第12話 辺境伯と会談、そして
「さてレーコ嬢、それとセイーチロウ殿、このまま立ったまま話すのも無粋故、天幕を用意しますので一度村までお戻り頂き休憩を為さって下さい。 用意が出来次第使いを向かわせます」
「天幕ですか?」
「左様、我が方と貴方方合わせ10人程入れる天幕を用意しましょう」
「そうですか、少々お待ち頂えますか?」
「ん? 構いませんが、どうされました?」
「一度上に確認をしたく思います」
私はそう言うと天川1等陸尉の方を見た。 その仕草でアンドルフ辺境伯は私の意図を理解したのか頷いた。 それから天川1等陸尉に相談するとこの世界の技術レベルが確認出来るかも知れないと言う事でお願いする事になった。
ただ椅子や机などはシュバッツェから持って来させると言ったのでそれは時間が掛かる為私達が用意すると言ったら恐縮されたが時間が掛かる事も事実なのでアンドルフ辺境伯が折れて椅子と机は私達が用意する事になった。
無線で連絡し各家で余ってる椅子と大きめの机を二つ用意して貰い私達が居る場所まで持って来て貰った。 また天川1等陸尉は無線で逐一状況を挟間陸将補に報告して居た為警戒レベルを下げ準戦闘待機としランデスボアに破壊された家屋や防護塀の撤去及び修復作業が再開された。
シュバッツェから来た兵士一団約200名の内150名はシュバッツェへと引き返し、残りの50名は天幕を用意したり周辺の警戒とアンドルフ辺境伯の護衛として残った。
それから約1時間後に天幕の用意が整い改めて私達とアンドルフ辺境伯側との話し合いが始まる事になった。 私達側は挟間陸将補、天川1等陸尉、真田准陸尉、私と言う面子。 対するアンドルフ辺境伯側はアンドルフ辺境伯ご本人、筆頭執事、警備隊隊長、総務局長。 アンドリュー殿とファランド殿は立会人と言う立場に落ち着いた。 尚互いの自己紹介は天幕が用意され迄の時間に済ませてあった。
「さてお待たせして申し訳ない。 それでは始めましょう」
「宜しくお願いする」
アンドリュー殿の通訳で挟間陸将補とアンドルフ辺境伯との話し合いが始まった。 話し合いはそれから軽い軽食を挟み6時間ほど続いた。 この話し合いで決まった事は以下の通りとなる。
1つ:日本国陸上自衛隊が再整備した元廃村は日本国が所有する土地と認め治外法権が認められる。 またその範囲は元廃村から500メイル(500m程)の距離まで有効とする。
1つ:日本国陸上自衛隊が村で栽培してる各種野菜等のシュバッツェでの貿易による税金免除を認める。
1つ:日本国陸上自衛隊がアナイアの森で得た各種魔獣素材の貿易による税金免除を認める。
1つ:今後シュードルフ家と日本国陸上自衛隊との関係を円滑とする為シュードルフ家次男、ファランド殿の駐在を認める。 また、双方の言語研修の人員の滞在も含むモノとする。
1つ:日本国陸上自衛隊とシュードルフ家は止むえない状況下に陥らない以上戦闘行為は行わいモノとする。
1つ:またアナイアの森の魔獣の氾濫が起きた場合、元廃村改めファーストに居る者のシュバッツェへの避難を認める物とする。
1つ:これら上記で決まった事はクリフトニア王国国王、ブレンハワード・フォン・クリフトニア9世からの正式な指示が出た場合、再度検討する物とする。
明らかに私達日本側が有利な条件になってる様に思えるが最後の条項が曲者となるだろうと私達は思った。 が、現状考えうる上では最上の結果と言っても良い内容なのは間違い無いと話し合いが終わった後挟間陸将補は笑っていたのが印象に残った。
話し合いが終わった頃には日が傾いて来ていた為アンドルフ辺境伯達は手早く天幕を片付けてシュバッツェへと帰って行った。 アンドリュー殿とファランド殿はそれに同行せずそのままファーストに残る事となった。
挟間陸将補はその日の深夜に迎えに来た陸上自衛隊が誇る夜間偵察高速ヘリに乗りホワイトベースに帰って行った。 翌日から情報科隊員を中心とした言語相互研修が建設が進む横で青空教室で始まった。
それから3日後、アンドルフ辺境伯からの手紙を携えた使者がやって来た。 使者からの手紙には話し合いが行われた翌日の昼過ぎに騎士が3名、兵士が12名、シュバッツェの兵士が8名生きて森から生還したが、怪我が酷く治ったとしても原隊復帰出来そうなのが騎士1名、兵士6名、シュバッツェの兵士3名だろうとの事だった。
それ以外ではシュードルフ家から言語相互研修へと赴く人数が決定したと書いてありシュードルフ家使用人から3名、シュバッツェ警備隊から15名、ファランド殿の身の回りの世話役に3名派遣するとの事だった。 ただまだ人選がまだ難航しておりもう少し時間が掛かるとの事で人選が終わった際に改めて手紙を出すとも書いてあった。
それ以外には先日の話し合いで決まった各種免税に関するアンドルフ辺境伯直筆サインが入った許可証も同封されていた。 それとシュバッツェへの入場の際の手数料を免除する許可証まで入っていた。
蛇足だがアンドルフ辺境伯から話し合いの時に飲んだ紅茶の茶葉がどうしても欲しい、と手紙に書かれており私とアンドリュー殿が近日中に茶葉を届ける事になった。
それから更に3日後、マルコスニア殿の抜糸が済み医者からも杖無しで歩いても問題無しとのお墨付きが下りたのでアンドリュー殿達と話し合った結果、2日後にシュバッツェへと帰還する事が決まった。
それ以外での細かい報告としては昨日ランデスボアによって破壊された防護塀は修復が完了した。 又挟間陸将補が補修資材と一緒に持って来てくれた重機関銃も防護塀に設置されファーストの防御力が強化された。 又小型探照灯も設置され夜間に警備の際に威力が発揮されるだろうと隊員達も喜んだ。
また情報科隊員を中心とした言語研修も順調で朝昼晩の挨拶と簡単な単語による会話が少しだが出来る様になりつつあった。 何でもこの世界の言語はフランス語と英語が混じってる様な感じらしく発音に関してはフランス語に似てるらしい、と言語研修に参加してる情報科隊員から報告があがってる。 が、それでもやはり未知の言語の為習得するには相応の時間が掛かるだろうとの事らしい。
それから2日後、アンドリュー殿達3人と私、柳田3曹、高山士長、鈴原士長の4人がシュバッツェへと赴く事になった。 私達の恰好はアンドリュー殿達からのアドバイスによりハンター風の恰好となった。
私と高山士長は剣を装備し鈴原士長が大型の盾と単槍を装備、柳田3曹が弓矢と短剣を装備している。 鎧の素材として日本製の対防刃素材で作られた服の上に防弾チョッキの上にこの世界の大型の熊の革を鞣した皮を縫い付けて作られた軽鎧を私と高山士長が、同じ素材で作られた全身鎧を鈴原士長が、柳田3曹は同じ素材の胸当てと小手、脛当てを装備している。
尚、剣や槍は日本製の鋼で作られた物に更新されてる。 何でも私達が最初装備してた青銅製の武器は作られ無くなってからかなり経つらしく今ではコレクターぐらいしか持って無いとの事だった。 因みに鈴原士長の持つ盾は特殊ポリマー素材と軽量特殊複合合金製の特別仕様で見た目よりも軽くかつ防御力高い物だ。 アンドリュー殿達が試しに固定された盾に斬りかかっても多少凹む程度で3人を驚かせた。
更に3人を驚かせたのがアンドリュー殿が盾に放った土属性の魔法も防いだ事だった。 この結果にはアンドリュー殿達だけでは無く私達も驚き可能な限り検証を試みたが正確な確証は得られなかった。 が、アンドリュー殿達からはこの盾なら余程の事が無い限り大丈夫だとお墨付きを得た。 それとこの盾を売って欲しいとも言われたがそれは天川1等陸尉が丁重に断っていた。
尚その検証に使われて傷だらけの盾は現在鈴原士長が装備してる。 と言うのも新品の盾でハンターギルドに行けば舐められる可能性があると言われたからだ。 鎧であれば新調したばかりだと言えば良いが装備品の中で一番金が掛かる盾までも新品だと返って怪しまれる事があるとの事で検証に使って良い感じに使用感が出てる盾を装備する事になった。
此処まで言えば分かるだろうが私達4人は今回のシュバッツェへと行った際にハンターギルドに登録する事も目的の一つでもある。 これは後々ルッツカード伯爵領へ行く時の為の布石でもある。
それと今回ハンターギルドに登録に行くに当たって魔獣の素材もいくつか持ち込む事になった。 狼の毛皮と爪、牙。 カマキリの鎌の部位。 カエルの革、そしてそれぞれの魔石だ。 比率として狼の魔石が20、カマキリが3、カエルが8つとなっている。
これらは話し合い後私達4人がアンドリュー殿とファランド殿付き添いの元、実際にアナイアの森の浅い場所で狩って来た素材だ。 私個人の感想を言うならカエルとの戦闘は出来れば控えたいと思った。
だってカエルの唾液は繊維を溶かすから色々と、その、ね? しかも繊維は溶かすくせに体にはなんの影響も無いと言う不思議な性質があるし。 それが判明してからは私はカエルには腰に装備してる拳銃を撃ち込み遠距離で対処する様になったのは仕方ないと思う。
因みにだが私達4人には携帯武器として拳銃と予備弾倉が2つづつ(私だけ4つ)装備許可が下りていた。 まぁ理由は語るまい。 と言うか語りたくない。
最後にアンドルフ辺境伯への依頼品でもある紅茶の茶葉だが報告を受けた挟間陸将補が日本の有名メーカーの茶葉を5種類と茶器セットを3セットを自腹で購入し送って来た。 茶葉の説明の翻訳を私とアンドリュー殿に依頼する形で、だったが。 その報酬にアンドリュー殿が欲しいと挟間陸将補に申し出ていた緑茶と麦茶の茶葉と焼き菓子のセットが添えられていた。 私には某有名店の洋菓子が送られて来た。 大変美味しかった、とだけ言って置きます。
素材を運ぶ為の荷台は自衛隊が備品で備えてる小型の折り畳み式の物を可能な限り木製で作った特別仕様だったりもする。 勿論強度を確保する為随所に金属製素材は使われてるし、何より板バネと小型のスプリングが搭載されてるので荒れた荒野でも楽に引く事が出来る。 この荷台に関してもアンドリュー殿達は強い興味を示し購入出来ないか、と天川1等陸尉に詰め寄っていたがこれまた丁重にお断りされていた。
そんな様々な準備を整え終わり、私達4人とアンドリュー殿達3人はシュバッツェへと出発する為、門に集まった。
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