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Aが部屋に残したのは3個のマグカップでした。
それ以外は全て部屋の外に出すよう、Aが強い拒絶反応を示したために片付けられました。
白い床に並べられたマグカップは大人用が2個と子供用が1個で、
Aは医師から「それぞれに好きなだけの水を注いでみなさい」と指定されたため、
最初の大人用のマグカップには半分だけ、2個目の大人用のマグカップには1/4ぐらいだけ注ぎました。
そして最後の子供用のマグカップを前にすると、Aは勢いよく水を注ぎ始めました。
次第にマグカップが水でいっぱいになるのをAはじっと見つめながらも、決して水を止めようとはしません。
やがて水はマグカップから溢れ、白い床に座るAの膝を濡らしました。
水はいくらでも注ぐことができますが、医師はこれ以上続けることはAにとって苦痛になると判断し、
Aに水を注ぐのをやめさせました。
医師はAに尋ねました。
「最初のマグカップは誰のものかな?」
Aは「私のです」と答えました。
次に医師は、
「2番目のマグカップは誰のものかな?」と尋ねました。
Aは「夫のです」と答えました。
最後に医師は、
「3番目のマグカップは誰のものかな?」と尋ねました。
Aは「息子のです」と答えました。