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1.おはよう、世界。
――遠くのほうで沢山の知っている声と低く唸るような音、そして近くで、何かをカウントする機械音声が聴こえる気がする。
『……30%……』
どうして、どうしてなの
おちつけって
トラックなんて通っちゃ駄目なところだったのに!
なんで
『……35%……』
居眠り運転だったって
可哀想
『……40%……』
植物人間ってことですか
もう目覚めないなんて、そんなこと、
『……55%……』
まだ方法がある
『……63%……』
お願いよタイガ、あなたの弟なのよ
現代医学では無理だ、だけど……
『……70%……』
俺ができるのはここまでだ、
出来れば生きてる間にもう一度お前と喋りたかったよ
『80%……90%……97、98、99。――起動成功しました』
『おはようございます、トラジ。』
「おはよう、『トラジ』?」
初めて聞く声に目を開けると、天使が俺の顔を覗き込んでいた。