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19◆◆失 笑◆◆

翌日、私とマーティングは要の間へと呼び出された。


要の間には昨日の顔触れに加えて本日は王妃様も居られる。たった1日で憔悴しきっている者の多さに驚くが、それだけ新たな神託の与えた衝撃が大きいのだろう。



その場でまずは、これまで秘匿され続けた『口伝』から語り出す陛下。昨日の神託にあった「眷属」についても触れておられる。要約すると王族と我が一族は、勢力争いに負けて此の地へと流れついてきた神とその巫女達の一族なのだそうだ。


神は『光と闇を統べる者』で、その巫女達は『光の一族』と『闇の一族』として加護を受けており、眷属と見做されていたそうだ。因みにその当時は女系の一族だったそうだ。現在での逆転ぶりに思わず失笑してしまう。



口伝の内容を聞いたら、失笑どころか溜息しかでない。

私のかわりに王妃様の怒声が要の間に轟いたけどね。



「結婚なんて一言もないでは有りませぬか!!それどころか王族側の性別すら触れておらぬというのに、どこをどう解釈すれば赤子のうちから無理矢理に婚約を強制する事になるのですか!!!!このまま勅命でも出して強引に結婚させていたらどうなっていたと思っているのですか!!!!」



あ、陛下が真っ青になられた。ざまぁ、でゴザイマス。



「母上の仰る通りではありますが、私は神が何を以てして【交わった】と見做されたのか、気になります。まさか婚約の破棄を二人が望んだから、ではないでしょう。マーティング、どうなのだ?」


「レイベーニアの考えを知り、それに共感したのが神に通じたのでしょう。神との関わり方とこの国の在り様に疑念を覚え、また、女人の忍耐のみに支えられる此の帝国の現状を憂いたレイベーニアは他国を識る事を望んだのです」



物は言いようだな、全く。しかし、私の言いたい事はきちんと理解出来ていたのか。普段のコイツは大馬鹿野郎だから、ここまで正確に把握されていたのが驚きだ。



「女人の忍耐のみ、とは…?」


顔色の悪い陛下の弱々しい質問に、王妃様が笑顔でお答えになっているのだが意図して居られるのかお声がよく響く。


「女人は生んで育てよ、家を守って夫に仕えよという考え方そのものですわ。他の生き方は黙殺されておりますもの」


「その分、男は国や家庭を守っておるではないか。それに、働いて家族を養ってやっておるのも男だ。女にのみ忍耐を強要してはおらぬ」



陛下の答えに要の間の男達は『その通り』とでも言いたげな顔をしている。



「戦時中でもないのに一体、何から守っていると仰るのです?家庭を守ると言いつつ、我が子を政略結婚の駒扱いにすべく生ませ育てるのは矛盾しております。それに、おなごにも殿方と等しい働きが出来ると思わないのはなぜでこざいますか?」



王妃様の呆れを隠さないお言葉に、陛下はムッとしたご様子で『女には分からぬ事もあるのだ!』と言い返してしまった。


「女人には分からぬようにと女人を政ごとから遠ざけて居られる自覚はございますか?それと、古き神託の意味を履き違えておりましたけど、本来の意味にはもうお気付きでございますよねぇ、陛下」


王妃様の低い低い声に、陛下のお顔がまた青ざめる。神託の意味を盛大に勘違いしていた陛下なので、手痛い反撃。



「…国の要たるそなた達は言わば陛下の頭脳。優秀なそなた達であれば当然答えは分かっておりますね?どなたか、答えてたもれ」



要の間を非常に深い沈黙と淀んだ空気が支配する。そんな中で、一人の青年がおずおずと挙手をした。一斉に視線が集中した為、末席の青年は真っ赤になってカチコチと分かりやすく緊張している。



王妃様がこの日、初めて柔らかく微笑まれた。

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