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 プロローグ

 西暦2139年夏、それは日本の地方都市に突然現れた。 この世界とは全く異なる世界へと繋がってる時空の裂け目。 裂け目から時折現れる向こう側の生物は此方の世界の生物と姿形は似ているモノが多かったが大きさや凶暴さは比べるべくも無い程の凶暴さを有していた。


 裂け目が確認、監視を始めた当初は警察が行って居たが警察が有する火力では直ぐに対処出来ないと政府は理解し直ぐに陸上自衛隊がその任を引き継ぐ事となり、不測の事態に対応する為裂け目から半径5キロ圏内は一般人の立ち入りは禁止された。


 陸上自衛隊は裂け目を中心に強固な防御陣地を築き上げ裂け目から出て来る凶暴な異世界の生物へ重火器等で対応した。 中には重火器でも対応できない大物には戦車や自走砲、榴弾砲等で対応した。


 2140年、裂け目から出て来る生物に対処しているだけでは事態解決にはならないと政府は遂に重い腰を上げ裂け目の向こう側を調査する事を決定。 最初は無人偵察機を複数投入し裂け目の向こう側の調査を開始。 

 

 調査が進むにつれて分かったのは裂け目の向こう側の空気成分は現在の地球と大差が無かった。 また、送られて来た偵察機からの映像で向こう側は森の中に在る事が分かった。 また航空ドローンを性能限界まで上昇させ周囲を確認すると裂け目は雄大な山脈の麓に有り広大な密林が遥か先まで確認出来た。


 が、映像解析班からの報告で調査は一時中断された。 ドローンからの映像解析で密林の広さは約60キロから80キロ以上とされその向こうには平野部が確認されたがその平野部に城郭都市らしきものが確認されたからだ。 未知の知的生命体との接触の可能性に政府も慎重になった。 議会は紛糾したが最終的には高性能望遠レンズ付き航空ドローンを飛ばして調査を続けると言う無難なモノになった。


 結果は密林の外縁部から凡そ5キロから10キロ程離れた位置に城郭都市が確認された。 映像分析の結果城壁の高さは約6~10m、都市の規模は地球側の常識で凡そ3~5万人が生活してると推測された。 また都市の周辺には各種作物を育ててる畑も確認されその事実から中世ヨーロッパ程度の文明レベルを有してるであろう事も確認された。


 そうなると荒れるのは議会だ。 議会の大半を占めるのは不要な現地民との接触は避けて今まで通り裂け目から出て来る生物の対処で済ますと言う常識的に考えて真面な意見。 反対に裂け目の向こうに行き裂け目が出来た原因を探り裂け目を消滅させる方法を探すべきだと言う意見に分かれた。


 議会の結論が出ない間も地上と空からの無人偵察ドローンによる調査は続けられ航空ドローンが密林の中に400人から500人規模の集落を新たに発見した。 集落は密林の外縁部側から凡そ20キロ程密林に入った場所で、裂け目から直線距離で凡そ40~50キロ程の場所にあった。 今まで発見出来なかったのはその集落が密林に存在する小高い山の陰に隠れていた為だった。


 集落は木製の塀を3重に設置しており密林の生物に対して備えてるのが映像からも容易に想像出来た。 また集落は近くの川から水を引いており飲み水や農場用水はしっかりと確保してるのも映像から確認された。 が、集落を撮影していた航空ドローンが恐らく弓矢で撃墜された映像で終わった事に現場は驚かされた。


 2141年、政府はついに裂け目の向こう側の有人調査へと踏み切る決断をした。 それに伴い調査を行う為の特殊部隊の設立も決まった。 約1年半にも及ぶ無人機からのデータで裂け目を中心とした周囲の地形の把握と夜空に浮かぶ星々の大まかな位置関係の割り出しも終わっていた。 


 尤も特殊部隊と言っても裂け目の防衛に当たって居た部隊がそのまま特殊部隊として正式に承認され人員もそれに伴い増員されただけではあった。 先ず行われたのは裂け目の向こう側にセーフティゾーンの確保だった。 重火器で武装した隊員に護衛され施設科隊員が陣地の構築を進めつつ通信科と情報科が協力し各種連絡網の構築を行った。 陣地構築が終わると普通科、特科、航空科、通信科、情報科、施設科、武器科、化学科、衛生科、会計科の各種隊員が駐屯し裂け目の向こう側と此方側で交代勤務を始めた。


 次に行われたのが航空科が有する無人大型偵察ヘリコプターによる高高度偵察だった。 それによってより正確な情報を得る事が可能となり密林の外縁部まで84キロ、密林の集落まで48キロと特定された。 更に山脈の山頂は7840mである事も判明した。 ただこの山脈の調査で偵察ヘリ1機が大型の鳥類の群れの攻撃により撃墜された為山脈の調査は一旦打ち切られる事となった。


 次いで行われたのは文明圏の調査で同じく偵察ヘリの高高度から行われた。 密林の外縁部の城郭都市は事前の推測通り凡そ4万人規模と判明。城郭は2重で中心部に大きめな屋敷が立ち並びその外側に家屋が密集しており外側の城壁付近に多少の畑も確認された。 城郭都市には密林から続く川から水が引かれており水は十分確保されてるのも確認された。


 それ以外にも偵察ヘリの長大な航続距離を生かして城郭都市周辺を探ると城壁都市の周囲に8つの農村が確認された。 更に城郭都市から西へ350キロ程航続距離ギリギリの位置に第2の城郭都市が確認され規模から6万人程と推測された。 また城郭都市と城郭都市を結んでる街道を移動する集団も確認されたがその移動手段は大半が馬車で極わずかだが徒歩で移動してる人々も確認された。


 これまでの調査により文明レベルは中世ヨーロッパ程度であると裏付けが取れ、政治体系は王政であると予測された。 が此処で現地民と接触するのに大きな問題となったのが裂け目の位置から外縁部までの距離と密林に生息する生物達の脅威であった。 それ以上に問題視されたのが現地人とのコミュニケーション、言語であった。 意思疎通が出来なければ裂け目を閉じる為の情報収集すら出来ない事は容易に想像出来上層部を悩ませた。


 どうするべきか決まらないまま周囲偵察を続けてる時城郭都市から見て北側の6キロ地点、密林外縁部から800m程離れた位置に破棄された廃村が発見された。 そこで上層部は夜間に航空科の多用途ヘリUH-90SPJを4機利用し物資を2週間掛け輸送、その後施設科と普通科隊員を送り込み廃村を前線拠点へと改築した。 


 壊れていた村を囲む塀は最新軽量複合合金板を通常の木材で挟み見た目を誤魔化しつつ強度を上げ仕上げた。 当然ながら基礎は鉄筋コンクリート造でだ。 更に塀の内側には塀を一周出来る様にしっかりとした足場も設置され密林側に向けて12.7mm重機関銃を4基設置された。 またそれに伴い裂け目に築かれた駐屯地のコードネームは《ホワイトベース》、廃村跡地に築かれた前線拠点は《ファースト》となった。 


 廃村の拠点化は現地の人にバレない様に慎重に行われた為3か月ほどかかった。 各種電気機器を動かす為の動力は太陽光発電と小型風力発電機を蓄電池設備に繋げる事で確保。 水は廃村に残ってた4つの井戸が生きており再整備を行って確保された。 また拠点にした廃村の塀内にも畑の跡地があった為こちらも再整備され地球産の野菜が育つか需品科隊員を中心した農業経験者が当たる事となった。


 また廃村に残ってた家を調べた結果鉄製の釘では無く青銅製の釘が使われてる事が判明。 その結果文明レベルは青銅器時代なのでは? との声も出たが場所が場所故判断するのは時期尚早となった。 拠点化に伴い家も順次建て直されたが基礎こそコンクリート造りとされたがこの世界に合わせた木造建築(地球基準)にされた。 当然その為隙間風や雨漏れとは無縁の快適な家となってる。 窓には透明度が低い低品質のガラスが使われていた事もあり窓には防弾ガラスに目隠しフィルムを張る事で誤魔化して使われた。


 廃村の畑で最初に栽培されたのはジャガイモ、ニンジン、キャベツ、タマネギ、ダイコン、ピーマン、キュウリ、テンサイ、カボチャ、小麦、大豆、各種ハーブ、コショウ、陸稲で米も行われた。 当然の事ながら拠点に配属された需品科隊員と手伝ってた隊員だけでは直ぐに手が回らず配属された隊員が全員で直ぐに農作業に従事するはめになった。 しかもちゃんとした知識等無い為地球から各種資料を送って貰い試行錯誤をしながらである為作物のいくつかは枯れてしまったモノもあったが大体は順調に育ち始めた頃事件が起きた。


 塀の上で密林を監視していた普通科の隊員が密林から4人組が出て来て拠点に気付き向かって来たのだ。 隊員は直ぐに拠点の責任者の2等陸佐へ連絡。 連絡を受けた陸佐は直ぐに塀へ急行し双眼鏡で4人組を確認。 そこで陸佐は舌打ちをした。 双眼鏡で確認した4人組の内1人は重症で残り3人もなにがしかの怪我をしてるのが双眼鏡越しでも確認出来たからだ。


 陸佐は直ぐにホワイトベースに連絡を入れて指示を仰いだがホワイトベースも連絡を受けて騒然となった。 がホワイトベースに偶々視察で来ていた陸将補が怪我人受け入れを指示した。 ただし、過度な治療はせずに応急手当に留める様に、と。 その指示に顔を顰める者も居たが陸将補がオーバーテクノロジー的な治療を施せば現地民にどの様に受け止められるか分からない上、更に言葉も分からなければそのまま城郭都市から攻撃を受けるかもしれないと説明すると一応は納得された。


 その指示を聞いたファーストの指揮官の陸佐は直ぐに拠点の全隊員に無線で連絡した。 拠点に配置されてる隊員は度重なる偵察で判明していた農村部の住民に衣服に似た服装に変装している。 その中で普通科隊員の中で格闘技に優れた数名が裂け目から出て来た生物の革から作った胸当てと小手を装備しており日本で作られた青銅製の槍と剣を装備して門に配置に付いた。 また塀の上にはこれまた日本で作られた弓矢を装備した2人が門扉近くの塀の橋場に左右に配置に付き近づいて来る4人組を監視した。


 それ以外の隊員は農民の恰好の上から革鎧を着こみ小銃や拳銃を手に家の中で息を潜めた。 戦闘技術の低い者は拠点に地下に築かれた秘密指揮所に併設された避難所へと非難した。 そして指揮所に送られて来る監視カメラから映像を見てる隊員達はこの世界でのファーストコンタクトの瞬間を固唾を吞んで見守った。

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