女装男子と男装女子と幽霊退治
結構テキトーに書いたし、いつにも増して地の文少な目です。
診断メーカーの「小説のお題決めったー」から、「soryiは『背が高い人と家政婦がボロアパートでぶっとばすお話』を書いてください。 」というお題で書いたものです。
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「旦那様、ご報告に参りました」
屋敷の主である、もやしっ子を体現したような細身の青年の元に、女の子らしい可愛い声が届く。
「どうぞ、ネスカちゃん」
「失礼します」
ドアを開き、ネスカと呼ばれた少女が入ってくる。
その少女は野暮ったい家政婦の制服を纏い、極限まで露出を減らした格好をしている。
「もう、だから旦那様は恥ずかしいから止めて」
「失礼しました、旦那様。この屋敷には幽霊が住んでいると噂になり、雇われてくれる相手が少なくなって参りました。どう致しますか?」
「へえ、そうなんだ。幽霊なんて実在するのかな? …ネスカちゃんはどうするの?」
「当然、働き続けますが。」
「ならいいや。ネスカちゃんだけでも屋敷の事を全部処理出来るでしょ?」
「それは…、確かにそうですが…。」
「なら、放置でオッケーだよ」
「そうですか。では、旦那様。私はこれで失礼させていただきます」
「そっか。頑張ってね」
「はぁ…。悪霊には自分が霊である自覚無し、と。面倒だなぁ…。ネーゼが来るまでこれを続けるのもキツいしなあ」
「ディン、呼んだかい?」
スタッ、と降り立ったのは、天井に付きそうなぐらい高い身長の青年。
「きゃっ!?」
「女の子っぽい悲鳴だねぇ…」
少女の悲鳴に呆れた声を漏らし、尻餅を付き掛けた少女を支える。
「むー。ネーゼ、遅れるはずじゃなかったの?」
「愛しいディンに会いたくて頑張ったからね」
家政婦は頬を染め、可愛らしく微笑んだ。
***
「霊はあの世で大人しくしてなさい!」
「ぐっ、僕は、死んでない!幽霊なんかじゃ、無いんだ!」
自分に言い聞かせるように叫ぶ青年…もとい、幽霊。
「まったく、往生際が悪いねぇ。」
すちゃっ、とネーゼと呼ばれる者がナニカを構える。
「…ハリセン?」
「幽霊なんかに良く効く武器だよ」
「…その形状、気が抜けるよねー」
-パァン-
ハリセンで頭を叩かれ、霊はあっさりと成仏していった。
「はあ、やれやれ」
「君も男だって主張すれば良いのに。なんで女装を解きもしないのさ」
「ずっと青年な姿で過ごした女性には言われたくありませんね」
ふわりと少女の殻を脱ぎ捨て、女顔の少年に変じた家政婦。
ぱさりと青年の殻を脱ぎ捨て、凛々しい女性に変じたネーゼと呼ばれる青年。
少女改めディーネスカ=エスレランはれっきとした16歳の青年である。ただ、声やら身長やら趣味やら口調やらで頻繁に女に間違われるが、ちゃんとした男である。
自身の見た目を利用して女性として潜入し霊退治する事ウン十回。
ディーネスカの変装を見抜き彼が男だと気付いたのはたった1人、カルティネーゼだけである。
青年改めカルティネーゼ=レスレディンも、男にしか見えない女性である。胸が無い訳でも無いのだが、口調と性格と身長に騙され惚れる女性がかなり多いらしい。
彼女を女性だと見抜いたのはディーネスカだけである。ネスカが気付いたのは自分も性別詐称な装いを繰り返しているからだそうだ。
そんな2人が恋人になるのは自然な成り行きであった。
言動もアレなせいで素でイチャついてても性別を逆に間違われるらしいが。
「さ、帰ろうか」
「ええ、そうですね」
END
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ミニ設定
ネスカがキツいと言っていたのは幻影魔術。ボロアパートを幽霊が生きていた頃の姿――それなりの大きさの貴族の屋敷に見えるようにしていた。
ネスカの女の子みたいな可愛い声はほぼ素。多少意識して話してはいるが、素でも女の子な声なのは変わらない。
カル(ネーゼ)の声は中性的。女性でも男性でもおかしくない性別が曖昧な声。女性らしくない口調と、身に纏う服に女性らしさが欠片も無いのが原因で男性扱いされているのが常。
ヒトの危機に居合わせたらすぐさま助けに入る。尚、助けられたのが女性の場合ほぼカルに惚れ、ネスカとのイチャイチャを見て「こんな可愛らしいカノジョが居るなら…」と泣く泣く諦める→ストーカー化or便利な親衛隊化する、か、「カル様には貴女のようなカノジョは相応しく無いですわ!」と突撃→ばっちり女性扱いされてるのにネスカが「またかー」と遠い目になる→怒ったカルが精神的に叩きのめす、となるかのどっちか。
話の流れ
モヤシとネスカのやりとり(実はあんまり意味が無い)→カルとネスカのやりとり(微妙にイチャ?)→実は幽霊だったモヤシとカルとネスカのやりとり(カルのボケとネスカの黄昏)→キーワード回収のための説明(カップルなのは初期案からだけど)→おまけでミニ設定、以上。