表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/51

 第11話 辺境伯登場、そして

 私が視線を戻すと2人は未だに言い争いを続けていた。 その後ろに控える30人程の集団に報告にあった5人組が合流すると集団が動揺するのが見て取れた。 


「どうやら辺境伯ご本人が来たようです」


「そうですか。 それではあの2人の言い争いも終わりそうですね」


「ええ、どうやら最悪の事態はこれで避けれそうです」


 私とアンドリュー殿が一息ついた時ファランド殿のお兄さんが一際大きな声で叫んだ。


「えぇい、もう良い! ヨシュア、この分からず屋を始末しろ‼」


「宜しいのですか?」


「構わん、やれ!」


「兄上、正気ですか?!」


 ファランド殿のお兄さんが後ろに控えていた男性に指示を出すと男性は持っていた弓に矢を番えて引き絞った。 私は驚いてアンドリュー殿を見るとアンドリュー殿は苦虫を嚙み潰したような表情をしながら剣の柄を握ったがそれ以上動こうとはしなかった。


 不審に思って見ると男性は確かに弓に矢を番えて引き絞ってるがそれがあくまでもポーズだと言うのが見て取れた。 更に後ろの集団から1人飛び出して来てるのが確認出来た。


「ワグマール、いい加減にせよ‼ ヨシュア、弓矢を降ろせ」


「了解しました」


「「ち、父上?!」」


 飛び出して来た人がファランド殿のお兄さんを一喝し、弓矢を構えた男性に辞める様に指示を出すとヨシュアと呼ばれた男性は素直に弓矢を降ろし、ファランド殿とお兄さんは驚いた声を上げた。


「父上が何故いらっしゃるのですか」


「本隊で待って居ったのだが何やら言い争ってる声が聞こえて来たのでよもやと思って出向いたのだ。 どうやら正解だった様だな、ワグマール。 貴様は今、実の弟に何をしようとした?」


「それはファランドが我がシュードルフ家に歯向かう様な事を言った為制裁を」


「黙れ、ワグマール。 お前は今「我がシュードルフ家」と言ったな。 儂はお前に家督を譲った覚えは無いぞ。 何時からシュードルフ家はお前の物になったのだ? つけあがるのも体外にしろ。 それに先程までの言い争い、ファランドの言い分が正しければ貴様のやろうとしてる事でシュードルフ家が取消されても何も言えぬぞ。 それすら分からぬのか」


「なっ?! その様な事はありません」


「どうしてそう言い切れる?」


「権利を失ってるとは言え奴らは廃村を不法に占拠した何処の輩とも知れぬ者共です。 ならば村を不法占拠した者共を兵で拘束した後に尋問し奴らの目的を問いただせば良いではありませんか。 その上で廃村だった場所をあそこまで修復出来る技術を持つ者を奴隷として囲い込めばシュバッツェは更なる発展を見込めます」


「成程な、確かに平時であればそれも良かったであろう」


「では、早速…」


「だが!」


 ファランド殿のお兄さんが言った事に辺境伯が同意した事に嬉しそうな表情をして何かを言おうとしたがそれを辺境伯が強い口調で遮った。


「だが、ファランドは何と言っていた? そして其処に居る方は何処の何方か思い出してみよ」


「? ファランドが言っていた事ですか? それと其処に居る…の……は………」


 辺境伯に言われてお兄さんはファランド殿が言っていた事を思い出そうしながらアンドリュー殿を見つめると次第に顔が青くなっていった。


「どうやら漸く分かった様だな。 それでは儂も誤解無きよう示さねばならん。 おい誰か、このバカ息子のワグマールに縄を打て。 猿轡も忘れるなよ。 縄を打ったら即座に牢へ連れて… いや、この場にて拘束しておけ」


《了解しました》


 辺境伯が指示を出すと10名の兵士が即座に動き青くなってるワグマール殿を馬?から引きずり降ろして拘束してしまった。


「さて、ファランドよ。 お前もお前だ、あの程度の事で熱くなってどうする? まだまだ修行が足りぬぞ」


「申し訳ありません、父上」


「此度の失態を忘れずに次に生かせる様精進せよ」


「はっ」


 辺境伯から励まされファランド殿は嬉しそうに敬礼をした。 それを見て辺境伯は頷くとそれまで成り行きを見ていた私達に視線を向けて、馬?から降りて私達に近づいて来た。


「6日ぶりですな、アンドリュー殿。 取り敢えず無事で何より。 それでご説明頂けるのですかな?」


「はっ、私達騎士団が受けし調査の答えに此方の方々が関わっております。 また、アナイアの森から聞こえて来る音に関してシュバッツェ及びクリフトニア王国に今の段階で驚異とはなりえません」


「ふむ、今の段階では、かね?」


「はい、彼らとその国家は我がクリフトニア王国と比べるべくも無い程の差があり、もし万が一にも戦ともなれば王国は3日と持たぬかと。 故に彼らとその国家とは友好を結ばねばなりません」


「……其処まで、かね?」


「其処まで、です」


 アンドリュー殿と話してた辺境伯は大きく溜息をついて成り行きを見守っていた私達に視線を向けたが直ぐにアンドリュー殿を見つめた。


「それでは儂に彼らを紹介してくれるかね」


「分かりました。  秋山殿、天川殿此方へ来て頂けるか」


 アンドリュー殿に呼ばれ私と天川1等陸尉はアンドリュー殿と辺境伯の所まで近づいた。


「秋山殿、天川殿、此方の方がこの辺り一帯を治めるアンドルフ・シュードルフ辺境伯様です。 お2人は辺境伯に軽く頭を下げる程度にして下さい」


 アンドリュー殿に言われて私と天川1等陸尉はアンドルフ辺境伯に軽く頭を下げた。 すると後ろに控える兵士達から軽くどよめきが起きた。


「アンドルフ辺境伯、此方の男性があの砦の責任者の天川団長です。 女性の方が砦の兵の兵士長の秋山殿となります。 お2人は異国の地の出故に我々と会話が可能なのが秋山殿だけとなります」


「そうなのかね?」


 アンドリュー殿の説明を聞いて会話が可能なのが私だけと聞いた辺境伯は驚いたのかアンドリュー殿に確認を取った。 アンドリュー殿はそれに答えず腕輪を見せてから頷いた。 辺境伯はアンドリュー殿の腕輪を見て驚き私の腕にも同じ腕輪を確認すると納得したのか頷いて私に向き直った。


「お初にお目にかかる、私はこの辺りを収める領主のアンドルフ・シュードルフと言います。 また陛下より辺境伯の位を賜っております。 以後お見知りおきを」


 辺境伯は自己紹介をすると右手を胸に当て私達、私に対して深く頭を下げた。 その様子に又もや後ろの兵士達からどよめきが起きた。 会話が可能なのが私だけの為私は天川1等陸尉に一度視線を向けてから挨拶を返えした。


「丁寧な挨拶、痛み入ります。 私は日本国陸上自衛隊陸曹長の官位を頂いております玲子 秋山と言います。 隣に居ますのが上官の日本国陸上自衛隊1等陸尉の官位を持つ誠一郎 天川と言います。 此方こそ以後お見知りおきを」


 そう言ってから私は右手を胸に当て、今履いてるのがズボンだった為スカートを軽く摘まみ上げる様な仕草をしながらこの世界風のカーテシーをして見せた。


「レーコ嬢ですな、分かりました。 異国の地の名ゆえ正確に発音出来て無いと思いますが良しなに」


「構いません、私共とて貴方方のお名前を正確に発音出来ぬ場合もありますので」


「助かります。 さて互いの自己紹介も終えた所で、アンドリュー殿。 これからどうすれば良いかね?」


 アンドルフ辺境伯はこれからどうするべきかアンドリュー殿に訊ねるとアンドリュー殿は拘束され地面に抑え込まれてるワグマール殿の見た。 その視線に気づいたアンドルフ辺境伯はその視線の意味を悟ったのか重い溜息を付いた。 


 その様子に疑問に思って天川1等陸尉を見たが天川1等陸尉も困惑気味で様子を伺っていた。 するとアンドルフ辺境伯はワグマール殿の方に向き直った。


「ワグマールの猿轡を外してやれ」


「はっ」


 アンドルフ辺境伯は猿轡を外すよう指示を出すと抑え込んでた兵士が素早く猿轡を外した。


「ワグマール、覚悟は良いな」


「…はぃ」


「現時刻を持ってアンドルフ辺境伯が長子ワグマールの継承権を剥奪、以後シュードルフの家名を名乗る事を禁止とする。 またその身柄はシュードルフ辺境伯警備隊預かりとし、1兵士として以後励め」


「…分かり…ました」


 アンドルフ辺境伯が告げた内容を聞いてワグマール殿が項垂れながらも小さい声で了承した。


「アンドリュー殿、これはどう言う… 」


 私はこの事態に困惑してアンドリュー殿に訊ねた。


「私は王命にてアナイアの森からの怪音の調査に来ていました。 そしてその怪音は貴方方の戦闘音だと先日判明しました。 故に貴方方が拠点としたあの元廃村は王命に関わる重要な場所となっています。 ワグマール殿がしようとした事はその重要拠点を横からかすめ取る行為に当たり、これは王命に背く行為にもなります。


 故にアンドルフ辺境伯は陛下に背く意思は無いと証明する為長子でもあるワグマール殿から継承権を剥奪し一族から除名して一般兵まで落としたのです」


「其処までする必要が… 」


「あります。 これでも軽い方です。 王命に背いたり、妨害した場合は厳しい時は極刑もありますので。 それだけ王命とは重い物なのです」


「…………」


 私はアンドリュー殿の説明を聞いて王権政権での王命の重さと言う物をこの時肌で感じた。 天川1等陸尉に今何が起きてるのか説明を求められて説明すると天川1等陸尉も驚いてアンドルフ辺境伯とワグマール殿の方を見つめた。 


 見つめる先には「バカ息子が」と言いながら目に涙を溜めワグマール殿の肩をきつく握りながら見つめる辺境伯と複雑そうな顔でそれを見つめるファランド殿が居た。 周りの兵士達も何処か複雑そうな表情で辺境伯親子を見つめていた。


 辺境伯はそらからワグマール殿の肩を数度叩くと立ち上がり涙を袖で拭った後両手で頬を叩いてから私達の所まで戻って来た。


「みっともない姿をお見せして申し訳ない」


「いえ、お気になさらず」


「忝い。 アンドリュー殿、之で此度の件に関して我がシュードルフ家は王族に対して反意が無い事を認めて頂けるだろうか?」


「長子の継承権を剝奪した上更に一族からの追放。 この度の件を程度を考えれば若干軽い気もしますが、それは彼らへ態度にて示して頂けるなら納得しましょう」


「あい分かった。 感謝する、アンドリュー殿」


 アンドルフ辺境伯はアンドリュー殿に深く頭を下げた。 それを見て私は王都でのアンドリュー殿の立場の高さを改めて実感した。 頭を上げたアンドルフ辺境伯は私達に向き直った。 どうやら此処からが交渉の本番になりそうだと私は気合を入れ直した。

誤字脱字がありましたらお気軽にご連絡ください。

感想、コメントもお気軽にお願いします。

また続きが気になる、読んでて面白い、等少しでも思って頂けたら下の☆☆☆☆☆マーク評価宜しくお願いします。 書き続けるモチベーションになります


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ