001~覚醒3秒カッター~
チートファンタジーものを書き溜めていたらHDDごとデータが吹っ飛ぶというハプニングに見舞われ、しばらく不貞腐れてました。
創作意欲回復のために、リハビリで別のものを書いてみようかと思います。
向こうは気が向いたらまた書き直すつもりです。
ここが所謂乙女ゲームの世界だということを思い出したのは、母親の斬殺体が転がる中、妹が賊に攫われそうになっているのを発見した時だ。
確かこれは妹であるヒロインの幼少期イベントで、ヒロインの愛らしくも珍しい容姿に目を付けた奴隷商人が、悪人を雇って襲わせるというものだ。
記憶と少し違うのは、俺…ヒロインに双子の兄がいることと、俺が妹の代わりに買い物に出ていたため、目の前で母親を惨殺されたショックで妹が気絶していることだ。
本来ヒロインは一人っ子で、買い物もヒロインが行っていた。だから帰宅早々攫われそうになるため意識は失っていないし、そのおかげで攫われる途中で逃げ出すことができたはずだ。
だけど今の妹は完全無防備。簡単に攫われてしまうだろう。実際に賊は妹を小脇に抱えて家を出ようとしている最中だった。
勿論そのまま攫わせるわけがない。
ということでサクっと殺ってみた。子供の俺が魔法を使うとは思わなかったのだろう、油断しきっていた賊の頭を、風魔法の刃で吹っ飛ばしてやった。
ぽかんとした表情のまま、賊の頭が転がっていくのを尻目に、賊の胴体と一緒に倒れそうになる妹を素早くキャッチする。
ふむ。思った以上に良い切れ味だ。
そう、この世界は剣と魔法のファンタジー世界であるため、魔法が使えるのだ。
前世の記憶を思い出す直前まで魔法なんて使えなかったが、ゲーム内で魔法の設定を詳しく描写したシーンがあったのを思い出し、それを強くイメージしてみた。
結果、あっさりと魔法の行使に成功したというわけだ。ぶっつけ本番だったから不安だったが、なんとかなるものだな。
前世の記憶のおかげで精神が成熟したこともあるのだろう。
幼い子供には魔法を行使するだけの精神が育ってない、みたいな設定もあった気がする。
人を殺したのは前世を含んでも初めてのことだったが、罪悪感は無かった。
妹に手を出す悪は死すべし、慈悲はない。
俺にとって妹は、物語のヒロインである前に大事な魂の片割れだ。それを傷つけようとする奴を排除したところで何とも思わない。
世界観的にも、賊を殺すのは正当防衛として認められる。だったら気にする必要は無いだろう。
そもそもこの賊はイベントで結局死ぬ予定だったんだし、それが十数分遅いか早いかの違いだ。
苦しまずに死ねただけありがたいと思ってほしい。
気絶したままの妹を抱えて、いつもお世話になってる近くの教会に助けを求めた。
俺も妹も賊の返り血で真っ赤になったまま来たので、シスターがそれを見た瞬間真っ青になっていたのはちょっと申し訳なかったと思う。
母親が殺されたこと、妹が攫われそうになったことはそのまま伝えたが、賊の頭が吹っ飛んだ件に関しては適当に第三者の存在をでっち上げたりしてごまかした。
現場を調べにきた憲兵は俺たちが賊を殺したのではと疑っていたけど、俺たちは5歳の子供で、この歳で魔法を習得している者はまず居ないし、人を殺すような子たちではないとシスターが力強く証言してくれたりして、なんやかんやで信じてもらえた。
別に俺が殺したと正直に話したところで捕まるわけではない。
でもこの歳で魔法が使えることや人を殺すことに躊躇いがないことがバレると、色々と面倒なことになる。
多分、軍とかに引き抜かれたりするんじゃないだろうか。そうなると、妹と離れ離れになってしまう。それだけは避けたかった。
それに、後になって分かったことだけど、妹はあの事件と、事情を聞きに来た憲兵の男が粗暴だったのとで色々トラウマになったみたいで、男…特に大人の男に怯えるようになってしまった。
双子の俺ですら男ということで少し怯える素振りを見せる始末。
そんな中で、妹を助けるためとはいえ俺が賊を殺したと知ったら、恐怖の対象として見られてしまうことは確実だろう。
そんな目で見られたら二度と立ち直れない。
俺の本性や実力は、妹に絶対に悟られないようにしようと誓ったのだった。
サイコ系ギャグを目指してます。