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向こう側

やっと主人公が好き勝手始めます。

 ここが”向こう側”か。聞いてた通りあっちよりだいぶ動きにくいな。重力の感覚もずいぶん久しぶりだ。

 さてここは小部屋みたいだな。あれが魔石を使った罠で、あいつらが抜け穴を作った奴らか、確かに5人だな。全員鎧姿で武装してるな。一人だけ立派な鎧つけてるやがる。あいつがリーダーかな?魔力も一番多いしたぶんそうだろうな。でもなんか全員汚れてるな。悪魔を呼び出したのは追い詰められてるからか?それともなにか別の理由でもあるのか?いやまだ結論を出すべきじゃないな。しかし罠に俺が引っ掛からないせいか警戒してるな。出きれば会話したいところだが何言ってるかさっぱり分からないし、直接魔力を繋いで会話したいが警戒されていて繋がせてくれなさそうだな。だからといってわざわざ罠に引っ掛かるのは論外だし、う~ん、どうしたもんかな。ん?部屋の外から三人こっちに向かってくるみたいだな。仲間か?いや違うようだな。目の前にいる五人が足音を聞いて慌てて扉の方に注意を向けてるからな。この隙に俺は儀式のための祭壇に隠れさせてもらうか。

 どうやら後から来た連中はこの五人を探していたようだ。三人のうち二人が前に出てもう一人が笛を取り出した。あれで増援を呼ぶつもりだろうな。増援を呼ばれたら勝ち目がないのだろう、元からいた五人は必死に笛を持つ奴を倒そうとしてるが前に出た二人が邪魔をして、無理そうだ。さて俺はどうするかな、ほっといたら元からいた五人はやられる可能性が高いし、後から来た優勢な方に味方しても旨みが少なそうだよな。やっぱり負けてる方に味方するか。いざとなったら逃げればいいし。よし早速笛持ちから始末するか。奴の下まで見つからないように這って行って、手足を切り落として行動不能にしよう。

 はいっと。


「ぎゃああああああああああ!」


 一人目完了。うるさいな喉を切って黙らせるか。

 じゃあ次は、っておいおい驚くのは分かるけど戦闘中に動きを止めたらダメだろ。ていうか元からいた五人まで固まってるじゃん。まあいいや残りの二人もさっさと始末するか。


「ぐげっ!」

「ぎゃっ!」


 最初の笛持ちみたいに叫ばれる煩いからな同時に喉を切り裂いておいた。これで終わりだけどなんか元からいた五人が俺に向かって剣を向けてるんだが…、とりあえずこの三人の魂を吸収するか。いただきます。うまっ!魂って超旨いな。凄くコクがあって染みわたるような旨さだ。食べたときにその魂の記憶も見られるのも面白いな。たぶん普通の悪魔はこの時点で自我が目覚めるんだろうな。もっと食べたいけど目の前の五人を食べるわけにはいかないし、我慢するか。たぶんこの後もっと食べられるだろうしな。

 魂を吸収したおかげで人間の言ってることがわかるようになったけど目の前で魂を吸収したせいか五人の警戒度がとんでもないことになってるんだが…。


「ふっ、どうやら僕たちはとんでもない悪魔を呼び出してしまったようだね」

 

「ええ、そのようですね…。第二騎士団の精鋭たちをあの一瞬で葬り去るとは…」


「せめて王子だけでもお逃げください。我々が命をかけて奴の足止めをします!」

 

「その通りです!あなたはここで死んではいけません!速くお逃げください!」


「それはできない。ここでこの悪魔を自由にさせたら我が祖国に甚大な被害が出る。僕の責任でそんな被害を出すなんてあってはならない」


「しかし王子!」


「分かっている。僕たちではこの悪魔に敵わないだろう。だが少しでも消耗させておけば第二騎士団と兄上が奴を討ってくれるかもしれん。悪いけどみんなも付き合ってくれ」


「王子…。分かりました。我々も一太刀でも多くこの悪魔に浴びせてやりましょう」


「すまない。頼むぞ!」


「「「「はっ!」」」」


 やべえ、こいつら死ぬ気で掛かってくるつもりかよ。急いで止めねえと。悪魔っぽい口調で話しかけてみるか。


「少し待ってもらえませんか。わたしはあなた方と争う気はありません」


 ぶっつけ本番だけど空気を振動させて声をつくるのも上手くいったな。


「なに!」


「喋っただと!」


 ずいぶん驚かれてるな。そんなに喋るの珍しいのか?


「争う気はないとはどういう意味だ」


 さすが王子、一番冷静みたいだな。


「あなた方とは争わずに取引をしたいということですよ、王子様」

 

「取引だと?」


「ええ。あなた方だってわたしの力が欲しくてわたしを呼んだんでしょう?」


「それはそうだが…。ならばなぜすぐに話し掛けてこなかった。それに彼らを殺したのはなぜだ」


 ふむ、どう説明するかな。適当に説明しとくか。

 

「くふふふ、面白いことを聞くのですね。彼らが仲間を呼べば困ったのはあなた方でしょう?わたしは静かに交渉したいのです。あんな騒がしい輩がいては話もできないでしょう?」


「僕らと取引するためだったと?」


「その通りですよ。それでわたしと取引する気は起きましたか?あなた方では解決できない問題があるのでしょう?」


「…お前の力を借りれば確かにどうにかなるかもしれん。しかし、お前は何を望む。僕たちが差し出せるものなんて何もないぞ」


「王子!悪魔なぞと取引するおつもりですか!」


「黙っていろ!この悪魔がその気になれば僕らを簡単に殺せるんだぞ!僕らに選択肢はないんだ!」


「王子様はよく分かってらっしゃる。さてあなた方が差し出せるものがないとおっしゃいましたがあなた方の魂があるでしょう。特にその王子様の魂はとても美味しそうです。ですからわたしもできるだけ味わって食べたいのです。それには王子様が自ら差し出していただいた方がいいに決まっているでしょう?わたしが取引を持ち掛けたのはそういう理由ですよ」


「貴様!王子の魂を食べるだと!ふざけるな!」


「ふざけてなどおりませんよ。わたしの力が必要ということは私がいなくなればどのみちあなた方は死ぬのでしょう?なら何か願いの一つでも叶えたらいいではありませんか」


「貴様…!」


「待て、クラウス。その悪魔の言う通りだ。僕たちはもう完全に追い詰められているんだ。だったら僕らが願う事なんて一つしかないだろう」


 王子、ノリノリだな。さてどんな願いかなあ。


「悪魔、僕たちの願いは僕らの祖国に危害を加えないで欲しいということだ」


 ふ~ん、そう来たか。


「祖国に危害を加えないで欲しいと、残念ながら王子様その願いは了承出来ませんねえ」


「!何故だ!」


「簡単なことですよ。その願いを受け入れればわたしはあなたの国から一方的に攻撃されることになります。だからそんな願いはだめですよ」


 当たり前だろ。それにその願いだと旨みが少なすぎるじゃねえか。


「しかしまあご安心ください。わたしは無駄に人間を殺すつもりはありません。弱い人間をたくさん殺したせいで狙われるようになるのはごめんですからね」


「本当か?」


「ええ勿論。王子様はご存じありませんか?悪魔は嘘をつけないのです」


「…分かった。お前を信用しよう」


 まあ、思念での会話じゃなくて言語を介しての会話なら嘘つけるんだけどな。そんなこと知らないか。


「ご納得いただけたようで何より。それであなた方の願いはどうしますか?何かあるんでしょう?」


「それは…」


「どうせこのままでは死んでしまうのですよ?ほら言ってしまいましょうよ」


「…そうだな。なら僕の願いは妹を助けることだ」


「妹さんということはお姫様ですかね?助け出すというのは一体どういう事でしょうか?」


「僕の妹は兄上に捕まっている。兄上は僕と妹が生きていると都合が悪いんだ。だから妹を人質にして僕をとらえようとしている。その兄上から妹を救出して兄上の手の届かないところへ連れて行って欲しいんだ」


「なるほど、なにやら複雑なようですね。いいでしょうあなたの妹君を救い出して差し上げましょう」


「頼む。妹は人質にするためにすぐ近くまで連れてこられているはずだ。僕らが兄上の注意を引き付けるからその間に妹を救出してくれ」


 う~ん、その作戦はだめだな。その作戦だと王子が死ぬかもしれねえし姫の周りの警戒も大きくなるだろう。


「王子様、その作戦はナンセンスですよ。もっと確実な方法があります。あなたの兄君はあなたと妹君に死んでもらいたいんでしょう?ならそこを上手くついてやりますよ」


「どういう作戦なんだ?」


 後で説明しなきゃいけないし、今は説明しなくていいな


「あなた方に今、説明する気はありませんよ。あなた方はこの部屋でただ待っていればいいのです」


「ちゃんと王子に説明しろ!それにただ待っているだけだと!ふざけるな!」


 さっきから一々煩いな。


「ふざけてなどおりませんよ。この作戦はあなた方がここで隠れていないと上手く機能しないのです。それに後できちんとお話ししますよ」


 外に出て扉を閉めてやった。中でまだ喚いてるやつがいるが王子が宥めるだろ。

 ここは塔の中なのか。下の方の階に人間が大勢いる気配がするなあ。さて準備するか。王子は金髪だったから殺した三人の中に金髪がいて助かった。目の色は違うけどこいつの頭を少し形を変えて目をぐちゃぐちゃにしたら少しの間なら見分けがつかないだろ。





 おっ、いたいたさっきの奴らと同じ鎧だあれが第二騎士団か。50人くらいだな。魔力が大きい奴がかなりいるが真ん中の方にかなり大きな魔力を持つ奴が二人いるな。両方とも王子に魔力が似てるし片方が妹で片方が兄かな?よしやっぱり妹も魔力が大きいな。なら計画通り騎士団の数を減らしつつ魂を食いまくるか。


「こんにちは、蹂躙させてもらいます」


「なんだ!こいつ、うわあああああ!」


「化け物め!どこから現れ、ぎゃあああああ!」


「ひっ!たすけ、うぐっ!」


 弱いなあ。人間ってこんなに弱いのか。


「怯むな!囲んで攻撃しろ!」


 お、隊長格かな?なかなか対応が早いな。

 でも囲んでるのが5人じゃ意味がないな。


「ひ!跳びやがった!」


「隊長!」


「くっ!攻撃が当たらん!や、やめ、ぎゃっ!」


「隊長がやられた!」


「こっちに来るぞ!構えろ!」


 遅い。そんな攻撃当たるわけないだろ。

 はあ、蹂躙させてくれって言ったけどここまで一方的だと面白くないな。

 おわ!危ないな。管理鋭い攻撃だったな。


「悪魔か。貴様を殿下のもとに行かせるわけにはいかん。ここで私が食い止めさせてもらう」


 ごつい大剣持った渋いおっさんだな。ちょっと厄介かな。なら先手を取って流れをつくる。まず身体を伸ばした突き!


「甘い!」


 防がれたところを足元の薙ぎ払い!


「ぬん!」


 右足で弾かれた!けど体勢が崩れたな!四方向からの同時攻撃だ!


「はあ!」


 まじか!左足だけのジャンプで空中を回転しながら大剣で全部弾き飛ばしやがった!

 このままだと戦闘が長引きすぎるな。仕方ない、消耗が激しくなるけど全力でやるか。


「そこまでだ」


 誰だ?ああこいつが敵対してる兄って奴か。こいつも魔力が多いな。


「殿下!危険です!お下がりください!」


「いや、ジェラルド、そんな必要はない。その悪魔は大方エリクに使役されているのだろう。奴がこの塔に入った時からそうする可能性が高いことは分かっていたはずだ。奴に命令されているならフィーネを無視して攻撃はするまい」


 ふーやっぱりそう来るよな。やっと作戦通りに事が運びそうだ。


「何か色々勘違いされているようですが、わたしは誰にも使役されたりはしておりませんよ?」


「なに?そんなはずはない。悪魔が召喚されればすぐに使役される仕組みになっていたはずだ」


「ええ、確かにあの魔石を吸収しようとすれば罠にかかって使役されたでしょうがあんな見え透いた罠にわたしが引っ掛かるわけがありません」


「使役されてないだと!ならば貴様はエリクとは関係ないというのか!?」


「エリクというのがどなたかわかりませんが、もしかしてこの方ですかね?」


 王子に似せてあった騎士のぼろぼろの頭を魔力体から出してやると


「エ、エリクなのか?」


 ずいぶん動揺したな。この分なら上手くいきそうだな。この頭はばれないうちに仕舞ってと。


「貴様がエリク殿下を殺したというのならなぜ我々に襲い掛かってきた」


 ジェラルドは冷静だな。もっと動揺してくれてもいいのに。


「何故ってそれは勿論美味しそうな獲物がいたからですよ」


「獲物だと?」


「ええ、そこのあなたの主ともう一人とても大きな魔力を持っている方がいますよね?その二人を食べに来たのですよ」


「殿下を食べるだと!ふざけるな!」


「早合点しないでください。何のためにわたしがあなた方と対話してると思っているんですか。わたしは取引をしたいのです」


「取引だと」


「簡単なことですよ。貴方を殺すのはなかなか難しそうです、かといってこのまま両方の獲物を取り逃がすのも癪です。だからあなた方が獲物の片方を差し出せば、わたしは残りの方々をこの場では見逃す、そういう取引がしたいのです」


 さあどうするかな。


「も、もう一人の獲物とは誰だ」


 お、やっと王子兄が復活したか。でも動揺したままだな。まあ殺されかもしれないから当たり前か。


「それはわたしは知りませんよ。ただあなたに魔力が似ているのであなたの近親者の方ではないですか?」


「フィ、フィーネのことだな!よしフィーネを連れてこい!」


 何人かが走って行ったな、王子の命令通りフィーネとやらを連れてくるんだろう。

 あれがフィーネか、王子によく似た金髪と碧眼だな。王子兄は髪は王子よりくすんでるし目も少し色合いが違う蒼だな。王子妹は縛られて猿轡もさせられてるみたいだな。


「さあフィーネを連れてきたぞ。フィーネを渡せば私に手を出さないというのは本当だろうな!?」


「勿論です。わたし達悪魔は嘘をつけませんから」


 王子妹は何が何だか分かってないな。でもこのままだと俺に引き渡されるのは分かったみたいだな。もがいて逃げようとしてる。騎士たちが抑えてるから意味をなしてないな。


「お前たち早くフィーネを渡せ!」


 騎士たちが恐る恐る王子妹を連れて近づいてくるな。王子妹も涙目で暴れてるけど意味なさそうだな。


「はい、確かに頂きました。実に美味しそうな魂ですね」


「これでもう用はないな!さっさと消えろ!この悪魔が!」


 王子兄は口が悪いな。まあこれで計画は成功だし魂も30人分くらい食えたから王子のところに戻るか。


「全く口が悪いですね、わたしも折角の上質の獲物ですし静かに食べたいのでこれで失礼します。ではまた縁があったらお会いしましょう」



主人公が簡単に人を殺してるのは悪魔になったせいじゃなくて元々の性格です。日本にいた時は殺すメリットが少なくてデメリットが大きかったので人を殺したりはしてませんでした。

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