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昭和生まれの人の異世界物語。とありあえず、たくさんやられて灰になっても立ち上がれ  作者: 烏丸ちとせ
第1章 ぐっばい、お城。常識ばいばい
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第1話 異世界です。

 ほんわかゆるふわシリアスファンタジーが始まります。

 

  人生にはいろいろある。私は他の人と違ってある部分が劣っていた。これが原因で27まで働くことができなかった。そして、就職もうまくできなかった。結果的に私は28になるまでフリーライターという仕事で毎日、少ないお金で生きる日々だった。


 こんな日々から抜け出したいと思った。だから、常に抗っていた。でも、変わらない。もし、私が普通の人と同じものを持っていたらと思うと辛く感じる。


 この日本では、私のような人は生きづらい。それでも、私は必至に生きていた。朝は安いファーストフード。昼も300円1杯のかけうどん。夜も300円のかけうどん。


栄養剤を飲んで命を保つ日々を繰り返していた。


仕事が終わると、私はポケットに手を入れて死んだ目で歩いていた。恋人もいない。28の女なんかを好きになる人などいないだろうと思った。


 それに、身長177cmという大柄な体系、ぺたーんとした胸がさらに女の魅力をどこかに捨てたようにも感じた。


 いろいろと、なんかつらい。私は死んだ目で帰り道を歩いていた。そして、歯を磨いて、ゲームをやって寝る。


 王子様なんて来ない。暗い闇の中で縮こまって寝た。


 こんな、生きる屍のような人生になんの意味があるのかと思って死ぬことも考えた。けど、自分に負けたような気がして嫌だった。


 私は自分の死んだ顔を見ながら、化粧をすることなくぼさぼさの髪を櫛で整えて仕事へと向かった。


 今日は早めに記事を書いてほしいという依頼で朝が早い。久しぶりに学生が歩く姿が見られた。


 普段は学生が出かける時間じゃない。少しあとが基本だ。かつて、自分も似たようなことが……なかった。


 いつも1人で、誰とも話さずに学校に向かっていた。横に並んで話す学生たちが少しだけうらやましく感じた。けど、疲れるだけだなと思ってどうでもよくなった。


 とりあえず、今年で29歳。結婚できるかなんてわからなくなった。


「はぁ……」


 私はふと立ち止まって空を見上げた。冬の空は青かった。今日はいい1日がすごせるかもしれないと思った。あと、今年はお金に困らない生活をしたいです。それから、空が見えない。


「……」


 あれ、おかしい。どこかのファンタジーみたいな場所にいた。周囲を見回すと鎧を着た兵士。ふくよかな体系に豪華な服を着た男。さらに、冠を被った美女がいた。

 


 それに加えて、高校生だと思われる学生服を着た学生が30人ぐらいいた。私のような大人が1人ぐらいいてもいいと思ったがいなかった。


 そして、豪華な服を着た男が何かを言っていた。私はその言葉の意味を理解することができない。


 異国の言葉だということが理解できる。あまり、考えたくないが私は物語にありそうな登場人物の1人になったのではないかと思った。


 この時、仕事はどうしようとか、家賃とかいろいろ頭によぎった。無滞納で、私の私物はどうなるかと悩んだ。


 今は、それどころじゃない。


 私は豪華な服を着た男を見た。悪そうに見えた。私を元の場所に戻してくださいと言っても無理だろう。

 周りの様子を見ると簡単に帰してくれるように思えない。


 とりあえず、情報を集めなければいけない。誰かに話しかけようと思って周囲を見ると1人だけ孤立した少年を見つけた。見た目は悪くはなく、身長は170㎝ぐらいだ。黒い学生服を着ていた。


「すまない、彼らは何を言っているかわかるか」


 少年に問いかけると、こう答えた。


「わからないんですか」


「わからない」


 すると、少年は腕を組んで何かを思案していた。


「そうか、スキルを持ってないからかな」


 どうやら、少年はあの場にいる言葉が理解できているようだ。


「すまないが、何を言っているのか教えてくれないか」


「僕たちは、魔王を倒すために呼ばれたらしいです。現在は人と魔王の戦いは、膠着状態で、その打開策として僕たちが召喚されたらしいです」


「魔王か……ファンタジーだな」


「そうですね。でも、最近の異世界召喚を考えると嫌な感じなんですよね」


「そうなのか、私もファンタジーは大好きで本を読むが……まずいのか」


「うーん、あまり大きな声で言えないけど、定番です」


「定番か……」


 私はある種の納得をしながら周囲を見ると1枚の板を空中に出していた。何だろうと思った。


「あれは、なんですか……」


「ステータスプレートですね。テンプレですね……」


「そうか、テンプレか。お決まりだな」


 つまり、ここに呼ばれた人は勇者になるということだ。でも、命がけの戦いに巻き込まれたと思うと憂鬱なきもちになる。


「大丈夫ですよ。たいていは、チートスキルをもらえるものですから」


 少年は私を慰めてくれた。

「とりあえず、ステースを見たいと思うとみられるようですよ」


 少年はそう言うと私にステータスを見せてくれた。


 少年のステータスには、勇者と書かれていて、これが強いのか弱いのかわからない。ゲームは好きでやるのだが、それが役立つのか見当もつかない。


 私もステータスを出そうと念じてみた。


――――

名前:鸛 小夜

職業:狩人(不死者)

レベル1

HP:659

スタミナ93

体力:14

持久:11

筋力:11

技術:10

心:7

不思議:7

能力:不死者の錬成、道具理解、無限収納、他者観覧不可

――――


「大丈夫ですか」


 少年に尋ねられて、私は死んだ目でステータスを見ていた。


「いや、ステータスを見たんだが」


「え、出したんですか」


「観覧不可て書かれた能力で他人が見られないようだ」


「そうなんですね」


「……勇者て書いてなんいんだが」


 私がそう言うと、少年は慌てて

「だ、だめですよ。今は黙っておきましょう。幸い、他人には見えないんですから」

と言う。


 そうか、やってしまった。思ったことをどんどん行ってしまうあれがでてしまった。


 そういえば、毎日の薬を飲んでいない。あと、冷静に考えてみれば毎日飲んでいた薬飲めないとまともな戦いができないけど、どうしようと思った。


 私がこれからのことを考えていると……

「……やばいかも」

と少年は言って頭を抱えた。


「どうしたんだ」


「どうしよう。あの水晶で勇者判定をすみたいです」


「大ピンチだな」


「なんで、そんなに冷静なんですか」


 兵に誘導されながら列に並ぶ。


「人生の半分も生きてないが、いろいろ疲れたんだ。うまくいかないことが多いからね」


「……そうですか」


「私のようになりたくないなら、勉強をするんだな。それで選べる道を増やせばいい」


「あははは、勉強ですか」


「ああ、大学に行けば好きな勉強ばかりで楽しいことばかりだ」


 高校と比べて好きなことを学べる大学は楽しかった。ただ、必須科目で大学生活後半からは辛い部分が多かったが、好きな勉強は楽しかった。


 必死に勉強して、ぎりぎりの点数しかとれなかったが……それでも努力が報われたと思っている……たぶん。


「そういえば、僕は大淀おおよど 直樹なおき。あなたの名前は」


「鸛だ。昔、異国の文化を知った僧侶を助けて、幸せを運んだということで、先祖が貰った苗字だ」


「鸛ですか、めずらしいですね」


「よく言われる」


 そして、大淀の番になった。大淀が水晶に手を付けると白く光った。


 勇者だと、あんなふうに光るのかと思った。


 兵が私に向かって言った。言葉の意味は次ということだと思う。


「……」


 私は水晶に手を付けた。結果は赤い炎が水晶の中で燃えていた。


 その瞬間、兵に取り押さえられた。


 勇者じゃないからだろう。


 慌てて、大淀が私の前に立って異国の言葉を話している。しかも、土下座だ。


 気になる結果は……だめだった。大淀は肩を落としている。


「すみません。鸛さん。説得できませんでした」


「気にしないでく、ぐふ」


 私は顔を蹴られた。ステータスを見ると、HPが70減っていた。ファンタジーだ。


 綺麗な声の主が叫ぶのが聞こえる。それに対して、豪華な服を着ていた男の声が聞こえる。私の扱いについて言っているのかもしれない。


 私は兵に立たされると牢屋へと入れられた。ああ、海外のオープンワールドのお決まりのスタートみたいだ。最初は犯罪者スタート。たしか、6は処刑とかだったような気がする。


「……」


 しばらくして、大淀を綺麗な冠を付けた美女が来た。


「申し訳ありませんて言っている」


 大淀が通訳してくれた。


「大丈夫だ。それより、私を助けてくれてありがとう」


 大淀は美女に私の言ったことを伝えた。しばらくして兵士がやってきて牢屋のカギを開けてくれた。


「ついてきてと言っている」


 私は大淀に言われて、美女の行先に付いていく。移動中に大淀に尋ねると、ベルバ王国の姫様だということがわかった。


 あの後、勇者たちの案内を豪華な服を着ていた男のゲルギ大臣に任して、急いできたらしい。


 綺麗な1室に案内すると、兵は立ち去り、代わりに近衛兵と思われる女の兵がいた。


 私に椅子に座れるように言われて、椅子に座ると私の鞄を渡してくれた。中にはタブレットが入っている。さらに、手品道具も入っている。しかも、H型リュックとも呼ばれてリュックとしても使えるものだ。


「ありがとうございます」


 私は頭を下げると、姫は綺麗な声で何か言っている。


 言葉の理解ができればと思った。姫はしばらくすると、女の兵は腰についていた袋を私に手渡した。


「お金だそうです。鸛さん、牢屋での軟禁は防げましたが、お城から追放みたいです」


 大淀の説明によると、姫様の説得で私は城から追放ということがわかった。勇者じゃないし、何らかの理由で取り押さえられたのだ。


 姫が保護してくれたが、追放ということは……立場上強くないことが理解できる。いずれにしろ、このお金でしばらくの生活はわずかに保障ができた。


 あとは、言葉の壁である。記憶力が悪い私には苦痛でしかないことだった。けど、やらないといけない。


 私は大淀に頼んで、いくつかのことを確認した。まず、この場所から離れた場所で生活の基盤を確立できるところがあるかということだ。


 私はポケットの中からメモ帳を取り出して書く。すると、姫は興味深く見ていた。私はメモ帳を見せると、ペンを指さす。


 私はペンを見て、姫に差し出した。


「あげる。私を助けてくれたお礼」


 大淀が通訳すると、姫は笑顔を見せた。さっきまで暗い顔をしていたので安心をした。最近、もらったブランド品のものだが、予備が大量にあるので1本上げても問題ない。


 むしろ、貴族とか偉い人に献上すればそれなりの、待遇は受けられるのかもしれないと思った。


 さらに、私はポケットからボールペンをもう1本取り出して、女の兵にも渡した。驚いた顔を見せながらも、受け取ってくれた。


 そして、長いようで短かった質問は無事に終えた。行先や、宿で止まる時に言う言葉、いざという時の言葉を教わった。


 特に言葉に関しては姫がなぜか丁寧に教えてくれた。いいのだろうかと思ったが、女の兵は何も言わないので、だまって教わった。


 私は去り際に、

「なんか、あったら助けるよ」

と言った。


 そして、私はギルギ大臣とともに来た屈強の兵に抱えられて、城から追い出された。

追い出すとき、私を乱暴に投げた。


 痛かった。HPも減った。


 ただ、私は普通の人では体験できない人生を少しだけ楽しめそうだった。死ぬ前に、抗っても悪くないと思うのであった。




 最後まで読んでくれて本当にありがとうございます。

 主人公はシリアスで暗い話が多いです。

 もう1人の主人公と言える、大淀さんはほのぼのぎゃぐファンタジーです。

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