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聖女は新たな道を歩き出す

「私にこのパーティーを抜けろと言うことですか?」


「ああ、君は聖女としてアンナに遥かに劣るからな、回復も並だし、攻撃も出来ないだろう? ここら辺で辞めた方がいい」


 黒髪の男、勇者トオルが銀の髪の女、聖女ルルにそう宣告した。


「一応聞いておきますが、聖女はあくまでも私であり、アンナさんは僧侶でしかありませんが、それでも構わないのですか?」


「構わない、ほら手切れ金と装備もそのまま持って行って良い、それじゃ」


「はいお疲れ様でした」


 そう言って、聖女ルルは勇者パーティーを離れ、来た道を引き返して行く。


「ふぅ…これでようやく勇者の旅も終わりかぁ、アンナさんには感謝だよね、彼女が私を蹴落とそうとしてくれなかったらパーティーを抜けることは出来なかったもんね」


 ありがたや、ありがたやとルルは手を合わせ祈りを捧げた。

 面倒な役割は此処で終わりだ。

 これからは自由に過ごさせてもらおう、幸い神聖国とはかなり離れてるし、いっそ死んだと思って貰えると助かるなぁなどとルルは考えていた。


 それから人並みにお洒落とかしたいし、美味しい食べ物をたくさん食べたいなぁ。

 教会のご飯はまずいし、勇者達の時だって食べたい物も食べられなかったし、いっつもローブ着てたから…まぁこれは体のラインを隠す為でもあったから仕方ないんだけどね…。



 そしてルルの行方が分からなくなってから1ヶ月、勇者達は既に勇者では無くなっていた。


「何故国王は俺との謁見を拒否するんだ! 前に来た時は歓迎してくれたじゃないか!」


「だからそれは聖女様が居たからだって何度も言ってんだろうが! 聖女様が居ない以上、お前らは勇者でも何でもないんだよ!」


「聖女なら聖女アンナが此処にいる! ルルなんかより余程聖女に相応しいだろう!」


「はぁ? その女が聖女? ふざけんのも大概にしろよ? この世で聖女はたった1人、ルル様だけだ! 消えろ! これ以上職務の邪魔をするようなら逮捕するからな!」


 その一言で、それはまずいとトオル達は一旦引き下がることにした。

 そして仲間の1人、魔法使いのミストが沈んだ表情で話し出した。


「…もう無理よ…私このパーティー抜けるわ、トオルならもしかしたらと思ったけど……やっぱりルルが居ないと誰も認めてくれないのが良くわかったし、落ち目なこのパーティーにはもう居る意味が無いし」


「おい! 俺らはこれからだろう! これから魔族や魔王を倒していくんじゃないか!」


「どうやって? 国も誰ももう支援してくれないのに? たった3人でどうやるのよ!?」


 ミストはキレる。

 勇者というものは確かに1人で凄い戦闘力を持つ、しかしあくまでも人間の範疇を超えることはない。

 対して魔族は単体で恐るべき戦闘力がある上に、魔物を使役してくるのだ。

 そんな相手を国の支援なしで3人で倒す…そんな事当然無理に決まっていて、ミストがキレるのも当然の事だった。


「それにアンナはもう逃げたわよ、見なさいどこにも居ないから」


 トオルは慌てて周りを見回すが、ミストの行った通りすでにアンナは姿を消していた。

 その事にトオルは放心し地面に膝をつく。


「何故だ…何故こうなった…俺は何の為に地球から……」


 そんなトオルの様子を見て、ミストはもう用は無いとばかりにその場を立ち去った。


「これから俺はどうすれば…元の世界にも帰れない、英雄への道も閉ざされた、仲間も居なくなった、俺は…全てを失ったのか……」


 トオルは目を虚ろにし、ふらふらとした足取りで歩き出した。

 もう取り返しの付かない過去を振り返りながら。




 一方ルルは、ルーと名前を変えて冒険者ギルドの医務室で回復士として働いていた。

 勤務時間は9時から17時まで、残業は一切無しで、月金貨2枚という条件の良い仕事だ。


 ルルは何も知らない、勇者パーティーが崩壊した事も、これから起きる様々な事も。



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