宿泊
「なるほどね。でもどうしても行きたいんだったら」
「うちは何か荷物、馬車のとかで王都のところで納品するところがあるんだけど」
「そこにはちょっと紛れて入れば、まあザルだから通れるよ」
偽装の嘘は使わず、入る選択を考えて捻りだした。これなら拒否れまい。
『それだったら入る!』
『まぎれて入れるんだったら嘘つかない、ついてないじゃん。ただ隠れてるだけ』
嘘はダメで、隠れるのはOKなのか。判断基準が面白い。
「村の運ぶ人の、1人のワーカーというか荷下ろしする人っていう状況であれば」
『入れてくれるならそれに乗せてもらって』
「もちろん村人の主導する人は証明するんだけど、その従者については身を明かさなくても通れます」
「それをやるためには3日後だから、どうする?」
『3日お世話になる。私そこでお手伝いして、何でもします』
今、何でもするって言ったよね?
「やれることはやる」
「ちなみになんかやれそうなことは?」
『何でもできるね、農家だったら』
「今まで持っている記憶とか経験の中で、役に立てそうな技術とか知識とか」
『まあの、ようす・・縫物? 洋裁、和裁、編み物、料理、美容師・・・』
『運転』
「運転!? 運転はないな、車ないから」
『あ、そうか。ないわ』
「文明が牛車レベルだから」
『牛の世話もできます』
「あ、そうなの。けっこうできる?」
『あたし結構べこ、牛のこどもいるじゃん』
『あれね、家の庭の裏手に出ると遊んでたもんね、それなでてたけど』
『あの大きいはダメ!』
「ああそうなの?」
『ツノ振るから』
「ちっちゃいやつ?」
べこって…。吉幾三の、べこ飼うだぁぇ♪ を思い出した。
普段聞かない言葉だ。広島で実際に飼っていたからこそ、自然と出てくるのだろう。