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 第9話 会談と新たな問題

 その日の深夜にホワイトベースから飛んできたUH-90SPJ4機に負傷した隊員と拘束された中山2等陸佐がホワイトベースに搬送された。 それとUH-90SPJ4機に繋がれて運ばれた補給物資には12.7mm重機関銃が4丁と弾薬2万発、対戦車弾50発、小型探照灯4基も含まれていた。


 更に壊れた家の修復用資材と各種食料及び衣服等も含まれておりこれにはファーストに居る隊員たちは皆喜んだ。 何より喜ばれたのは各種医療薬品の補充であったのは言う間でも無い。


 そして何よりも驚かされたのは挟間陸将補が現地視察と言う名目でファーストに訪れた事だった。 流石にこれには天川1等陸尉始めファースト勤務の隊員全員が驚いた。 


 翌朝日の出とともに挟間陸将補は天川1等陸尉の案内でファースト内の視察を行った。 其処で既に解体された巨大猪改めランデスボアの死体と突破された防護塀、破壊された家屋等を見て追加の物資を早急に手配すると言ったらしい。


 そしてその日の午後、私とアンドリュー殿が挟間陸将補に呼ばれた。 呼ばれた私達は司令部のある家に到着するといつもの食堂兼会議室へと通された。


「良く来てくれた、秋山陸曹長。 それと、アンドリュー殿、先ずはお掛けください」


 挟間陸将補は自己紹介をすると私達に椅子に座る様に進めると町田3曹が私達の前にお茶を配膳すると会議室の隅に控えた。


「さて、アンドリュー殿。 貴殿は会話だけなら可能と此方の天川1等陸尉とそこの秋山陸曹長達から報告を聞いてるが間違い無いかね?」


「はい、間違いありません、将軍補佐官殿」


「ん? 将軍補佐官?」


 アンドリュー殿が呼んだ呼称に挟間陸将補は首を傾げながら訊ねた。


「貴方の官位を私の知識に当てはめた場合、私は貴方を将軍補佐官と言う地位、或いはそれに準ずる地位と判断し、そう呼ばせて頂きました」


「成程、そう言う事でしたか。 それで貴方が納得出来るならそう呼んでくれて構いません」


「ありがとうございます」


「さて、周りくどい言い回し等せず単刀直入にお尋ねしよう。 アンドリュー殿、我々は貴方がクリフトニア王国の国王直属部隊の隊員では無いかと推測しています。 その理由はいくつかありますが大きく上げるなら2つ。 一つは貴方が王からの密命を受ける立場、次にこの世界でもかなり貴重な品であると予想される腕輪を持っていた点、です。 如何ですか?」


「……如何にも私の本来の所属はクリフトニア王国近衛第3情報小隊所属です」


 挟間陸将補からの問いにアンドリュー殿は表情を鋭くしながら答えた。 答えを聞いた挟間陸将補は静かに頷くだっけだった。


「そうですか。 では貴方は国王陛下に我々の事をどの様に報告をされるつもりかお聞きしたい」


「それは… 最初はありのままを報告するつもりで居ましたが正直今は迷っています」


「それは何故かお聞きしても?」


「昨夜飛んで来た鋼鉄の空を掛ける天馬。 ランデスボアを倒した武器。 そして秋山殿から得られた貴方方の国の事。 もし仮にもクリフトニア王国と戦になれば我々はいとも簡単に敗北するでしょう。


 幸い陛下は賢王で在られますがその臣下もそうとは限りません。 もし数は少ないですが反国王派貴族が暴走すればその責を取るのは国、陛下です。 それに貴方方この世界へ来る原因をなった【裂け目】は我が国の貴族による物の可能性が非常に高い。


 それらを踏まえて私はどの様に陛下へ報告すべきか迷っています」


「成程、貴方は我々の持つ文明レベルとの差を知り、自国との差を知った訳ですか。 そして自国内の不確定要素と我々が通って来た【裂け目】の原因が自国にある可能性がある、と」


「はい」


「正直にお伝えしましょう。 我々は貴方方を始めこの世界に住む人々と無益に争うつもりは一切ありません。 我々の目的は私達の世界とこの世界を繋ぐ【裂け目】の調査であり、その原因の除去です。


 故に【裂け目】を閉じる手立てが見つかり、実行出来る算段が付けば我々は自分達の世界へと帰ります。 そしてその手掛かりが貴方方側に心当たりがあるならば我々は協力する事も吝かではありません」


「…………」


 アンドリュー殿は挟間陸将補が言った事を真剣に考えどう答えるか悩んでいるのが隣に座ってる私にも伝わって来た。


「…分かりました。 挟間将軍補佐官殿をお言葉、必ず陛下にお伝えします。 そして貴方方とは友好を結べる様に最善を尽くします」


「忝い、感謝すると共に貴方のこの先の幸運を願わせて貰おう」


「ありがとうございます」


 2人はそう言うと椅子から立ち上がり互いに固く握手を交わした。 それを見て私は安堵しながらこの場に私が必要だったのか、と酷く疑問に思ったが口に出せる雰囲気では無かったので口には出さなかった。


 2人は互いに手を離すと椅子に再び座り直して其処で初めて出されていたお茶を飲んだ。 それを見て私もお茶を飲んだがそれは紅茶だった。 紅茶は詳しく無いがこれは美味しいと思った。


 ふと隣のアンドリュー殿を見るととても美味しそうに紅茶を飲んでるのを見て何だか私まで嬉しくなった。 


 紅茶を飲んで一息ついた所で再び挟間陸将補が口を開いた。


「所で我々がこの世界に来る切っ掛けとなった【裂け目】なのだが、秋山陸曹長からの報告では唐突に閉じてしまう可能性が示唆されていたのだがその辺は貴方はどう思われる」


「…そうですね。 私は其処まで魔法に精通して居る訳ではない、と言う事を先にお伝えしておきます」


「それは構わない。 そもそも私達の世界には魔法と言われるモノは一切ない故全く予想が出来ない。 故にアンドリュー殿の意見でも参考になるのです」


「分かりました。 【裂け目】が出来てから数年消えずに存在し続けてる、と言う点を考えると起点となった魔法の魔法陣に魔力が流れ続けてると考えられるかと。 で、あればですがその起点の魔法陣を破壊、或いは魔力を遮断しない限り【裂け目】が消える事は無いのでは無いかと」


「ではその魔法陣とやらあるとすれば何処かね?」


「恐らくですがルッツカード伯爵領の何処か。 可能性が高いのは領都にある伯爵の屋敷の地下、でしょうか? もしくは領内の魔力溜まり、かと」


「ふむ」


 アンドリュー殿の答えを聞いて挟間陸将補は腕を組んで考え込んだが直ぐにアンドリュー殿を見据えた。


「先程の話を踏まえてだが、我々の部隊がそのルッツカード伯爵領に調査に行く事は可能だろうか? と言うよりルッツカード伯爵領の位置は何処なのだろうか」


「ルッツカード伯爵領はこの元廃村からでしたらシュバッツェへを通り一度王都まで出ます。 シュバッツェから王都までは馬車で8日~10日程掛かります。 王都からルッツカード伯爵領へは南へ南下して行き馬車で20日から30日と言った所ですね。 それまでに大きめの街を3つ、中規模の町が6つ、村は8つ通りますが途中野営をしなければいけない区間もあります。


 気を付ける点は道中に魔獣や獣、それと山賊に盗賊に襲われる可能性もあります。 それで皆さんがルッツカード伯爵領へ行くとした場合は3つ、方法があると思います」


「3つも、ですか? それはどの様な?」


「はい、先ず一つ目ですが、これは私が陛下へ報告し友好関係が結べた後にルッツカード伯爵を調べていた部隊と共に皆さんが一緒に行く方法です。


2つ目と3つ目は方法は似ています。 要は所属する組織が違うと言うだけで。 2つ目は魔獣を専門に狩る人達が所属するハンターギルドに皆さんの内何人かが所属してルッツカード伯爵領へ行く方法。


3つ目は商人等旅人等の道中を護衛する傭兵ギルドに所属してルッツカード伯爵領へ行く方法です。 ですが、傭兵ギルドは戦争になれば召集を受ける場合もありますのであまりお勧めは出来ません」


「ふむ、要はクリフトニア王国の関係者と同行する方法と我々だけで行く場合はこの世界のいずれかの組織に属して行く方法。 と言う事で良いのかな?」


「はい、その通りです」


「ただどちらにもしても一長一短がありますのでどちらが良いとは言えませんが」


「それは理解しているよ。 むしろ両方の手段を使ってはいけないと言う決まりも無い訳だ」


「あぁ、成程。 ハンターギルド或いは傭兵ギルドに皆さんが所属して我々の部隊と共にルッツカード伯爵領へ行くと?」


「そう言う手段もあり得る、と言うだけだ。 だが一つ問題がある」


「と、言いますと?」


「この世界の言語を理解してるのが現状で秋山陸曹長のみ、と言う事だ」


「あっ!」


 挟間陸将補の指摘にアンドリュー殿は隣に座る私をガン見して来た。


「其処でアンドリュー殿には私から依頼したい事がある」


「お聞きします」


「貴方の仲間の2人の怪我が治るまでこの拠点に居る面子だけで良いので隣にいる秋山陸曹長と協力してこの世界の言葉を教えて欲しい。 当然報酬も用意する。 如何だろうか」


「報酬… ですか?」


「何か不服な点が?」


「い、いえ。 既に私も含めて私達3人は貴方方から私達からは想像も出来ない程の高度な医療行為を受けています。 更に朝昼晩共に非常に美味しい食事も頂いていますので。 其処に更に報酬を、と言われたモノで」


「ああ、治療とその後の対応に関しては何ら見返りは求めていません。 むしろ私達自衛隊と言う組織では当たり前の行為なのです。 それとは別としてお願いをするのですから報酬を用意するのは当たり前です」


「…そうなのですね。 分かりました、秋山殿が良いのであれば私は構いません」


「ありがとうございます。 と、言う事だが秋山陸曹長、君はやってくれるか?」


「私も構いません。 教えるのであればいくつかお願いしたい物があります」


「言ってみなさい」


「はっ、 一つは学校にあるサイズの黒板を一つ、それとチョークをソレなりの量を。 黒板消しも忘れずにお願いします。 後は拠点内の空いてるスペースに教室を一部屋作って頂ければ、と」


「確かに教室があった方が教えやすいか。 良いだろう、早速手配しよう」


「ありがとうございます」


 あっさりと私の申請を許可してくれた挟間陸将補にお礼を言って頭を下げた瞬間部屋に真田准陸尉が飛び込んで来た。 飛び込んで来た真田准陸尉は挟間陸将補に何事かを耳打ちすると挟間陸将補は驚いた表情を浮かべ私達2人を凝視して来た。 

誤字脱字がありましたらお気軽にご連絡ください。

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[気になる点] 令和の時代ですら黒板やチョークは、なくなりつつあるのに100年後の世界では貴重な存在になっているのでは?もっと別の媒体に置き換わっていると思います。近未来設定なので、翻訳AIが発達して…
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