プロローグ
初投稿です。拙作ですがよろしくお願いします。
「先生、おはようございます」
「ああ、おはよう」
一人の男子生徒が俺に挨拶しながら校門を通って下駄箱に向かっていった。
ここはある公立の高校、俺は教員免許を取って一年目の新米教師だ。
この学校に来て三ヶ月、そろそろこの学校にもなじみ始めた。
他人に何かを教えることは今までしてこなかったから、かなり苦戦しているが、その分工夫しがいがあって結構面白い。
俺は昔から好きなこと以外、なかなか頑張れない性質で、その上、飽きっぽい性格でもあったので親に本気で将来を心配されていたのだが、かなり苦労して教員免許を取った甲斐あってちゃんと仕事にありつけた。
チャイムがなってまだ校門付近に居た生徒たちが慌てて走って行った。俺はクラスの担任を受け持っていないし、今日の一時間目にも俺の授業はないので、普通に歩きのまま学校に入って行った。
「先生、さよなら」
「はい。さようなら、気をつけて帰れよ」
「は~い」
部活動を終えた生徒たちが挨拶して帰っていく。俺は教師なのでまだ仕事があって帰れない。
「ふう…。やっと終わった」
俺は次の日の授業の準備などの仕事が終わった解放感から背伸びをして立ち上がった。
あたりはすっかり暗くなっていて、職員室にはもうほとんど人がいない。
「お先、失礼します」
俺は残っている数人に声を掛けてから職員室を後にした。
「今日は帰ったら何食うかなぁ…」
そんな独り言を呟きながら帰り道を歩いていると、前の方から悲鳴交じりの声が聞こえてきた。
「事故でもあったのか?」
好奇心を刺激されながら、騒ぎが起こっている方へ急ぎ足で近づいていくと商店街の入り口付近で二人の男が取っ組み合いをしているのが見えた。片方の男が何か騒ぎながら包丁を振り回そうとしているのをもう片方の男が必死で抑え込んでいるようだった。
「あの、すいません何があったんですか?」
俺は近くで二人の男を見ていた中年の女性に声を掛けた。
「ん…ああ、いやあたしもよく分かんないんだけどさ、包丁を持ってるほうの男がね、なんかいきなりそばを通りかかった女性に怒鳴り始めたみたいなの。それを止めようともう一人方の男の人が声を掛けたら、包丁を取り出してその声かけた男の人に切りかかったらしいわよ。警察も呼んだらしいし、すぐ捕まるわよ」
突然声を掛けたのに、割と詳しく教えてくれた女性に礼を言って、二人の方を見ると、
「あ!」
包丁を持っている男が掴まれていた腕を振りほどき、もう一人の男の腕を切りつけた。それを見た俺は一気に飛び出すと二人の間に入り込んで男の手を思いっきり掴み握力が緩んだ所で包丁を取り上げ誰もいない方に向かって包丁を放り投げた。
「どいつもこいつも俺を馬鹿にしやがって!!ふざけんなよ!!俺は一生懸命やってるだろうが!!!」
包丁を取られた男は意味の分からないこと言いながら俺に向かって突進してくるので、抑え込んでやるつもりでいると男はそのまま俺に思いっきりぶつかってきて俺を地面に押し倒した。頭を打って一瞬何が起こったのか分からないでいると、男が懐からもう一本包丁を取り出して俺の胸に躊躇なく振り下ろした。
「がは…」
まず身体に何かがずるりと入り込んでくる感じがして次に燃えるような痛みが襲ってきた。
「きゃあああああ!!」
周りで見ていた誰かが悲鳴を上げたが俺はそれを意識することができなかった。
痛みで身体が強張っている所に男が何度も何度も包丁を胸に突き立ててきた。
「ごほ…」
俺は口から大量の血を吐きながら、痛みを堪えて男を足で跳ね飛ばすとそのまま立ち上がって渾身の力を込めて男の顔を蹴り飛ばした。
蹴られた男は地面を転がっていきそのまま倒れて立ち上がらなかった。
俺はそれを見るといきなり力が抜けてその場に倒れてしまった。血がどんどん抜けていく感覚にまずいと分かったが立ち上がることができずに意識が薄れていった。せっかく明日の授業の準備したのになぁと最後にそう思って俺の意識は消えた。