18◆◆神 託◆◆
王妃様は、マーティングが公衆の面前で一方的に私との婚約を破棄した事で私が傷付いていない事にホッとしたようだ。
「そなたも望んでいたとしても、あれほど大勢の前で見せ物のように婚約破棄するなど愚の骨頂。後程叱っておくが、馬耳東風であろうな…あれの脳味噌の偏り具合は、どうにかならんものか…」
王妃様は遠い目でぼやいていたが、マーティングはどうにもならんでしょうね。
「私の一存で今のうちにそなたを国外に逃がしてやる訳には行かぬが、そなたの…そなたにとっての成功は心底祈って折るからの。ではな、邪魔をした」
王妃様が帰られると、その後はただの退屈な軟禁になる。
ばぁやの事や、マーティングのアホの事をつらつらと考えるうちに居眠りしていた。
…………変な夢を見た気がする。やはり、怒涛の展開で疲れが溜まっているのだろう。
そう自己分析して『それもこれも突き詰めればマーティングのせいではないか!』と、立腹していたら、護衛メイドや女官の悲鳴だの咎める声などで部屋の外が騒がしい。
「レーベ、さすが俺の未来の妻!!」
部屋に飛び込んで来たマーティングの背後で護衛メイド達がオロオロしている。不審者で狼藉者に該当するのが王族では、彼女達も扉を守りきれずとも私は怒らない。
私が怒るのは、このバカであって彼女達ではない。
「誰が貴様の未来の妻だ、気色悪い。不吉な事を言うな」
「神託がおりたことで、そなたにも私にも一切の咎はない。喜ばしいではないか、わが愛しいレーベ」
「神託?白昼夢でも見たのだろうが、私を巻き込むのはやめろ。それと私の名を中途半端に略すな」
「神託がおりたのは要の間だ。要の間に居た者全員が聞いている。…俺達の婚約の秘密もサラッと判明したが、そんな事より、レーベはまずどこの国へ行きたい?」
…神託なんて伝説の中の話だと思うのだが?婚約の秘密?意味が分からない。癪ではあるが、尋ねた。
マーティングもよく分からない部分がある、と前置きした上でまずは神託の内容から語り出した。
【光と闇の名を持つ者達に告ぐ。此の地の人の子らに告ぐ、人の子らが新たに抱いた幼き神々に告ぐ。我は光と闇を統べる者。我去りし後の全ての者達へ幸あれ。我は古き告げの成就を以て天へ還る】
光と闇の名は、王家と我が家の家名なのだそうだ。
【黄昏の瞳と夜明けの瞳の見据える先に、真の人の世の栄えあり。光よ闇よ、新たな時を祝福せよ。さらば古き眷属の子らよ。これより先は人の子らとしての幸あれ】
意味分からん。神様に振り回されたのか?と、言えばマーティングが『そんなトコだな』と笑った。
この神託のお蔭で王宮内は現在、大混乱だという。細部は意味不明ながらも主神がバイバーイと言っているのは分かるので、神殿は大ピンチだろう。
国民の洗脳教育の根幹が揺るぐのだから、陛下も国の要達も卒倒ものだろう。そんなのは私の知った事ではないが、王妃様には改革を頑張る足掛かりにでもして頂きたい。




