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12◆◆今 更◆◆

この帝国にこのままで居る限り、私はいずれマーティングへ嫁がなければならない。それはごめん被る。


マーティングの事を『今』冷静に考えてみれば、多少の情はあるが好意は微塵も存在したり得ない。なけなしの情と言っても、うっかりマーティングの瀕死に立ち会ったら冥福を祈るぐらいはしてやるか、という程度だせどね。



「よう、レーベ」


「オラインの土に抱かれて安らかに眠り、健やかなる次への生を願って祈りを捧げます」



考え事の最中に話しかけられたので、変な事を口走ってしまった。



「斬新な挨拶だが、遠回しに死ねと言われても俺はお前と添い遂げるまでは死ねんな…ああ、その顔…そそる。では、なくて。お前は本当に素直なのだな」


「暴言が止められない程には自分の感情に素直だ」



首ちょんぱしたければどうぞ。全力で逃げますけどね。



「公の場では言わない分別はあるのだし、止める必要はない。俺の過去の暴言の方が酷かったのだからな」


「暴言の自覚があったのは驚きだが、私の暴言を止める気はないとは…変態なのか?」


「レーベ限定でならば、そうだな。年明けからその自覚はあったが隣国の外交官の娘にもズバッと言われた」



シア?貴女、この男に何を言ったの??



「殿下は性格が歪んで捻れているから、根性の悪いガキが好きな子を虐め尽くした後に大人になりかけて変態に進化するのですわ、だとさ。ああ、これは俺とローデルトしか聞いてないから外交問題だの不敬だのは無い」


「ならばそこは安心だが、国外にまで変態と知られて尚も平気だとは面の皮の厚さに感心するべきか?」


「フッ、恥じる事は何も無いからな。俺は婚約者の全てを愛しているだけだし、その愛が他人より深いだけのこと」



…………うん?さっきからおかしなくないか??



「どうした?」


「…不本意な婚約故に私を厭うて邪険に扱ったのでは?」


「違う、俺は初対面の時からお前の事を好いているぞ。当時はただ可愛い女の子としか認識していなかったけどな。恋情だと確信したのは遊学中だった」



………………………………………最低。



ドヤ顔すんなムカつく、帰れと追い出した。




あの野郎、本当に最低最悪だ。今更何を言ってやがる。

今更過ぎて、溜息も涙も出てこない。罵詈雑言なら出るが。



家人にどれほど『可愛い』『綺麗』と言われても、私は10歳でマーティングに否定されてからずっと自分の容姿にコンプレックスを抱いていたのに。


あいつの顔面だけは本当に綺麗だから、あの顔に否定されたら説得力がハンパない。ゆえに、それなりに育って芸術や美術の知識から自己分析すれば『悪くないはずだけど…』と思いつつも、トラウマコンプレックスのせいで自己評価の低いネガティブな日々を送ってきたのだ。


よし、婚約破棄に向けて全力疾走するか。

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