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第17話 笑う門に獣あり。生きる意思を示せ

 笑う筋肉

 エレベーターを上がった先は、階段があった。階段を上ると焚火があった。さらに、霧。

 おそらく、霧を抜けた先には、悪魔の使者がいるのだと思う。


 武器の確認と、不死者錬成で、血晶弾を作る。


「できるさ」


 私はそう言って、左手には槍鋸を、右手には散弾銃を持って霧を抜けた。抜けた先は火山の噴火口だった。


「来たか、待ちくたびれたぞ。さぁ、見せてもらおうか」


「ぐはっ」


 柔道着のような服を着た白髪の老人の一撃を受けた。地面にごろごろと転がる。その時、武器は手放さず、素早く起きる。


「ふはははははははは」


 散弾銃を撃つが、横に移動して回避する。その時、消えた。意味が分からない。


「遅い」


「ふぐっ」


 HPが減る。


「ふははははははははは」


 笑い声が近寄ってくる。ゴーグルには武を極め続ける者・ゼゼと書かれていた。


 攻撃が素手なのは、武人だからなのろうか。でも、私の習った古武道は武器も使う。そんなことはどうでもいい。


 私は武器を収めて素手による戦いに挑む。


「ふははははははは、おもしろいやつだ。いくぞ」


 相手は笑いながら一気に私に詰め寄る。動きが見えない。けど、さっきから攻撃が同じなのだ。


「ぐふっ」


 だから、攻撃が当たると同時に……相手の腕をつかむことができるはず。


「ぁぁぁあああああ」


 私は大きな声を上げなら、柔術へと持っていく。


「ふはははははははははは、訓練が足りない」


 どんと力任せに、私は地面に叩きつけられた。それと同時にHPがなくなった。


「ふはははははははは、何度でも来るがよい」


 私は意味のわからないおじいさんに敗北した。私は迷うことなく、再選することにした。笑い声が嫌いだった。


「ふははははははははは、筋肉が足りない。訓練だ」


 腰に吊るしていた短銃を打ち込む。しかし、その銃弾を口で受け止める。


「にかっ」


 歯で血晶弾が止められていた。今までの奴らの存在意義が何なのかわからないぐらい強い。だけど、一部を除いて攻撃は軽かった。原因は素手なのだろうか。手加減をしているのかもしれないが……理由はわからない。ただ、相手は強い。


「さぁ、次いってみよう」


 すがすがしい声で言うと、一撃を与えられる距離まで詰めてやってくる。

 まずい、相手の手がわからない。今行える行動で、勝てる見込みが見当たらない。

 目の前の存在は天才だ……。


 今、私が勝つにはわずかな勝機にかけるしかない。つまり、やるしかない。

 私は、覚悟を決めて攻撃を選択。


「ふはははははははは。残念、わずかな勝機にかけたみたいが結果は、この通りだ」


「ぐふっ」


 避けられて、お腹に一撃。HPが0になって、私は膝をついた。


「また、来るがよい。ふはははははははは」


 私はそう言われて灰になった。

 そして、言うまでもなく、奴に何度も挑んだ。けれど、勝てなかった。もう、同じことの繰り返しだった。

 

 何度も行われる他戦いで、奴が光輝く存在なら、影のように死んだ目をした闇のようになっていた。


「もっと明るく振る舞え、そうでなければ強くなれない」


「……」


 死んだ目で相手を見ていた。何度緒戦したかわからないけど、相手の動きをみることができるようになっていた。ただ、すごく疲れる。


「なっ」


 攻撃に合わせて散弾銃の引き金を引けるようになっていた。


「……できた」


 怯んだのを確認して、槍鋸をホルスターに収めて左手を獣化。相手のやわらかい腹を突き破って内臓を攻撃する。


 たくさんの血が出るけれど、相手も不死者だから腹が避けることはなかった。


「ふはははははははははははは、成長したな」


「……」


「なぜ、獣にならない」


「私は人だ」


「ほぉ、おもしろい。心に獣もちながら……人にこだわるか」


「お前らみたいになりたくない」


 私は必死に息を整えながら、次の準備をする。


「悪魔の下僕や使者になりたくないと。ふむ、きさまは何のために戦っているのかわかぬまま、ここに来たようじゃな」


 ゼゼに言うことはあっている。でも、何も答えない。もう、終わりにしたかった。


「否定しないということは、肯定かのぉ。獣になれば簡単にわしを倒せるのに、人に拘る。ここに来た奴は、いろんな奴がいたが……お前さんみたいなやつは初めてだ。戦いは殺し合いなのに……きさまには殺意がない」


「……かもしれない」


 私が教える古武道の先生にも言われたことだ。殺意がない。戦いにおいて必要なものが決定的にかけているのだ。もし、それがあれば英雄ロゼッタの顔を見てもすぐに撃つことができたと思う。


「殺意がないのに、ここまで、来れたのはなぜじゃ。ここまでの戦いは何だったのだ」


 その問いに、悩むことなどなかつた。私は生きる価値のない人だ。でも、生き続けている。不死者になって、死ぬことすら許されない。

 先に死んだ私よりもわたしよりも生きる価値のあった人を思い出しながら、

「生きる価値のある人の代わりに生き続けようと思ったんだ」

と答えた。


 すると、ゼゼは納得したような顔をした。


「なるほど。生き物としての根本的な生きることに重きをおいていたから、ここまで来たということか。実に愉快だ。なら、生き続けるがよい。生きるためだけに殺し続けるがよい」


 ゼゼはそう言って、火山から身を投げた。


 でも、私に大量の魂は手に入らない。


「わが本当の姿で戦おうぞ。どちらが生きるべきか」


「……」


 赤い炎に包まれた獣がいた。言うまでもなく、一撃が凶悪だ。動きも素早い。ただ、体が大きくなったことで人であるときの素早さはない。


「あつい、あつい」


 炎が服に燃え移り、私は地面を転がる。起き上がると、服は何ともなくHPだけが減った。もう、何度も思うが悪魔の使者は強い。


 けれど、私はそいつらを狩り続けた。槍鋸によるノコギリの一撃は獣の皮を切り裂く。炎で壊れそうだが、気にしている余裕なんてない。


「イキノコル」


 私は生きようとした。攻撃が当たる瞬間、ステップして前に出る。


 ゲームのように、無敵時間があるのか私のHPは減らないし、痛みもない。回避によって私は相手に近づいたまま攻撃を続ける。


「やっと、不死者の力の1つを使えるようになったか」


 不死者の力。どうやら、回避行動中に無敵時間が発生するようだ。過去に何度か似たような経験があったが、ゼゼに言われて、確信と変わった。


 私はステップによって発生する無敵時間を利用して、攻撃を避ける。これによって、一方的に攻撃できるようになっていた。


「……私が生きる」


 多くの失敗が私の糧となり、今を作り上げていた。その点で、ゼゼは総合テストのようなものに感じた。


「生きるがよい。そして、真実を知った時にきさまは何を選ぶ」


 ゼゼはそう言って、灰となって消えた。私の手元には魂50000と武を極めし修行者の魂の魂を手に入れた。




―――

 敗北を知知った武を極めし修行者の魂


 戦いつづけて、天下無双を夢見ました。だから、獣になりました。獣はなんでも食べてしまいます。そして、1人になりました。おめでとう、天下無双の獣になりました。


 でも、生きる意思の強い人には勝てませんでした。だって、武で天下無双でも、生きる意思は天下無双でないのです。


―――



 説明文を見て、複雑な気分になった。なぜなら、私は生きることに関しても他人よりも弱いからだ。たしかに、生きようとおもってここまで来た。けれど、それは……静かにおだやかな安らぎがほしいだけである。


「……なんで、生きているんだろう」


 立ち止まれば楽になれるのに、ずっと悪魔の神殿で何かにおびえずに生きられるのに……私は生きていた。


「……帰ろう」


 私は焚火を使って、悪魔の繋ぐ神殿に戻った。




 感想ありがとうございます。誤字は、読み返して減らすようにしていますが、次から次へと出ていくのであります。悲しいことに、そういう特性だったりします。

 とにかく、時折過去の話を読み返して、こっそり修正しています。

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