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契約

「セレナ、ね。いい名前じゃないか。じゃあセレナ俺と契約しないか?」

 

 俺は運がいい。こんなに契約相手としてぴったりな相手と出会えるなんてな。


「契約?何を言っているんだ?お前も私も悪魔だろう」


「別に悪魔同士で契約しちゃだめだってことはないだろう」


「それはそうだが、こんなとこで契約してもお互いなんのメリットもないだろう?」


 セレナは困惑してるみたいだ。俺がこんなこと言い出すとは思わなかったんだろう。


「いや俺たちは契約相手には完璧だ。俺はお前の願いを叶えられる。そしてお前も俺のほしいものを持っている」


「お前が私の叶えられるだと?いったいどういう意味だ」


 よしよし、食いついたな。こっからが本番だ。


「いいか、お前は”向こう側”に行きたい。俺は生き延びられる知識や技術が欲しい。つまりだ。お前が俺に技術や知識を提供する。俺は実力をつけてしっかり予習してから”向こう側”に行く。そして”向こう側”で準備を整えてお前が通れるだけの抜け穴を作る。どうだお互いにメリットしかないだろう」


 絶句してるな。こんなこと考えたこともないのかもしれんな。


「……確かにそれだったら私も”向こう側”に行けるかもしれない。だがお前が向こうで死んだりしたらどうするんだ」


「そうならないようにお前が俺を鍛えてくれよ。お前が俺をしっかり鍛えてくれるほどお前の願いが叶う確率も上がるんだ」


「なるほど。しかしそんな上手くいくのか?悪魔召喚するのはかなり大変らしいぞ。特に私が通れるほどの穴を開けるのはな」


 もう一押しだな。


「お前がこのままここにいてもあっちに行ける確率はほとんどないんだろ?だったらやるだけやってみればいいじゃないか」


「…それもそうだな。よし!いいだろうお前の思惑に乗ってやる」


 やった。上手くいったぜ。


「ただし一つ条件がある」


 なに?条件だと?


「条件?」


「ああ簡単なことだ。お前が人間だった頃の話を聞かせてくればいいだけだ」


 そう来たか。まあ問題ないな。


「分かったその条件を呑もう。じゃあ契約成立だな。改めてよろしくセレナ」


 俺は身体の一部をセレナの方に伸ばした。


「…それは何だ?」


「人間同士の挨拶だよ。取引や契約が上手く言った相手とは手を握り合うんだ」


「ほうそんな挨拶があるのか。よろしく頼む」


 セレナは俺の身体を握った。

 なんかスライムと少女が遊んでいるみたいだな。


「では、早速鍛えてやる」


「分かった俺も早く強くなって”向こう側”に行きたいしな」


 どんな訓練でもやってやるぜ。


「とりあえずは魔力体の密度を高める訓練だな」


「密度を高める?」


 一体どんな訓練なんだ。


「ああ。私たちは自分の魔力体の密度を高めることで様々な有利な点ができる。一つは耐久度が上がって打たれ強くなる事だ。他にも一撃の重さが上がったり移動速度や攻撃速度が上がったりする。一定以上の悪魔はみんなやっていることだ」


「そんな技術があるのか。分かったそれから教えてくれ」


 なんか面白そうな技術だな。楽しみだ。





「違う!そうじゃない!もっと身体全体を同時に圧縮するんだ!密度が薄いところを作るな!」


 くそ…!この技術かなりきついぞ。常に身体の筋肉に力を込めているみたいだ。少し集中が途切れたらすぐに元に戻っちまう。

 それにしてもセレナが結構厳しい。まあ悪魔なんだから厳しくて当たり前なのかもな。


「余計な事を考えるな!また緩んだぞ!」


 ほんとに厳しい

 




 よ~し、安定してきた。激しく動きながらでも密度を高めたままでいられるようになってきた。


「上手くなってきたな。そろそろ次の訓練をはじめるが、その前に一つやっておかなければならないことがある。お前の魔力量の問題だ。いくらなんでも少なすぎるそのままでは次の訓練にも耐えられないだろう」


「魔力が少ないって言ってもどうするんだ?そこらへんにいる悪魔でも狩るのか?」


「いやその方方法では時間がかかりすぎる。だから私が少し分けてやる」


 分ける?そんなことができるのか。


「分ける?そんなことして大丈夫なのか?」


「言っただろ私は悪魔の中でもトップクラスだと。効率はかなり悪いがお前を多少強化するぐらいなら問題はない」


 そんなことができるなんてな。だって相手の魔力を増やすってのはつまり魂を分け与えるってことだろ。悪魔ってのはかなり謎な生態だな。いや待てよ、そんなことができるなら…


「少し疑問なんだが分けることができるならセレナが自分の魔力量を減せば”向こう側”行けるようになるんじゃないのか?」


「そんなに都合のいい話でもないのだ。私クラスの悪魔が”向こう側”に行くためには魔力の大半を捨てなければならない。一気にあまり多くの魔力を失うとそれだけで自我が吹き飛んでしまう。だからその手段は取れなかった。まあもう少しお前と出会うのが遅ければ少しずつ魔力を減らしていったかもしれん」


 やっぱり俺は運がいいな自分で簡単に魔力を減らせるのならセレナは俺の契約相手に成り得なかったしな。


「納得したか?じゃあお前の魔力量を増やすぞ」


 ああそういえばそんな話だったな。

 セレナの肉体から魔力体が出てきて俺をすっぽり覆った。


「では始めるぞ」


「ああやってくれ」


 おっと、始まったか。少しずつセレナから俺に何かが流れ込んで来るのがわかる。なんていうか結構気持ちいいな。心が安らぐ感じがする。ん?気のせいか?少し熱くなってきたような?いや!気のせいじゃない!どんどん熱くなってる!熱い!燃えてるみたいだ!まだ熱くなるのか!?耐えきれない!ああ、くそ!セレナの魔力のせいで逃げられない!熱い!熱い!熱い!ぎゃああああああああ!





「ひどい目にあった」


 あんなに熱いなんて聞いてないぞ…。


「外部から無理矢理魂を弄られるわけだからな。ちょっとした拒絶反応だろう」


「「拒絶反応だろう」じゃねえよ!言えよ!最初に!」


「言っても変わらないだろう。それにちゃんと魔力も増えているようだし何の問題もないだろう」


「それはそうだが…」


 なんか釈然としないが確かに俺の魔力体は大きくなっているし色合いも前よりずっとはっきりしていた。(ちなみにセレナの魔力は白銀で俺の魔力は黒っぽい。)


「ぐだぐだ言っている暇はない。次の訓練を始めるぞ」


「もう始めるのか?少しくらい休ませろよ…」


「だめだこれからの訓練は休憩が必要なものばかりだからな。それまで我慢しろ」


 休憩が必要な訓練だと…!


「どういう訓練なんだ?」


「次の訓練は単純だ。ただ私と戦うだけだ」


 は?おいおい


「お前自分でトップクラスだって言ってただろ。俺がまともに戦える気がしないんだが」


「もちろん手加減はしてやる。こういうのはやはり直接戦わないと強くなっているか分かりにくいからな。それに私に慣れておけば大抵の相手なら問題なくなるからな」


 そういうことなら仕方ないな。


「理解はした、けど手加減は本当にしっかりしてくれよ」


「安心しろ、私が力加減を失敗するわけがない。ほら、構えろ」


 構えろってこんな感じか?


「行くぞ」


 危な!いきなりか!


「ほお避けたか、ではどんどん行くぞ」


 いやちょっと待てよ、その数は無理だろ…。





「またひどい目にあった」


 今は休憩中だ。俺の魔力体が回復するまで休憩らしい。つまり回復したらまたあの地獄が始まるってことだ。


「中々センスがあるぞ。かなり捌けるようになってきたじゃないか」


「まああんなに打ち込まれたらな」


「この調子なら割とすぐに”向こう側”に行けるようになるかもしれないな」


「本当か!?」


「あくまで私が思っていたよりはというだけだ。まだまだ身につけなければならないことは多い」


 上げて落とす、その見本を見た気がした。いや、よく聞かなかった俺が悪いんだけどさあ…。


「休憩が終わったら今度は別の訓練をするぞ」


「別の訓練?あの地獄…じゃなかった戦闘訓練はいいのか?」


「戦闘訓練だけしていてもだめだ。もっと他の魔力体を使った物理的干渉法とか物質を変性させる方法とかの技術も覚えなくてはならないからな」


 おお!戦闘訓練より面白そうだな。


「だが訓練の前にお前の話を聞かせてもらおう」


 話?なんのことだよ。


「話?なんか話すことあったか?」


「覚えていないのか…。契約したときお前が人間だった頃の話をするという条件だっただろ」


 そういえばなんかそんな条件追加されてたな。


「う~ん。なら俺が教師をやってた話なんてどうだ?」


「教師?教師とはいったいどんなものだ?」


「えっと…、教師ってのは人にものを教える人のことだ」


「なるほどじゃあ私はお前の教師ということだな」


「まあ、そうだな。俺は学校で子供相手に教師をしていたんだが」


「少し待て学校とはなんだ?」


「ああ学校っていうのは……





「もっと素早く正確に変性させろ!時間がかかりすぎだし、形も悪い!」


「くそっ分かってるよ」





「つまり魔石というのは魂と肉体を結びつける器官なのだ。だから肉体を操るときはそこから支配しなければならない」


「魔石かそんな器官があるのか…」





「もらった!」


「甘い!」


「ぐげっ!」

 

「隙に飛びつきすぎだ。わざと作った隙に惑わされるな。戦闘は駆け引きだ、相手の狙いをよく考えろ」





「今度は何の話をしてくれるんだ?」


「今回は俺の故郷の昔話を話してやる」


「ほお人間の物語か面白そうだな」





「は!」


 かわし切れた!けど四方向から追撃が!防ぐのは無理だ!左からの攻撃を受け流して突破!

 このまま突っ込めばやられる!回り込んで後ろから狙う!


「くっ!」


 きつい。相手の手数が多すぎる。しかも一つでも当たれば動きを止められてそのままなぶり殺しにされる。でもここまで近づけば手数もかなり減らせる!だから相手の攻撃を引き付けて避けながら相手にぶつかれば、今だ!


「はああ!」


 ぐっ!痛ってえ!でも、俺の勝ちだ!


「凄いな。こんな短期間で私が負けるとはな」


「思いっきり手加減されてたからな。それにお前はその場から動かないって制限付きで俺は一撃でも入れたら勝ちってルールだったしな」


「なにを言っている私が手加減していたのは攻撃の威力だけだ。他は一切手加減していない。つまりお前は私クラスの悪魔とも戦いうるということだ。それだけ戦えればほとんどの相手と戦うことができるだろう」


 超褒められてる。うれしいけどなんか恥ずいな。


「他の技術もしっかり身に着けたし”向こう側”でも十分通用するだろう」


「ん?じゃあもう訓練は終わりか?」


「…そうだな」


「よし!やっと”向こう側”に行けるのか。ああでもその前に抜け穴を見つけなきゃなあ」


「……いや、抜け穴はさっき少し遠くで開いた」


「全然気付かなかった。どこだ?」


「あっちだ私に付いてこい」


 分かりやすいなあ。俺がいなくなるから機嫌悪くなってやがる。





「ここだ」


「結構大きめだな」


「ああかなりの大きさだなここまで大きいのは珍しい」


「じゃあ”向こう側”の安全確認して早速行くとしますか」


「…………そう…だな」


 はあ、めんどくせえな。


「おい、セレナ」


「何だ」


「できるだけ早く”向こう側”に呼んでやるから待ってろ」


「いきなり、何だ。元からそういう契約だろうが」


「ただの確認だよ。それで”向こう側”の様子は?」


「5人ほど人間がいる。内一人はかなりの魔力を持っているな」


 元気になったみたいだな。


「5人?6人かと思ったが」


「たぶんその一つは魔石だな悪魔をおびき寄せる罠だろう。”向こう側”に行っても吸収するなよ」


「ああ分かった。問題なさそうだな」


「…気を付けて行けよ」 


「了解。じゃあ行ってくる」


「ああ待ってるぞ。できるだけ早く頼む」


「分かってる。じゃあな」


 

 

 抜け穴の中ってのはこうなってるのか。お!そろそろ出口か。結界が張ってあるけど問題ないな。これをこうして、よし、解けた。じゃあ、生まれて初めての人間とのご対面と行きますか。

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