0話 プロローグ
「・・・ふが」
目が覚めたら、空中に浮かんでおりました。浮かんでいると言っても、何故か足は空中にしっかりついているんだが。俺、随分とファンタジックな夢を見るじゃないか。
かなり高いところに浮かんでいるようで、眼下に山やら川やら森やらが、地平線まで広がっている。
その地平線に丁度夕陽が沈んでいくところだった。夕焼けの光が雲を真っ赤に染めていて、後ろを振り向けば、徐々に蒼く染まり始めた夜空に、星が瞬き初めていて、とても美しい。
俺は元々、空を見上げるのが好きだった。星空も青空も好きだし、夕焼けも、嵐の後にとても早いスピードで飛んでいく雲も好きだ。
そして今みている景色は、空の景色を邪魔するビルや電柱なんてものは一切ない、本当に夢見るような光景だ。パノラマ写真とりてぇ
「なかなかいい景色でしょ」
そうやってワクワクしながら星を見ていると、背中から声をかけられた。
なんというか、若い女性の声だ。少女と言ってもいいくらいの。
振り向くと、驚いた。髪の長い女の子が、アンティーク調の真っ白な椅子に座っていた。
異様なのは、髪の毛の長さだ。髪の毛はとても長く、椅子の脚まで垂れ下がっていた。髪の色は銀色で、輝いている。
服装も変わっていて、真っ白な大きな布を1枚羽織っているだけのようだ。
「な、なんすか!!?」
「なんすかって、まぁちょっとね。キミに用があってさ」
そういって、彼女は長い髪を耳に向かってかきあげた。長い髪は鬱陶しいからなぁ。わかるよ。
「実は1つ、ワガママを聞いて欲しくてさ」
白い髪の少女はニヤリと笑った。ゲスい笑顔だ。
「キミの記憶を奪った」
……は?
………なんだって?
記憶を奪った?
「自分が何者なのか、どこから来たのか、思い出せないハズだ。ぼやっとしたイメージしかできないだろ? そのほうが色々と都合が良くてね」
確かに思い出せない、自分の名前や、家族の名前。通っていた学校や、直前まで何をしてたのかすら思い出せない。
まるで、ここに来るまでの出来事が夢だったかのような、靄がかかったようなイメージになってしまっている。こわっ!
この少女から漂う、尋常ではない雰囲気と、記憶を奪うという、普段では想像できないような出来事が、俺を恐怖させた。
「とりあえず、今からキミを異世界に転生させる。ワガママ聞いてもらう以上、色々と優遇してあげるよ。ボクも楽しみたいしね。記憶はボクが満足したら返してあげるよ。だから安心して」
そう言うと、少女は得意げに指を立てて、空中に文字を描き始めた。そこで描かれた文字が光り輝いている。どんなマジックだ。
つか本当に異世界へ行くのか!俺!?
後悔してるのかどうなのか、記憶ないからホントにわかんねぇ!!
「さーて、もういよいよ転生だ。なにか言いたいことはあるかい」
「いや、色々とあるよ! あんたのワガママってなんだよ! 記憶を奪った理由も知りたいし!」
「あーそこ? そこはあれですよ。世界を救って欲しい的なあれですよ」
「・・・マジか?!」
「マジです」
そう言うと少女は笑顔ではにかんだ。こうやって笑うと、可愛いんだけどな。
「記憶を奪ったのはなんでだよ」
「それはどっちかと言うと、善意かな。正確には奪ってあげたってのが正しいニュアンスだよ。キミのためを思ってやった事」
最後記憶返してあげた時に、ボクに絶対、感謝することになると思うよ。と少女は言った。
だまされねーよ? そんな私有能すぎてこわいわー感出されても、もう不信感すごいからね。少なくとも、加害者被害者の図式は成り立ってるのは明らか、もちろん、こっちは振り回される方。
「まぁ、とりあえず早く異世界に慣れろってことで、早速転生の儀、やってくからねー! どこ転生したいとか要望ある?」
「とりま、巨乳のエロくて可愛い美人な女の子近くでお願いします」
しゃーねーでしょ! いきなり異世界放り出されるんだから、癒しは必要!。
そういって恥ずかしいお願いをすると同時に、自分の目が真っ白な光に包まれて、そこで意識が途切れてしまった。
気の向くままに書いてみようと思います