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5◇黄昏と夜明け

我が家の歴史は、王家と供にある。それほど、古い。

我らの一族は王家の始祖と供にこの地へ流れついた。


我らの一族の他にも供をした家は幾つかあったが、小さな集落が国となる頃には我らの一族を残してその家名は変わったり枝分かれしたりを繰り返して消えていた。


我ら一族の家名が消えないように、王家の家名も消えないまま膨大な月日が流れた。いつしか、この国は他国からオライン帝国とまで呼ばれるほどに強大になっていた。



我ら一族の家名は『エル・グロンバルーデ』古い古い神語で意味は『闇の狩る者』

王家の家名は『イル・ブリオステル』その意味は『光の守る者』


我ら一族は対となり、主従となった。表向きは王家専属の護衛をする一族として、本来の任務は王家直属の暗部。



我ら一族と王家にのみ、伝わる古い古い神託がある。



長い国の歴史の中で、一緒に来た神の名すら変わってしまいいつしか崇める神もかなり増えているが。神託は未だに代替わりの度に王と当主に口伝で継承される。



『エル・グロンバルーデに黄昏の瞳の乙女、イル・ブリオステルの夜明けの瞳と此の告げを知らず交じれば国栄える』



私とて、そんな御伽噺を信じていたわけではなかった。娘が橙色の瞳を宿して生まれてくるまでは。


我が一族はなぜか黒髪が多く、男児には橙色や茶色、ごく稀に金色の瞳が出る事はあっても女児は黒色か茶色の瞳しか出ない。

娘の瞳の色を見た私は、妻に用意していた子供の名を告げるのも忘れて王宮へと走った。


王と二人で長々と話し込んだ結果、私の娘は王の二番目の息子たる王子と婚約という事に決まる。


第一王子の瞳は薄い赤紫、第二王子はやや薄い紫の瞳、第三王子は青の強い紫の瞳。夜明けの瞳、即ち王家にしか出ない紫の瞳の中でも純粋な紫は第二王子しかいない。


年も近く、元気な王子が娘の婚約者で良かった。


本当はもう一人該当する瞳の持ち主が居たのだが私の親心が彼の存在を娘の将来の夫として認められなかった。


何が嬉しくて生まれたての我が子を既に三十路間近の王の弟の愛人に差し出さねばならんのだ。幸いにも王も己の弟の瞳の色の事は触れなかった。


第二王子と娘の婚約を決定した足で神殿により、まだ正式に名をつけていなかったが娘の無事な誕生のお礼とこの先に幸溢れるように祈願した。


娘へ名を贈り、娘の乳母に第二王子殿下との婚約を伝え、必ず成す旨をしつこく繰り返し念押ししておいた。



娘の10歳の誕生日頃までは全て順調に見えた…。

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