第8話 準備しても想定外は基本です。さぁ、灰になるがよい
準備するお話。あとホラーです。
目が覚めると、悪魔の巫女に膝枕されていた。
「おはようございます」
「……おはようございます」
私は起きあがると、悪魔の巫女はじっと見ていた。もう、いつものことなのでだいぶなれたので気にしない。
起きると不死者の水を飲んで、ロイドからもらった材料で不死者の錬成に挑戦することにしてみた。
袋の中にある材料を取り出して、私は左手を材料にかざした。武器を頭の中で思い浮かべると材料が浮いてエメラルドグリーンの粒子となって1つの球となる。私は目を閉じて自分が描く武器を想像した。
機能や構造をしっかりと頭に思い描く。時に、ノコギリの方手武器として、安全装置を外せば柄を引き延ばして槍の状態になるように丁寧に頭の中で想像した。
頭のなかで大きな想像がしっかりできると手に武器の重みを感じた。目を開けると自分が想像どおりの武器があった。私はこの武器を槍鋸と名付けた。
試しに、変形を試すと想像通りに変形してくれた。それから、私は不死者の錬成で武器のホルダーを作った。両手をいつでも自由にできるようにするためだ。
鞄を背負っていても邪魔にならないような形にするため、リュックに取り付けるような形にした。
H型の鞄は背中が自由なので、背中に武器を背負う形でも問題なかった。いつでも取り回せるようにして、私は武器を背中に吊るした。
なんどか、安全性を確かめ、私はロイドの元へ向かった。ロイドのところへ行くと、
「よく来たな」
と言って、布に覆っていたものを取り外して私に見せた。
綺麗な装飾がなされた銃がそこにあった。全長は50㎝ぐらいで、ストックが付いてある。
「試し打ちしてみるか」
「する」
私はロイドに案内されて、広い何もない部屋に案内された。簡単な的をロイドは設置した。
「使い方がだが、これが安全装置だ。これを外して、引き金を引けば弾がでる。弾の補充はここだ」
私は各パーツの説明を受けた。
「お前さんの書いた絵のおかげで、次の弾が込められる武器ができたぞ。どこで、こんなアイデアが思いうかんだ」
「私の世界の武器では銃が重要な武器だったんだ。だから、発展したんだよ」
「なるほど、銃が脅威ということは、お前の世界はそんなに体が丈夫じゃないということか」
「HPの概念もステータスの概念も無い。当たり所が悪ければ、簡単に人は死ぬ」
「HPの無い世界か、ちょっと想像しにくが。とにかく人を簡単に殺せる世界か。恐ろしい世界だな」
「かもね」
私はそう言って、銃の試し打ちをした。がきゅんという音がする。反動と共に薬莢が排出された。
次にどおんという音と共にベニヤ板が砕けた。なんか、想像していたものよりも音が小さい。
「実は、銃はあまり使わないからな。ちょっくら、いろいろ遊ばせてもらったよ。それで、過去に銃を使う奴がいたんで、その資料を漁っていたらな、血晶弾という心の強さに比例して弾の威力が上がる。おまけに耳を傷めな音量で撃てるすぐれものだ」
「……ファンタジーだ」
私は思わず日本語でつぶやいた。
「ふぁ、ふぁんたじー? まぁ、それはよいとして……ほれ……」
装飾が凝った短銃を私に見せた。
「血晶弾は、不思議な弾だ。簡単な細工を施すことで、銃に合わせた弾がでるようになる。しかも、必要なのは血なんだが、HPで作れる。とにかく、HPを犠牲にすればいつでも、作れるし、HPは焚火で休めば回復する。不死者にはもってのこい弾だ。それで、いざという時は役立つだろうと思って作ったのさ」
ロイドはにやりとして、短銃の使い方を説明した。
私は短銃の説明を受けると試し打ちをする。散弾銃部と違って弾が拡散することはないのだが、射程は散弾銃と同じぐらいだ。
弾の装填方法は中折れ式で、1発1発弾を込める必要があった。
「どうも、射程が伸びなくてな……なんか、いい方を知らぬかの」
「重心にらせん状の溝を掘ってみればいいじゃないか。あまり私は詳しくないが、銃弾を回転をさせることで弾が安定して飛ぶようにする効果があったはず。ただ、その時、内部の圧がどうのこうので、火薬の燃焼速度も調整しないといけないはず」
「……妙に詳しいな」
「ゲームやっていて、知った」
艦隊を擬人化したゲームとか、刀を擬人化したゲームをしていた私は、使われているものに興味があって調べたことがある。
戦うことなんてないと思ったが、個人的な趣味で救われたのかもしれない。
「えらく物騒だな。日本てくには、戦いが好きなのか」
「自衛でしか、戦わない」
「変わったな国だな。自衛でしか戦争しない国か」
この世界で、日本という国はかなり変わりのようだ。
「とにかく、すこし待ってろ不死錬成でライフリング刻んで、血晶弾の調整もすましちまう」
そう言って、何発か撃って銃が暴発した。
「いててて、こりゃ、何度か実験しないとだめだな。悪いが、短銃は後にしてくれ」
「わかった。銃を作ってくれてありがとう」
「おう、悪魔の下僕になるじゃねぇぞ」
「うん」
私はそう言って、ロイドと別れた。石碑がある場所に戻ると、霧に覆われた村へと行く石碑以外に、新たな石碑が光っていた。
「これは、どこに繋がっているの?」
悪魔の巫女に聞くと、
「腐れ館です」
と答えた。
「どんなのところかわかる?」
「すみません、私はこの神殿から出ることはできません。なので、そこがどんな場所かは知りません」
「……ここから、出たことがないの?」
「はい、もう800年以上は出てないと思います」
「……そうか」
800年という数字が、悪魔の巫女にとってどれだけ長い時間なのかわからない。私は一度焚火で不死者の水を補給すると、武器の持ち運びについて考えた。両手で槍を持つとき、素早く銃を仕舞えるようにしたいからだ。
私は鞄に簡単にマジックテープのように取り外しができるような物ができないかと思った。
「……」
不死者錬成は想像の中でできる。私はもしかしたらと思って、円形の一枚の板を作る。私はそれを鞄に取り付けて、板に近づけた。
音もなくぴったりとくっついた。次に、私が使おうとすると、簡単に抵抗なく外れる。
「……成功だ」
よくゲームとかで、素早く武器を変える場面がある。その時、かってに武器が背中に張り付く。もし、そんなアイテムができればなと思った作った円形の板だが、これなら軽くて銃の持ち運びも簡単だった。
理由がない時は、常に武器を背中に背負える形にできた。しかも、鞄を外せば武器も一緒におろせる優れもの。忘れ物対策にももってこいだった。
そう、武器を忘れるということがあったので、常に移動に使う鞄に張り付けておけば判然だ。問題は、鞄を忘れた時はどうしようもない。
私はゴーグルをつけて、鞄の中を整理する。とりあえず、すぐに取り出せるように、鉄のボトルは入れて、ムーンハーブの量がかなり減った。どこかで、手に入れたい。
それから、ファンタジーに来たことで、なんかすごいすごいことになったタブレットとスマホはいらない。手品道具のトランプや、リング、スポンジボール、ロープ、ダイスとかも使わないから、メニュー奥にいれて、松脂は火に有効な敵には必要だから、鞄の中。火を扱うこともできるようになったから、有用なはずだ。
私は最後に、焚火でレベルアップを行うことにした。今ある魂を使えるだけ使い、私は5レベルあげた。すると、自由に振り分けられるポイントが5あったので、心に振り分けた、
銃の威力をあげるためである。
名前:鸛 小夜
職業:狩人(不死者)
レベル5
HP:659
スタミナ93
体力:14
持久:11
筋力:11
技術:10
心:7+4
不思議:7
能力:不死者の錬成、道具理解、無限収納、他者観覧不可
私はステータスを確認すると、緑色に光る宝石がはめ込まれた石碑の前に行った。
「行ってくる」
私は、悪魔の巫女に言うと、石碑の宝石に触れて祈った。
石造りの神殿の景色から、塗り替わるように景色が変わる。私の目の前には館があった。腐れ館というから、腐っていない。綺麗だ。
周囲を確認しても、道は正面玄関ぐらいしかなかった。私は、玄関から入った。昼なので日差しがはいるが、薄暗い。どこか不気味に感じる。
私は近くの扉から調べることにした。ドアを開けると応接間だった。応接間から続く扉を開けると食堂があった。
「……」
敵らしい姿は見えない。食堂には食べ物は無く。綺麗だった。だが……私は食堂にある扉を見てここが普通の館でないことがわかった。
ドアが変な位置にあった。私の胸の高さぐらいの位置にドアがあったら、私の手が届かない場所にドアがあったりした。
私は試しに胸の高さぐらいのドアを開けた。階段があった。私は階段を3段ずつ上る階段に出くわした。
階段を上ると、曲がりくねった廊下に出た。しかも、ドアの数が多い。とりあえず廊下の奥へ突き進むことにした。
べちゃり
背後で変な音が鳴った。
「……」
人の形をしているのだが、顔や口が見えない。かわりに、ヒルに体が覆われていた。
べちゃりべちゃい
早歩きで私に向かってきた。私は散弾銃を構えて、撃った。敵が怯んだがHPが減った。私は、槍鋸を槍状態にして、目の前の敵に突き刺す。
HPが少し減ったが、長期戦になると感じた。少し広い場所で戦う必要があると思って、背を向けて逃げ出した。
私は適当にドアを開けると、8畳ぐらいの部屋へとたどり着く。私はヒルに覆われた悪魔の下僕を迎え討つことにした。
私は鞄の中から松脂を取り出て、武器に塗った。そして、悪魔の巫女からもらった火を灯した。
私は家具の物陰に隠れて、ヒルに覆われた悪魔の下僕を待った。
べちゃりべちゃり、ぐじゅりぃという音を立てながら動く音が聞こえる。近い、私は左手に槍鋸を持って、右手に散弾銃を持った。
「……」
びぇちゃり、びちゃぁああああり、びちゃあああああああり目の前にヒルがうごめくのが見えた。
私は家具の物陰から飛び出て散弾銃の引き金を引いた。相手の動きが一瞬鈍るのと同時に、火の付いた槍鋸で攻撃を加える。
今は槍状態なので、突く。安全な距離を保ちながら私は戦った。敵はどんな攻撃をしてくるかわからないので、時には敵の周りをぐるぐる動きながら、観察もした。
「ぐっ」
私は左へ再度ステップ。ヒルを繋げて手の部分が伸ばして攻撃を仕掛けてきた。かなり、やっかいだ。でも、そのあとにできた隙を利用して槍で突く。
火による攻撃が加わったことで、HPがどんどん減っていく。そして、簡単に赤いメーターをなくすことができた。私は安堵して、膝をついて、不死者の水を飲もうとした。
けれど、悪魔の下僕を見て
「……おかしい」
とつぶやいた。
普段なら悪魔の下僕を倒したあとは、灰になって消えるのだが、ヒルに覆われた悪魔の下僕は灰になっていない。まさか、これは悪魔の下僕ではない別の何かだろうかと考えた。
「……」
私は嫌な予感がした。
ずるりぃいいいい、ずるううううぐちゅりいいいいいいいいいいいいいいいいい
私がヒルに覆われた悪魔の下僕を見るとゆっくりと起き上がろうとしていた。ゴーグルにはHPが全回復していた。私は起き上がりに、攻撃をしかけたが、急速な回復で攻撃の意味がなしてなかった。
完全に復活したヒルに覆われた悪魔の下僕は私に襲い掛かってくる。
「くっ」
松脂で槍鋸の刃は燃えているので、まだ戦える。けれど、松脂がなくなれば終わりだ。
私は松脂による火が消える前にヒルに覆われた悪魔の下僕を倒す。そのあとは、その場から離れて逃げ出した。
あれを倒すには、何か方法が必要だ。もし、あれが倒せない悪魔の下僕だとしたら、あれは悪魔の使者となる。でも、名前がゴーグルに表示されないということは、悪魔の下僕なのではないのかと私は考えた。
ずちゃり、ずちゃり
私は痛感した。どんなに役立つ武器があっても、敵が灰にならなければ意味がない。私は息を潜めて、クローゼットの奥に隠れた。
「……」
私は1度神殿に戻ることも考えた。しかし、迷路のような屋敷に私は迷っていた。ああ、私の世界にある屋敷を主出していた。
それは、ある未亡人が、幽霊たちのお化けから逃れるように、自分の屋敷をひたすら増築し続けて、迷宮のようになった屋敷。これが本当かなんて、わからないけど、それとそっくりだ。
ただ、こっちには本当に殺しにかかってくる化け物がいる。
不快な音が近い。
「うぁあっぁぁぁああ」
うめき声も聞こえる。私は目を閉じようと思った。でも、目を閉じることができない。なぜなら、クローゼットの隙間からじっとこちらを見ているような感じがしたからだ。
がしゃん
クローゼットのドアを破壊して、私の両肩を掴んだ。そして、私の体をヒルが覆って全身をはい回る。口の中から入り、食堂を突き破り、私の心臓中で暴れまわるのを感じた。
激痛に悶え苦しみながら、私は灰となるのであった。
魔法が出てこないファンタジー。あと、ブックマークありがとうございます。それから、第2部完成したので、少しだけ定期的にお話を投稿できると思います。