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15◆◆破 棄◆◆

牢からどうやって脱出しようか思案していたら、チャンスはあっさりと向こうからやってきやがった。


「昨日ぶりだな、レーベ。元気にしていたか?」


「お前に会うまでは」


なんでまたコイツが来るんだ、そんなに私が牢にいるのが愉快なのか?


「フッ、私と会えてそんなに嬉しいのか。さて、そんなお前に最高の贈り物だ」


寝言は寝て言えよ。しかし、贈り物?何を企んでいるのやらと訝しむが、ばぁやによって牢から出されるなり背中を押されて屋敷を後にした。



このままトンズラしてやりたいのだが、ガッチリと腕を掴まれているので難しい。単身で我が家に来ているとは思わなかったが、やはり護衛を連れてきていた。



王族の護衛なので、やはり我が一族の中の精鋭が配属されている。見知っているのは父の弟と、その長男、次女。他は顔に見覚えがある程度なのだが、腕はたつだろう。


マーティングだけなら振り切れても、彼等は振り切れない。




「なぜ王宮…貴様、ふざけているのか!?」



怒り心頭で睨むと、奴はニヤニヤと緩んだアホ面。


「俺はいつでも本気でお前を愛しく想っているぞ、レーベ。本当はもっとお前への重く深い愛を囁きたいところだがそうもいかぬ。ここからは急ぐぞ」


問題箇所数点…というか、コイツの存在自体が問題なのだが。半ば引きずられるようにして先へ先へと進めば、護衛に守られた『要の間』の前へ。


「マーティ「開けろ」」


「なりませ「開けろ」」


私の言葉も護衛の言葉も遮って、居丈高に命令する。先ほどのしまりのない間抜け面とは別人のような『王族の顔』で、有無を言わせないモノがある。


「開けろと言っている」


凍るほど冷たく響く声に、護衛は躊躇いなく扉を開いた。


扉の向こうの護衛が何事かと此方へ視線を向けるが、マーティングだと分かると視線を床へ落とした。



この要の間は、オライン帝国の国政の要職を司る者達の会議の場。私が知っている知識はそれだけだ。女は政に携わらぬ国なのでその他は知りようもないが、この部屋で迂闊な事をすれば私どころか第二王子のマーティングの首も危ういのは察しがつく。



「…何事だ、マーティング」



遠く、陛下のお声が苦々しく響く。その声でマーティングが

扉を越えた。左腕で私の腰を抱いて。



ざわりと部屋に小さなどよめきが起きる。



扉から直線上の最奥に、周りより三段高いスペース。そこにおわすは帝国の王と、その背後を守る私の父。


部屋の中央まで進むと、マーティングがまず陛下や重臣達へと非礼を詫びる。

全く感情の籠もらない儀礼的な口調だが、部屋の護衛達が武器に添えていた手を戻したので一応の意味はあるようだ。



陛下に再び何事かと問われたマーティングが、古式ゆかしき宣誓の言葉に続けて声高らかに宣言した。




「マーケティング・イル・ブリオステルはレイベーニア・エル・グロンバルーデとの婚約を破棄する!!」




え?



傍らのマーティングを見れば、満面のドヤ顔。ムカつく。…ではなくて、コイツは今『婚約を破棄する』と言ったように聞こえたのだが。

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