べこ
『ちっちゃいベコ、子牛』
「何歳位?」
『生まれて、何カ月』
『それを売りに出すんだから。ちょっと大きくなると』
「え、そうなの? だって労働力として使わないの? なんか土肥やしたりみたいな」
『それは草をあげる』
『どっかの自分ちの土地の草を刈って食べさす』
「その子牛については、肉にしちゃうってこと?」
『いやいやいや、また次の働くところにするか』
『肉にする場合もあるわね』
『私だから牛の世話もできる』
「当時はどんなことやってたの?」
『まあでもあんまり、お母さんはね手綱で叩きながらしてたけど』
『私は、それはできない。ただ餌をやるぐらいだね』
『あのフンをきれいにしたりとか』
「やったことある?」
『あるある』
『なのでうち牛飼ってて、種付けして生まれた子を売るのね』
「マジで?」
『売ってたの。で、行くときね』
『この、何で行ったのか知らないけど泣けてね』
『かわいそうでかわいがってたの売るのだもの、親は』
『その売るためにまた産ませているんだから。うち何頭もいらないし、一頭いりゃいんだから』
「え、でも一頭だとオスメスたりなくない?」
『だからオスをよそから借りてきて、交尾させて産ませて、だから借りる』
『オスの牛を借りてきてメスと交尾させて子供産んだら、その子供を育てて金になるわけよ』
「子供がオスだった場合ダメなの?」
『オスでもいいよ何でもいい』
『オスだったら肉にされると思う』
「そうなの? それでオスメスで交配とかしてまた増やす、ではなくて?」
『それはもうちゃんとしたオスはどこかに借りることできるから、メス一頭でよい』
『ちっちゃいときに子犬みたいなとき』
『ちょっと大きめの犬みたいなもんで、なついてくんだよね』
『ずっと世話してると可愛かったよ』
『それが売られて金の元だからね』
「どれぐらいで当時売られてたの?」
『わからない。私子供だし金額はわからない』
「当日は小学生とか中学生くらい?」
『そうそうそうそう、小学生くらい』