7話
『これからは友達としてよろしく』
『うん!よろしくね』
自分でも不思議な気持ちだ。まさか暇潰しにしていたチャットで友達を作ってしまうとは。
文字だけのやり取り故に、画面の向こう側で彼女が泣いている事も知らない光牙。
『竹内さんに出会えて良かった。ありがとう』
『こっちこそ』
出会えて良かったと、そう思っているのは自分も同じだ。現実での嫌な事も彼女と話せるなら吹き飛んでしまいそうだと思った。
そこから二人は毎日のようにチャットでその日の出来事を話すようになる。少しずつだが確実にお互いの中で気持ちに変化が起きていた。
『竹内さん、今日もお疲れ様』
『おう。ミクさんもお疲れ様』
こんな他愛もないやり取りも、もう何度目だろう。彼女がスマホの中に居る事が当然になっていて、その日々がこれからも続いていくんだと疑う事も無かった。
そして光牙の中に一つの変化が…段々彼女の声を聞いてみたいと思うようになってきたのだ。だがそれを言ってしまったら『何も求めない』と彼女を安心させたくて打った文字が嘘になる。
『竹内さん、私…突然だけどチャットを辞めようと思ってるの…』
『!?』
頭を鈍器で殴られたかのような衝撃。スマホの画面を何度も見返してはこれが現実に起きている事なんだと実感する。
『俺、何か気に触るような事したか?』
『ううん…竹内さんは何も悪くない。このアプリに愛想が尽きたの…』
『…来るのか?また変なメッセージが』
『うん…無視しようとは思ってた…。段々エスカレートしてきたからブロックしたんだけど次から次へと…ごめんね…疲れちゃった…。分かってた事だけど皆が皆、竹内さんのように優しい人ばかりじゃないね…』
『……なら、連絡先交換しないか』
『え?』
『俺、このままミクさんと話せなくなるのは嫌っつーか…上手く言えねーけど…ごめん。引き止める資格も俺にはねーよな…』
『竹内さん…』
もう二度と、彼女からのメッセージが届かなくなるのか。誰かと話す事の嬉しさ、楽しさ、全て君が教えてくれたのに。
彼女にとって自分はどういう存在だったんだろうか。少なくとも俺にとって君は日常を明るくしてくれる太陽のような存在だ。
君の事もっと知りたかった。君の声を聞いてみたかった。
そうか…俺…君に恋してんだな…
君を失う直前に自覚した…