっていた。 大きく深呼吸をして私は男に近づくと男は頷いてナイフを渡して来た。 そのナイフを受け取り男がやった通り指先を軽く切ると出て来た血を男が持つ腕輪の宝石に垂らした。
すると宝石から目を覆う程眩い光があふれ出し思わず目を覆うと色んな知識が頭の中に流れ込んで来て私は思わず膝を付いた。
「「曹長!」」
「だ、大丈夫だ」
「ですが!」
光が収まり男を見ると男も額を押さえ膝を付いていた。 流れ込んで来た知識通りならこの男の名前はアンドリュー・クリトバニア。 クリフトニア王国騎士団所属の第2騎士団副団長だ。 私は頭を振ってからアンドリューなる男を睨みつけた。 男も何度か頭を振った後私を見てから下を向いた。 私もそれに釣られて視線を下げると驚いた。
其処には先程まで一つしかなかった腕輪が二つあった。 驚いて男を見ると頷いてから一つを取ると右腕に付けてから私にも付ける様ジェスチャーをして来た。
私達3人はあり得ない事象に動けずに居たが私は意を決して腕輪を拾い上げて右腕に付けた。
「そ、曹長!? 大丈夫なんですか?」
「さあな、それはこれから分かるだろう」
そう言ってアンドリューを睨んだ。
「俺の言葉は分かるか?」
「ああ、分かる。 この腕輪のおかげか?」
「その通りだ。 この腕輪はアーティファクトでな、言葉が通じない相手との意思疎通を図る為の物で現存する数は之を含めてこの世界では4つしか無い貴重な物だ」
「その様な貴重な物を使って良かったので?」
「此処で使うべきだと俺の勘が訴えていた。 それに使わねばこうやって会話も出来なかったから使って正解だったと俺は思うが貴方はどうだ、秋山殿」
「確かにそうですね。 私の名前を知ってるという事は先程流れ込んで来たのはやはり貴方の知識か? アンドリュー殿」
「如何にも。 俺の知識が貴方に、貴方の知識が俺に流れ込んで来た。 どうやら俺達の任務の目的は達成出来そうだ。 だがその前に頼みたい事があるのだが良いだろうか?」
「貴方の仲間の治療、ですね?」
「如何にも。 頼めるだろうか」
「暫くお待ちを。 上に確認しますので」
「分かった」
アンドリューはそう言うと数歩後ろに下がった。
「こちら秋山、司令部応答願います」
『こちら司令部、状況を知らせよ』
「4人組は此方に彼の仲間の治療と治るまでの滞在を希望しております」
『治療と滞在ですか?』
「その通りです。 尚私の知識が対応した男性に知られた為こちら側の技術レベルは知られました。 同時に彼が有する知識を私は得る事が出来ました。 よって下手に隠し立てする事はマズイと判断します。 彼らはあの城郭都市含めこの地域を収める国の中枢にパイプを持つ人物でもあり需要な情報源となります。 此処は恩を売っておくべきかと」
『な!? 今言った事は本当か! だとしたら色々不味いぞ、この責任はどうするつもりだ秋山曹長」
「恐れながら2等陸佐、今は責任をどうこう言ってる場合ではありません。 死にかけてる仲間が居る彼らを救ってこちらの世界の国と友好的な関係を築くべきです。 彼らの治療と滞在の許可を」
ザッザッ
『こちらはホワイトベースの挟間陸将補だ。 秋山曹長責任は私が獲ろう、彼らを受け入れ治療を。 それと中山2等陸佐はホワイトベースに次の定期便で帰投を命ずる』
「了解しました」
『了解…しました』
「アンドリュー殿、許可が下りた。 直ぐにお仲間を村の中へ」
「忝い」
アンドリューは頭を下げてから後ろにいる仲間の所へかけて行った。
「警戒解除、通常体制へ移行。 怪我人の治療受け入れ準備を」
《了解!》
それから私とアンドリューがそれぞれの通訳となり治療設備を整えた家へと案内して3人の治療が行われた。 意識が無かった男は肋骨の骨折と右肩の脱臼、そして脳震盪と診断された。 足を怪我をした男は幸い神経は無事だった。 傷口を縫合した後安静にするよう診断された。 意識が無かった男を背負ってた男は左腕を骨折していた為そのまま手術室治療を受ける事となった。 最後にアンドリューはあちこちに打撲やらがあったがそれだけで大きな怪我は無かった。
全員の治療が終わる頃には既に日が沈んでおり簡単な食事を持って行きちゃんとした挨拶等は翌日にと話が纏まり私は彼らに挨拶すると休む為に割り振られていた家に戻った。
「あ、お帰りなさい秋山さん。 ご飯出来てますよ」
「ただいま、今日は何?」
「肉じゃがですよ」
「了解、食べたら今日はもう寝るわ」
「分かりました、直ぐに用意しますね」
「ありがとう、町田3曹」
それから町田3曹が用意してくれた夕飯を同じ家で過ごしてる他の4人と取ってると来客があった。
「秋山陸曹長、直ちに司令部に出頭する様指示が出ております」
「…了解しました」
「次の定期便は3日後です。 それまであの中山2等陸佐から色々言われると思いますが耐えてくれと天川1等陸尉から言付けを預かっております。 それとあの場では秋山曹長の判断は間違って無かったと自分も支持いたします」
「そう、ありがと。 それじゃ私は行きますね」
「はっ」
私は玄関脇に避けて道を開けてくれた1等陸士に敬礼をしてから司令部のある元村長宅を改築した家へと足を向けた。
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