20◆◆解 釈◆◆
神託の解釈をつっかえながらも、語る青年。
その古き神託がおりた時点ではまだ国とは呼べない規模だった筈なので、王家と守手という意味は神託に無い。
眷属と呼べる程に加護を与えた巫女達の子孫へと向けた言葉で、恐らくその神託の時点ではまだ女系の一族だったのではないか。
一柱から二つの加護に別れた理由もその辺りに理由があるのだろうが、その事を示した部分の神託は長い口伝継承の歴史の内に削られたと推測される。
光の巫女の子孫が王家に、闇の巫女の子孫が守り手となる中で、女系社会の集団から男性主権の国へと変化する際にあれこれと削られたのではなかろうか。
『二つに別れた加護が、遥かな年月を経て重なる時、ここは国になっており、更に栄える時を迎えているだろう』
そういう解釈になるのでは?との内容に、王妃が満足げに深く頷いている。陛下と空気のような父はすっかり虚脱している。
「国の歴史より長い年月を口伝継承で伝えていたのは内容の改変云々の為ではなく、文字の発明より前に口伝継承が始まっていたのでしょう。神託と呼ぶには都合の良すぎる内容にも関わらず、加護の証の名残でしかない瞳の色だけを根拠に主神の真名もあやふやな現状でよくも更なる加護や祝福を得られると思い込んでおられたなと感心致しますわ」
「な、な…なんという不信心な事を!!王妃とて許されぬ!」
真っ赤な顔で鼻息荒く叫んだ国の要たる老人を、王妃様は冷たく見据えて鼻で笑った。
「それは、誰にですか?貴方に許されぬとて、私は痛くも痒くも御座いませんよ、大臣」
「…巫女の末裔である私達が、まさか神託の意味を履き違えているとは誠に滑稽でありそれこそ不信心の極みであったことよ。王妃よ、先程のそなたの言葉が今やっと理解に至る愚かな王を笑うが良い。だが、女人だからと軽んじていたつもりは無いことだけは確かだ」
「嫁して20余年、陛下に女人だからと軽んじられたと感ずる事は一度も御座いません。先程は言葉が過ぎましたこと、お詫び申しあげます。帝国の帝王たるには、かくあるべしとのお覚悟を蔑ろにしたかった訳では御座いませぬ。…肩の荷を分かち合う、他国の王妃方を羨ましく思っておりました故の言葉でございます。私は陛下の妻として、ともにこの帝国を支えてゆきたいと願っております」
「王妃…なんと、そなたは…いじらしく、また誇り高い女人なのであろうか。そなたこそ我が宝、心の支えであり、我が女神だ!神が去ろうとて、此の帝国には女神たるそなたが居る限り、栄えるのみだ!」
え、まさかの甘い展開ですか?と、焦る。この局面で手を握りあって見詰める帝国トップの夫婦愛を見せつけられる展開になるとは、誰も予想していないだろう。
「盛り上がっているところを失礼、確認なのですが。古き神託はつまり『国が栄える条件等ではない』で宜しいのでしょうか。それと、母上への大臣の不敬は後程詮議するのでお忘れなく」
第一王子殿下の咳払いと提案で、皆が皆、ハッと現実へと帰ってきたようだ。ここ2日間、神の声という超非現実的な出来事やら王妃様の本性(?)を目の当たりにするわで、要たる男達とて頭がいっぱいいっぱいなのだろう。
引き金となった私とマーティングの婚約破棄なぞ、覚えているのかも怪しいものだ。でも、したんだからな!
「……そうだな、そうなのだろう。それと、そこまでは見守る、という神からの期間設定の意味もあったのかもしれぬな。それと、詮議についてはそなたの一存に任せる。また、第二王子の婚約解消の了承をここに宣言し、これより後は新たなる帝国の有り様を模索すべく帝王、王妃、第一王子の三者の言を基軸に要の間の開催をすることと定める」
陛下、まだ王妃様のお手を握っておられますがそこは見なかった事にしておきます、ありがとうございます!!




