ep.39 gwysio hud _ 強制連行 _
ガタリ、典が勢い良く反応した拍子に、驚いたのか足元にいたフリューがぴゃっと飛び上がる。
「言ったわよ、私の適性は“召喚魔法”ってね」
しかし二人が何か話す前に、順番に教えてあげるから座りなさい、と促されてしまう。おとなしく席につけば、また彼女は口を開き始めた。
「その前に、自己紹介でもしておこうかしら。私は……曽枝 愛香。ここではメイで通してるから、そう呼んでね」
「鷺鳥 典、偽名はトリテン。んでコイツはー……」
「安功 恭行、筋肉いっぱいのとこで呼ばれてたのはヤスジ」
二人の紹介を聞けば、メイはうんうんと頷き本題へ移ることだろう。
「“落とし者”っていうのはね、この世界の生き物として定義し直された人たちのことなの。異世界からやって来ただけ、それだけじゃ魔法は扱えない」
「……世界が違けりゃ身体的な特徴や構造も違うから、か」
「そう! その通りよ。典くん、恭行くんは多分、落とし者というよりは“忘れ者”ね、定義し直されたわけじゃなさそうだもの」
「――――……………………、」
「あら、固まっちゃった?」
「あれ、典??」
「ッッッ俺の!!!!!」
す、と静かに恭行の拳が構えられ……
「ウキウキワクワクファンタジー生活はぁげふいってぇ!!?!?!!!?!!」
一撃。
「ごめんなさい、(典が)うるさくして」
「それは平気だけど、彼、今のですっかり沈んじゃったわね? この子も驚いちゃったみたい」
「あ、真っ白ってやつだ? 燃え尽きたな……」
それからまた少し経ち。
典が意識と気力を取り戻してから、また三人と一匹、軽い食事を交えながらに話を戻す。
「まぁ……でも、二人をここへ連れてきた神様がもしかしたら定義のし直しはしているかもしれないから。一応、調べてみましょうか!」
「調べられるのか!?」
「幸いにも、この町の魔術と魔導具の技術は、他のところよりもかなり進んでててね」
ばちこん、とウィンクをかましながらにメイが言うには、この街にある学舎施設へ行けば良いとのこと。そこにある魔導具がその者の適性や種族、死なずに生き続けた場合の寿命を教えてくれるのだそう。
なんでも、数百年前からこの町に住み着いている人外種と、長命種によるものらしいが……同等の設備がある場所は少ないとのこと。
「あとで、って、あら?」
説明を続けるメイの元へ、窓の外からふわり。光を放つ青い鳥のようなものが飛んでくる。それは彼女の眼前で一瞬、縮こまるような動作をして止まり、ぱちんと弾けるようにその姿をたくさんの糸へと解けさせていった。
瞬く間にその糸がするりするりと姿を変えて、ぐにぐねと文字のようなうねりとなって……最後には、彼女がそれを読み終えたと同時に空気中へ溶け消える。
そんな、はじめて見る不思議な現象に興味津々といった男児二人の視線を受ければ、メイはくすりとひとつ微笑んで。
「どうやら、襲撃されているそうよ? 海のほうで、魔獣との戦闘が起きてるみたい」
「襲撃、って、大丈夫なの?」
「オイオイここまで来て早々かよ……!!」
「大丈夫よ! そうね~ちょっと見学でもしに行きましょうか。私の魔法を応用すれば、今すぐ転移することもできるからね」
「は?」「え?」
「なーに興味ないの? 小説なんかで書かれるより地味かもだけど、結構キレイなのよ、魔術を使った戦いって」
「違う違う興味はアリアリだ滅茶苦茶行きてぇけどそうじゃねえんだ危なくねぇの!!?!? 襲撃だろ!!?!!!?」
隣でフリューを抱え上げて、いつでも逃げ出せるようにと準備をしていた恭行も、真剣な表情でメイを見る。
「心配ないない、平気平気! 見学と言っても、少し離れたところへ移動するだけよ。それに、今前線に出てる人は、街にも周辺にも被害は一切出さない人だから」
そのままメイは片手を緩く掲げ上げる。まるで指揮者のように、緩やかながらに素早い動きで。
追従するように薄桃色に紫の混じった光の粒が現れ、巻き上がり、幻想的な光景を形作る。
すっかり見惚れてしまっている恭行、光へ戯れたいのかピキキ、キュウ、と鳴いて目を輝かせるフリューと、なにやら情けない言葉を立て続けに吐き散らかして喚いている典をよそに――
――魔法が、放たれた。
tips-『魔法』
それ即ち『奇跡』の力。この世界に生まれたものなら、誰しもが必ず一つは『適性魔法』を有している。更に、種族によってはその種族特有の『固有魔法』を持つ場合もある。
更に詳しく記載するなら、『魔法』は自らの体内を巡る『魔力』を元に想像力を用いて、常識や法則を度外視した超常現象を引き起こすものである。『魔法』の効果を想像し、それを『魔力』で以て世界へ干渉するため、この力を扱う際に詠唱などは必要ない。




