第21話 鳥は飛び立ち、巫女は眠る
はっぴーえんどの形は、人それぞれのなのです。
悪魔の巫女は、鳥かごに囚われていた。
どうやって下せばいいんだろうと思っていると、悪魔の巫女がレバーを指さした。
私がそれを引くと、からからと音を立て吊るされた籠が降りてきて、かちゃりと音を立て開く。
「ただいま」
私は悪魔の巫女に言うと、
「おかえりなさい」
といつもの声で言った。それがとてもうれしかった。
「懐かしい声がする」
悪魔の巫女は、そう言って、歩き出す。何か慌てている様子だ。
私は彼女の後を追いかける。
「終わったんだな」
彼女の後を追いかける途中にロイドに出会った。
「主を灰にしたよ」
「そのようだ。多くの人間が、あいつに挑んだが……誰も勝てなかった。けれど、お前は諦めずに何度も挑んで勝ったんだよな。これで、わしもお役目ごめんか」
「どうするんだ?」
「旅に出るよ。これからも大好きな鍛冶を続ける。なんたって、時間はたっぷりあるんだからな。だから、先に行く。お前は、悪魔の巫女と話があるんだろう。無粋な邪魔しないさ」
「……そうか。武器、ありがとう」
「いいよ。また、どこかであったらよろしくな。嬢ちゃん」
ロイドはそういうと立ち去った。
私はロイドの背中が見えなくなるまで見送り、悪魔の巫女を追いかけた。
悪魔の巫女を探す。悪魔の巫女は、焚火のあった場所にいた。でも、そこには、大きな穴があった。
穴からは声が聞こえた。
「あなたを呼んでいます。一緒に来てくれますか」
「うん、いいよ」
私がそういうと、悪魔の巫女は私の手を引っ張った。私は抵抗することなく、悪魔の巫女と一緒に穴の中を下りる。
暗い穴がしばらく続くが、光が見えた。
視界が明るくなると、私はすごく高いところにいることに気が付いた。それで、腐れ館やお城が見られる。後ろを振り向くと大きな神殿が見える。あれは空中で浮いていたようだ。
私はどうするのか、手を繋いでいた悪魔の巫女に問いかけようとしたが、風圧で口が開けない。でも、大丈夫だった。
地面に近づくとき、落ちる速度が緩くなり最後はふんわりと地面に着地した。
私が降り立った場所は、砂浜だった。前に見えるのは海だ。穏やかな海で波は高くない。空を見ると綺麗な星空が見えた。
「ずっと……会いたかった」
悪魔の巫女はそういうと走り出した。彼女が走り出した先には白い大きな獣がいた。白い獣の周囲には、植物が生えていて、動くと生えていた植物が枯れ、新たな植物が生える。
生えてくる植物はぼんやりとひかり、白い獣を照らしていた。
悪魔の巫女は白い獣を抱きしめると、私のほうを向いた。
「最後にお願いがあります……どうか、その力を返していただけないでしょうか。元ある場所に返していただけないでしょうか」
悪魔の巫女の願いに私は、
「どうすればいい?」
と聞く。
「私に触れ、あなたが得た魂を捧げてください」
私は左手を差し出した。
悪魔の巫女は、私の手を掴み私の手を胸に置いた。私の中に糧になったものがすべて失われる感じがする。
ゴーグルでステータスを確認すると、私のレベルは1になっていた。
「使者の魂を使わなかったのですね。これで、世界の綻びは防ぐことができ、彼らを安らかな眠りへと導くことができます」
どうやら、悪魔の使者の魂も捧げる対象のようだ。そして、悪魔の巫女の手には白い光があった。
その光を白い獣に差し出す。光は白い獣は、大きな口を開け、飲み込んだ。
「……これで、私は帰ることができます」
「よかったね」
私はそう言って背を向けた。
「……ありがとう。鸛」
私は立ち止まって、振り返った。そこには悪魔の巫女がいた。
「……」
「……これを受け取ってください。これだけは、渡してもよいと許可を得たので」
悪魔の巫女が私の手に触れると、私の中に火と白い獣が心の中に入ってくるような感じがした。
「私の一部です。これで、私はあなたと一緒に旅することができる」
左手を見るとブラッドワイン色をした獣手の中に火が収まっていた。
「あなたと行く道を一緒に歩みたかった。でも、失われた魂を戻す作業をしなければいけません。長い眠りの中で……」
「また、会えるさ。不死者だから……」
悪魔の巫女が生きてくれるなら、どこかで会えるはずだ。
「さようなら……」
悪魔の巫女はそういうと、白い獣と海の上歩いて行く。それと同時に、獣の後を追うように、多くの光が追っていく。その光景は、送り火のようだった。
悪魔の巫女と獣は徐々に海の中へと沈んでいく。そして、たくさんの光と共に消えた。
最後ぐらい、長く一緒にいたいと思ったけど、私は彼女を引き留めることをしなかった。
ずっと、会いたい存在に会えて、幸せを私には壊せない。だから、何も言わずに見送くった。
第2部終わり。さぁ、異世界をもっと楽しもう。




