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 第18話 なんで居るの?

「それで彼らの容体はその後どうなんだ? 山田3尉」


「はっ 報告では3人ともに峠は越えた、との事で後は安静にしていれば問題無いとの事です」


「そうか、それは何よりだ。 …所でだ、彼らの事どう思う?」


「それは何に対してでしょうか?」


 私は矢島一等陸佐からの抽象的な質問の意図を何となく察したがあえて聞き返した。


「はぁ… 彼らは私達の世界では空想上の種族、エルフと特徴が似ている。 君は彼らがエルフだと思うかね?」


「私が知ってるエルフ像とは多少違いますが、確かに身体的特徴はあると思いますが断言は出来ないかと。 何せこの世界の事は分からない事だらけですので」


「確かにその通りだが… まぁ今はその事は横に置いておこう。 それで彼らとの対話… 筆記談? まぁコミュニケーションで何か新しい情報は得られたのか?」


「いえ、まだ私達の事を警戒してる様子なので今の所事務的な対応でやり取りをされてますのでこれと言って」


「そうか、引き続き彼らの面倒を宜しく頼む」


「了解しました」


 私は矢島一等陸佐に敬礼し部屋から退出した。 この後は基礎体力訓練の予定なので私は訓練場へと向け足を進めた。 訓練場へと向かう途中で病棟勤務の隊員からユリーナが呼んでると連絡を受けたので上官に許可を貰いユリーナ達の病室へと向かった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「お待たせしましたかな? それで検査は如何いたしますかな」


 部屋に戻って来たアンドルフ辺境伯は椅子に座ると早速切り出して来た。


「はい、仲間と相談した結果、その検査を受けて見る事にしました。 宜しくお願いします」


 私はそう言ってアンドルフ辺境伯に頭を下げた。


「おぉ、そうですか。 それでは早速用意しましょう。 おい、検査球を此処に持て」


「畏まりました」


 私からの返事を聞いたアンドルフ辺境伯は嬉しそうに頷いてから部屋に待機していたメイドさんに指示を出すとメイドさんは頭を下げてから部屋を出て行った。


 部屋を出て行くメイドさんを見送り改めてアンドルフ辺境伯達を見ると辺境伯以外の3人が緊張? した様子で私達を見つめて来ていた。


「あの何か?」


「ああ、気にしなくても… と、言っても無理だろう。レーコ嬢、マスター・マクマの話は覚えて居ますか?」


「ええ、確か4属性の魔法が使えた唯一のレベル5認定された方ですよね?」


「そうです、そして彼は謎多き方でもあり、その出自に関しては今に至るまで分かっていません。 そしてそんな彼の出自にある仮説があります」


 そう言って話を区切ったアンドリュー殿は私達を真剣な目で見つめて来た。 私はアンドリュー殿の話を聞いて嫌な予感をヒシヒシと感じつつもアンドリュー殿に話の続きを促した。


「その仮説とは何でしょうか?」


「…マスター・マクマは異世界から来た、迷い人だったのでは無いか。 と言う物です。 実際今、私達の目の前には異世界から来た貴方方が居るのです。 この仮説も否定出来る要素が無く…」


 アンドリュー殿は其処まで言ってアンドルフ辺境伯に視線を向けた。 その仕草でこの検査はアンドルフ辺境伯の独断であったと理解した。 そして警戒していたつもりではあったが流石貴族だと思った。


「はぁ~、アンドルフ辺境伯はその仮説の支持者なのですね? そして今その仮説を証明するまたと無い機会が訪れた為に私達に魔力適性検査を受けて見ないかと持ち掛けた。 と言う事で合ってますか?」


 私は手で額を抑えながら辺境伯に訊ねた。


「確かに儂は仮説の支持者ではあるが、検査を受けて見ないかと持ち掛けたのは単純に儂の好奇心じゃ。 決してそれ以上でもそれ以下でも無い」


「そうですか、それで検査で適正有りと出たら私は、いえ私達をどうするおつもりで?」


 私は柳田達に合図を送りながら辺境伯に訊ねた。


「いや、どうする気も無いが。 レーコ嬢達が適正有りと出たとして、更に先に進むか、そこで止まるかはレーコ嬢達次第じゃ」


「えっと?」


 私は辺境伯が言った事を理解出来ずに恐らく間抜け顔を晒したと思う。 様子を見守っていたファランド殿が見かねたのか話に入って来た。


「すみません、レーコ嬢。 父上はその… マスター・マクマの冒険譚の大ファンでして、自身もマスター・マクマの事について色々と調査と言うか研究をしているのです」


「え~と、つまりその、今回の検査もその研究? 調査? の一環であると?」


「そうなります。 もしこの検査でレーコ嬢達に魔力反応があれば、マスター・マクマの異世界からの来訪者説が現実味を帯びます。 反応が無ければ仮説は否定出来て別の仮説の研究に移れる、と言う事です」


「な、成程? つまり、この検査は辺境伯の調査・研究の一つであり、それ以上でもそれ以下でも無い、と言う解釈で合ってますか?」


「その通りじゃ。 まぁ騙すような形になってしまった点については謝罪しよう。 そうじゃな、もし適正反応があっても無くても魔法修練の基礎を纏めた本を差し上げよう」


「ありがとうございます」


 辺境伯からの申し出に私は即座にお礼を言った。 アンドリュー殿からの知識で多少は魔法に関する知識はあるが、全体では無く、基礎の一部と一系統に関してのみであった。 その為魔法に関する情報収集を今回の遠征で命じられていたからだ。 まさに辺境伯からの提案は渡りに船であった。


 そうこうしているとメイドさんが装飾の施された箱をカートに乗せて部屋に入って来た。 メイドさんはそのままカートを押して辺境伯の横まで押していくと辺境伯に頭を下げて部屋の隅に控えた。


「さてレーコ嬢、この箱が魔力適性検査に使う箱です。 蓋を開けると中に固定された水晶球が有りますのでそれに手を触れて力を籠めれば終わりです」


「え? それだけですか?」


「それだけ、ですな。 適性があれば水晶球が光ります。 無ければ光りません」


「成程、確かに簡単ですね。 それで力を籠めるとは普通に力めば良いのですか?」


「あ、それに関しては私が説明します」


 辺境伯に訊ねるとファランド殿が手を上げて辺境伯に代り説明してくれた。 様は体内を巡る魔力を心臓に集め、集めた魔力の塊を水晶球に触れてる手から打ち出すイメージらしい。 ファランド殿からの説明を聞いてイメージが出来たので私は柳田達にもやり方を説明した。


 そして私から順番に検査を受けて見た。 結果は何と言うか、私達全員反応が有り水晶球は光った。 全員が、光った。


「アンドルフ辺境伯、水晶球光りましたね」


「う、うむ。 光るというよりも輝いた、と言った方が適切やもしれんが」


「しかし、私達の世界では魔法、魔力は空想上の物で現実には存在しない物でした。 それが何故反応があったのでしょうか?」


 私は疑問に思った事を辺境伯に訊ねてみた。


「儂にも分からん。 本当にレーコ嬢達の世界には魔法は無いのか? 俄かに信じられんのじゃが。 あの反応を見た後だと余計に」


「無いのは確実かと」


「うぅ~む。 どういう事じゃ?」


 私と辺境伯が揃って首を捻ってると真剣な顔をして考えてたアンドリュー殿が顔を上げた。


「もしかして世界を越えたからでは? レーコ嬢達は【裂け目】を通ってこの世界に来られたのですよね? ならばその【裂け目】を通った事により何らかの形で魔力を得た、と考えれば或いは…」


「待って下さい‼」


 アンドリュー殿が言った事に私は即座に反応した。 もし、もし仮にアンドリュー殿が言った事が事実だとすれば【裂け目】を越えてこの世界に来た私達全員が魔力持ちになった事になる。 


「もし仮にそうだとしたら…」


「想像するだけで恐ろしいのぅ。 あの水晶球の輝きからして先ずレベル3以上の魔力持ちである事は間違いないじゃろうし」


「個人の差はあると思いますがレベル3・4は確実でしょう。 もしかすればレベル5もありえます。 だとすれば…」


 部屋に何とも言えない重苦しい空気が流れたがそれまで部屋の隅に控えていたメイドさんが声を掛けて来た。


「辺境伯、発言の許可を」


「っ?! 分かりました、発言を許可します」


「ありがとうございます」


 辺境伯がメイドさんに丁寧に答えた事に訝しげに見たが辺境伯の顔が引き攣っていたのを見て益々不思議に思い他の3人も見ると3人もそんな辺境伯に疑問の目を向けていた。


 メイドさんは辺境伯の隣まで移動すると私達に向けて軽く頭を下げた。 そして徐に右手を髪に手を伸ばすと髪の毛を勢い良く引っ張った。 私は思わず声を上げて腰を浮かせかけたが引っ張った髪の毛がカツラであった事を理解するとホッとして浮かせた腰を椅子に戻した。


 私が椅子に座り直すと同時にアンドリュー殿達3人は勢い良く立ち上がると直ぐに片膝を付いて頭を下げた。 辺境伯も静かに椅子から立ち上がりアンドリュー殿達と同様にカツラを取ったメイドさんに片膝を付き頭を下げた。


 その様子を見て私は過去最大級の嫌な予感を感じつつメイドさんを見つめた。


「初めまして、異世界から来られし兵士の方々。 私はクリフトニア王国の国王、ブレンハワード・フォン・クリフトニア9世の次女のエリアルノーラ・フォン・クリフトニアと申します。 以後、どうぞお見知り置きくださいませ」


 エリアルノーラと名乗ったメイドさん改め、クリフトニア王国の第二王女は見事なカーテシーをして私達に軽く頭を下げた。 第二王女の登場に私は頭を抱えたくなったが何とか堪え、柳田達に指示を出し急ぎ椅子から立ち上がりながら第二王女に対して最上級敬礼を返した。


「それでは皆様、お掛けになりお話の続きを致しましょう」


 私達の敬礼を見てエリアルノーラ第二王女は穏やかな笑みを浮かべ着席の許可を出すとそれまで辺境伯が座っていた椅子に座った。 辺境伯はアンドリュー殿達が座ってるソファーへと移動すると其処に座り、私達は私達で元から座っていたソファーへ座り直した。


「それでアンドルフ、貴方は之からどうするべきだとお考えなのか聞かせて貰えるかしら」


「畏まりました。 …魔力適性検査の結果はこの検査に立ち会った者は戒厳令を出すのが宜しいかと存じます。 ただ、事が事だけに陛下にだけは報告するべきかと」


「まぁそれが妥当でしょうね。 此処には王都騎士団の団員が居る事ですし」


エリアルノーラ王女はそう言って辺境伯の横に座るアンドリュー殿達を見た。 そして


「レーコ嬢、此度の検査の結果について触れ回るのを控えて頂けないかしら? 勿論貴方方の上役に報告するのはこの際仕方がないので諦めるとします。 ですが、市井の民の前では控えて下さい。


 下手に触れ回ればこの国に入り込んでるであろう厄介な国の者に目を付けられる事になりかねません。 そうなれば私達クリフトニア王国の王族を以てしても庇い切れなくなりかねぬので。 そうなれば陛下は恐らく貴方方を相手国に売る可能性が大いにあります」


「分かりました、エリアルノーラ王女殿下。 ご忠告、心よりお礼申し上げます」


 私はエリアルノーラ王女に頭を下げた。

誤字脱字がありましたらお気軽にご連絡ください。

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